最高の仲間
かれこれ何時間学校にいるのかな?綾音と二人、グラウンドを見ながら優希の事を待っていた。
待つのも飽きてきた俺は良い事を思い付いた。
『なぁ綾音?』
『ん?』
『ちょっと…覗き行かない?』
『えぇ?……優ちゃん?』
『そぉ!』
綾音は少し考えていた。最初は迷った表情をしていたが、結局…笑顔に。綾音も、こういうの嫌いじゃないんだな?急いで保健室に向かう事にした。
『転校生なんかほっときゃいいんだよ!』
俺は廊下を歩きながら愚痴っぽく呟いた。
『優ちゃん…優しいんだよね。困ってる人とか見ると助けちゃうんだって。』
綾音はニコニコと笑みを浮かべながら話していた。
『まぁ、めちゃくちゃ優しいな!怖いときもあるけど…。』
『あははっ。そうだね。綾には優しいよ?だから好き!ずっと友達でいたいな。』
話をしながら歩いていた。保健室はあっという間に着いてしまった。もう少し話していたい。でも、優希も気になる…。
保健室をそ〜っと覗いて見ると、優希と転校生が座っていた。間に合った。そして、二人何か話していた。
『あぁ!凄い青たんだ!痛いでしょ?』
『…痛くねえよ!』
優希はチラチラと転校生を見ながら何か企んでいた。
優希は何を思ったのかその青あざを親指で力いっぱい押し始めた!転校生の表情は苦痛な表情に。それを見ていた優希の表情まで痛々しい表情に…。廊下で見ていた俺と綾音…笑いを堪えるのに必死だった。
『痛っ!マジ痛いって!何なんだよお前は!』
『お前って名前じゃない!山倉優希だよ?はぃ、覚えた?よろしくね!』
優希は手際良く消毒をし、包帯を巻き始めた。
『何で男の子って喧嘩とかするんだろうね。強いとか負けたくないとか…。優希…喧嘩嫌だ!怪我とかも嫌だ!こんなの見たくないもん。』
一生懸命包帯を巻く優希。その優希を優しく見つめる転校生。
『…あのさ。』
優希は『ん?』って顔して転校生を見上げた。
『包帯…巻きすぎじゃね?』
優希は顔を真っ赤にして俯いた。そして…
『いいの!血が滲んでも大丈夫なように多めに巻いたの!』
その如何にも言い訳じみた言葉に転校生は大爆笑!俺と綾音もその場から離れたい気持ちだった。
『山倉って面白いな!』
『優希でいいよ?皆そう呼んでるし。』
『…さっき、ごめんな?』
『ん?』
『手…痛かっただろ?』
優希は優しく微笑み包帯を縛った。
『情けないよな!喧嘩に負けて、女に当たるなんてよ…。ホントごめん!』
『いいよ。』
『優希は優しいんだな。』
『そんな事な〜い!怒ると恐いんだから!』
『そうだな!…ありがとな?あと…上でめちゃキレそうだった奴…彼氏か?謝っといてよ。』
『楓君?楓君は綾ちゃんの彼氏だよ?』
優希の思いも寄らぬ発言に俺と綾音は目もあわせられなくなった。
『それに、自分で言った方が良いかもよ?さっきからず〜っとそこにいるしね!』
『はぁ?』
優希にはバレていた。俺と綾音は驚かせようと待っていたのに、逆に驚かされる結末に…。渋々、優希の元へ…。
『ごめん!盗み聞きするつもりはなかったんだよ!』
綾音は横目で俺を見つめていた。まるで俺を責めている…様な視線を送っていた。綾音…お前も同伴だぞ!心の中で叫んだ。
『ずうっとバレてました!ね、裕ちゃん!…あ、裕ちゃんって言っちゃった!』
『いいよ、優希なら!』
優希と転校生…良い雰囲気だな。
『…それとさ、さっきごめんな?仲間叩かれりゃ、ムカつきもするよな!ごめん!』
素直に謝る転校生。俺は、さっきの事は気にしていなかった。逆に結構良い奴なのかもな…。そう思っていた。
『俺もごめんね?怒鳴っちゃったりして。仲良くやってこうよ!ねっ、裕也君!』
『ありがと…、裕也でいいよ!』
『んじゃ俺も楓で!』
日も暮れ始め、外からは部活の練習している声が聞こえていた。こんなに長く学校にいたのは初めてだった。でも、いて良かった…。後々、そう思ったのは言うまでもない。