笑顔の裏側
あぁ…今日も晴天なり…
校舎裏に残った俺は、空を見上げながら独り言を呟いた。
何にも気にせず生きて行けたら…良いのにな…
キーンコーン
カーンコーン…
昼休みの終わりを告げるチャイム…。気まずい思いを抱えたまま教室へと戻る事にした。
教室に戻ると裕也の姿が見当たらない。荷物もない…。気まずくて先に帰ったんだろう…。
皆が次の授業の準備をしている中、俺は一人ドアの所で突っ立っていた。モヤモヤが頭から離れない…
そんな時だった…
『楓?』
俺の後ろの席に座る綾音。席に着いたまま俺の事をジッと見つめていた。その表情はいつもの明るい笑顔とは程遠く、どこか切なくも思えた…。
『……ん?』
気まずくも平然を装い綾音に歩み寄る。今までとは違った緊張感。前ならこのくらいじゃ緊張しなかったのに…。
意識…
『裕也君…帰っちゃったよ?』
『……そう…みたいだな。』
今まで通り話したい。そんな気持ちとは裏腹に何故か冷たくあしらってしまう……
お互い気まずい雰囲気のまま授業が始まった…
振り向けばそこには綾音がいる。こんなに近くにいるのに凄く遠く感じる…
外を眺め、雲を見つめ思う…
俺は…何の為にバイトしてるんだ…
先生の声も届かない…
綾音を思い…
裕也を思い…
そして、自分が何をしたいのか。何でこうなったのか。ない頭をフルに使って考えた……。
無駄な時間を使ったようだ……
そして、気付いたら授業は終わっていた…
いつもの様にカバンに荷物を詰め、帰る支度をしていた。
『…楓?』
後ろから話しかける綾音。
『ん?』
『…一緒に…帰ろ?』
俯き、暗い表情を見せる綾音。夏休みが終わってから一回も一緒に帰ってなかった。一緒に帰るのが当たり前の様な時間を過ごしていた綾音にとっては、とても寂しく感じていた。
『…綾音?』
『ん?』
顔を上げ、何か期待する…そんな表情を見せる綾音。
『ごめん!今日も……でも今日で最後だからさ!だから……』
そう言ってその場を離れようとした…
『……楓まで……わ……はな…』
え?今…何て言った?
俺は急いで振り向き綾音を見つめる。
俯いたまま黙り込む綾音。
『おい……綾音?』
『なんてね!忙しいんでしょ?早く行きなさいよぉ!』
『おいおい!』
笑顔で俺の背中を強引に押し、教室から追い出す様に突き飛ばす…
そして、俺に顔を見せる事なく背中を見せる綾音。そんな綾音の背中はなんだか……
明日からは一緒に帰ろうね……
…綾音