ワガママ朝顔
夕陽が綺麗に見える頃、ようやく裕也と優希の待つ広場に着いた。
広場の提灯に明かりが灯され、雰囲気はまさに祭色に染まっていた。
『綾ちゃ〜ん!』
遠くの方から優希の呼ぶ声が聞こえてくる。
何処にいるんだ?
俺と綾音は周りを見渡しながら優希を探していた。
広場にもなると人が沢山いて、何処にいるのか見当も付かない…
パタパタパタ…
何か近づいてくる……優希!何故か片手に団扇を持ちながら走ってきた。
『綾ちゃん遅いよぉ!』
『優ちゃん可愛い!』
優希は、白の生地にピンクの朝顔の柄の浴衣を着ていた。髪型も後ろにまとめ、頭の上にフワッと花が咲いた様なセットをしていた。
『へへっ、そお?ありがとぉ。…って楓君、浴衣じゃない!』
『……俺はもってないの!裕也は?』
『あれ?はぐれちゃったぁ?』
『ぉ-ぃ!』
何処からか裕也の声が…
『すげぇな!よっ!』
白い甚平を着た裕也。ちょっとチンピラ風にも見えてしまう……
人混みの中から現れた裕也。人の波に飲まれ、流されてしまった……らしい。
『うわっ!綾音すっげえ綺麗じゃん!』
『え!ありがとぉ』
そりゃそうだろ…。
ここまで来る間、どれだけの人が振り向いた事やら…
『裕ちゃん!』
少し不機嫌そうに裕也を睨む優希。
『あぁ、優希は凄く可愛いよぉ!ってさっきから言ってるし!』
『何回言ってもいいの!優希は言われたいの!』
裕也は俺にヘルプを求める様に目で合図した。
困ったな……いきなり振られても…
『とりあえず屋台行こ?あ〜腹減った!』
ワザとらしく背伸びし、裕也とアイコンタクト…
裕也も片目をパチッとウインクし合図した。
『綾ちゃん!裕ちゃんがなにかおごってくれるってぇ!優希を怒らせたバツだよ!』
優希は怒りながら綾音と手を繋いで屋台に向かってしまった…
『あはは…。じゃあね…』
こればっかりは綾音も苦笑い…。俺達に軽く手を振り、優希に連行されてしまった…
優希って結構ワガママなんだな…
俺は裕也の肩をポンと叩き、綾音達の後を追った。
『俺、金ねえよぉ!』
裕也も、泣きそうな顔をしながら俺の後を追った。
日も暮れ、太鼓の音が響き渡る。久々に皆が集まったってのもあり、祭りと共に俺達のテンションも盛り上がっていった。