桜
山本(先生)に、朝から怒られ、気持ちが凹んでいた。
教室は3Fで、上がるとすぐの所にある。
ガラガラ…
『おは…!バシッ!
教室に入ってすぐに、誰かにひっぱたかれた…。
『いてぇな!何だよ…。』
俺は、不機嫌を爆発させる様に当たり散らした。
『遅刻するのがいけないんじゃん!』
綾音は、ニコニコと…、楽しそうだ。
不機嫌な俺に対して、強気な態度をとる綾音、俺は、毎朝の様に絡まれていた。
『朝から山本に説教されて疲れてんだからさ…。』
絡み返すと後が怖いから、控えめに突っ込み、席に座った。
『いつも遅刻ばぁっか!ちゃんと起きなさい!』
『そうだよ!俺みたいに、真面目に勉強していりゃ災難は起きないぞ!』
裕也まで…。お前は、真面目の部類には絶対入らない!心の中で全否定してやった。
俺にそんな事、言えるのは綾音と裕也位なもんだ…。
綾音は、保育園の頃からの友達。そう、幼なじみ!心配してるのか、ストレス発散してるのか…。俺に当たるのが生きがいみたいなヤツだ…。裕也は、中学生の時、転校してきて、それからずっと一緒だな…。はぁ〜。
窓際の席に座る俺は、外の景色を楽しんでいた。グラウンドでは、サッカーとテニス。そのグラウンドを囲む桜。綺麗に咲いていた。
心地よい風を浴びながら、桜を眺めていた。“やっぱり桜っていいよな…”花が好き。空が好き。何度、席替えしても窓際を譲ってもらう…(いいのか?)、四季の景色を独占する、ワガママな人生を歩んでいた。
ツンツン…
後ろに座る綾音。用があるときは、大体シャーペンで突っついてくる。
『ん、何?』
後ろを振り向き問いかける。
綾音は、“何で振り抜くの?”って顔をし慌てた。
『三神!前見て、授業聞きなさい!』
案の定、注意された。俺は、呼ばれたから向いただけなのに…。
後ろで笑いを堪える綾音。“綾音のお陰で怒られたんだぞ!”後で、覚えてろよ…っと、思いながらも何も出来ない俺…。情けない…。
退屈な授業。勉強は嫌いだが、学校は好きだった。こいつらと過ごす日々は退屈しなかった。
授業も終わり、帰りの支度をしていた。
『楓?帰ろ!』
『おぅ!』
綾音とは、いつも一緒に帰っていた。家が近いってのもあるが、習慣ずいていて、これが普通の流れになっていた。
『裕也は?』
『お?俺、バイトあるから先に帰るわ!』
俺達に、軽く手を振り走って教室を出ていった。高校入ってから、兄貴の紹介でサーフショップのバイトを始めた裕也。面白いらしく、俺達よりもバイトを選んでいる。ちょっと寂しい瞬間だ…。
『んじゃ、帰るか?』
『うん!』
綾音…、少し寂しげな表情してたな…。昔は、四人でよく帰ったな…。バイトを始めてからは二人で帰る事が多くなった。多分、それが寂しい原因なんだろう…。
廊下に出て、階段を下り、校門に向かった。
学校と校門を繋げる道、その両サイドには無数の桜の木が植えられていた。
この学校を選んだのは、近いからってのもあるが、この桜の道が気に入ったからだ!
アスファルトの上を歩くのではなく、敢えて、桜の木の下を歩きながら進む。
時に、立ち止まり桜を眺める。“綺麗だな…”
『楓って、ホント桜好きなんだね…。』
綾音は、微笑みながら俺を見つめていた。俺が、立ち止まると綾音も立ち止まり、一緒に眺める。
『好きだな…。ずっと咲いてたらいいのにな…。』
目を閉じ、桜の匂いを嗅ぐ。春にしか咲かない花。一年に一回の晴れ舞台。このピンクに染まった道、少しでも長く、この舞台に立っていたかった。