隊長…頑張れ!
金魚すくいでは負けてしまった…。たこ焼きの早食いでは……必ず!
その前に、越えなきゃ行けない波…
人の波!
俺は隊長になった気分で皆を並ばせた。
『行くぞ!』
たこ焼き屋を目指し、俺達は突き進んだ!列を乱す事なく、人混みを縫う様に…
だが……
『楓!』
一人遭難者発見!
人の波に飲まれ、流される綾音…
俺は裕也と優希を先に行かせ、綾音の救出に向かった。
『大丈夫か?』
『う、うん…』
俺は綾音と共にたこ焼き屋へと向かうのであった…
そして、裕也達と合流!
『ふぅ…無事救出する事が出来た!』
汗を拭う様な仕草をした……
『楓……気が済んだか?お前はバカだ!』
『な!』
裕也の一言で綾音も優希も大爆笑!
『楓…ちょっと面白かったよ?救出劇!』
綾音は優しくフォロ-してくれた。でも、裕也の視線は凍り付く様に冷たかった。
『裕也一等兵!俺と勝負しろ!』
俺は裕也を指差し、たこ焼き勝負を挑んだ!
『まだやってるし……』
呆れ顔の裕也。綾音も思わず苦笑い…
『早く食べよぉ!お腹空いちゃったよぉ!』
空気もなにも関係ない優希。自分のペ-スで物事を運んでいった…
『おっちゃん!四個くれ!』
『お!威勢が良い兄ちゃんだな!ちょっと待ってな!』
屋台のおっちゃんが渡してきたたこ焼き。湯気が立ち込める八つの玉。俺は『はい、配給!』と、皆に手渡し、裕也を見つめた。
『な、何だよ!』
ふっ!裕也は怯んでいる。勝負は今しかない!
『裕也、勝負だ!』
『マジかよ!かなり熱いぞ?これ…』
綾音と優希は、たこ焼きに息を吹きかけながら美味しそうに食べていた。
『早食い勝負!……スタ-ト!』
あつっ、はぐほっ、ほほほっ!
『頑張れぇ!早く早くぅ!熱くないよぉ!』
優希は楽しそうに見つめ、人事の様に騒いでいた。
綾音も応援……ため息!
あちぃ!
『食ったぞ!俺の勝ちだな!』
又しても裕也に勝てなかった。口の中を大火傷で敗北……
負けず嫌いの俺は次から次へと挑み続けた…
ラムネの早飲み!
鼻から噴射で敗北…
かた抜き!
一秒で割れて敗北…
福引き!
何故か俺だけ粗品…
負け続け、思わず半泣き状態に…
『楓?もういいよ……楽しも?ね?』
優しく慰めてくれる綾音。そんな綾音の前で格好いい所を見せたかった!
『んじゃこれが最後だ!チョコバナナ!』
俺は半泣き状態のまま屋台に向かった…
ん?ジャンケンに勝ったらもう一本!
もう負けられねぇ!見てろよ綾音!勝ってやるからな!
俺は屋台の前で仁王立ち!そして…
『おっちゃん、勝負だ!』
『お?元気いいな!』
『俺はもう負けられねえんだ!』
『気合い入ってるな兄ちゃん!彼女にプレゼントかい?』
彼女?
後ろで心配そうに見ていた綾音。彼女と言われ、俯いてしまった。そんな綾音をニヤケながら見つめる裕也と優希。周りにも野次馬が集まり始めていた…
『そうだ!だからおっちゃんには絶対に負けられねえんだ!』
彼女と言われ、引くに引けなくなっていた。ただ、今は勝って綾音に良い所を見せる!それしか頭にはなかった。
『んじゃ行くぞ!ジャン…ケン…ほい!』
一瞬の沈黙。周りの野次馬達も勝負の行方を見つめていた…
そして…
ワァ----!やったな!
割れんばかりの歓声!思った以上の盛り上がり!
『やった!勝ったぞ!』
俺は、自分がだしたグ-を見つめていた…
『兄ちゃん…負けたよ!後ろの二人も友達だろ?四本あげるから、仲良く食べな!』
『あんがと!おっちゃん!』
おっちゃんからチョコバナナを手渡され優希に…
『ありがとぉ!』
優希は笑顔で受け取った。
そして裕也に…
『楓、かなり注目の的だったな!今回は負けたよ!』
俺の肩を叩き、バナナを受け取った。
最後に…綾音に…
『あ…ありがとぉ…』
俯いたままソッと受け取る綾音。一口、口に加え上目遣いで俺を見つめていた。
そんな綾音を可愛いと思い、ごまかす様にバナナを一気食い!
『あははっ!』
俺を見て笑う綾音。
綾音に喜んでもらえれば……いいかな。
ドンドンドンドン…
『あ!そろそろ始まるぜ!』
裕也は矢倉のある広場に振り返り見つめていた…
『裕ちゃん!早く行こ?』
優希も、目を輝かせながら太鼓の音を聞いていた…
『楓?始まるよ!』
綾音は俺の手を引っ張り、広場へと走り出した…
太鼓の音がより一層鳴り響く時、祭りのメインイベントが始まる。
この太鼓が鳴り終わると同時に、祭りをしめる花火が打ち上げられる。
皆…この花火が楽しみで来ていた……