第四章 最悪の出逢い
俺達は、最初からこんなに仲が良かった訳じゃなかった。寧ろ、ココまで仲が良くなるとは誰も思わなかった…。
初めて裕也を見たのは三年前。
『はい!皆席に着いて。』
中学一年の春、親の都合でいきなりの転校。入学してすぐに俺達の学校に来る事になったらしい。複雑な事情があると前々から先生に聞かされていた。
半分位の生徒は、小学校からそのまま繰り上げ。周りの学校からエリア分けで集まった学校だ。こんな時期に転校なんて普通有り得ないだろう。クラス内で色んな噂になったのは言うまでもない。
『今日から新しい友達が増えます。…さぁこっち来て!』
『よっ!真田裕也っす!よろしく!』
最初の印象は最悪だった。髪は金髪のツンツンスタイルでピアス…。ポケットに手を入れたままの挨拶。そして、すぐに席に着いた。先生も呆れて何も言えないって表情だ。
あれじゃ後で喧嘩だな…。まぁ俺には関係ない事だけどね。
俺はどちらかと言うと真面目なタイプで、どう見ても転校生とは別世界の人間だった。
『楓!帰ろ?』
『うん!』
綾音とは幼少の時からの幼なじみで、今も昔も変わらない関係。いつもの様に学校が終われば一緒に帰っていた。
『あれ?優ちゃんいないね…。どこいっちゃったんだろ?』
『……少し待ってみる?』
『うん!』
優希は、ちょっとずれてる所があって、たまに俺達でもわからなくなる時がある。そして今も…。
徐々にグラウンドはオレンジ色に包まれて行く。教室には俺達と何人かの荷物。勿論、優希の荷物もあった。
『帰るか?』
『えぇ…荷物あるもん。』
優希がこんな時間まで俺達をほおってどこかに行くって事は今までなかった。それだけに不安がよぎった。
『ちょっと…探す?』
『探した方がいい!』
俺と綾音は、血相を変えて探しに向かう。そんな時…
ガタッ!
教室のドアの所から凄い音がした。
『いいから!』
『良くないよ!怪我してるじゃん!』
男の声となんか聞き覚えのある声。俺と綾音は急いで廊下に出た。
廊下には傷だらけの転校生がドアに寄りかかって何か文句を言っていた。そして、その相手は…優希。聞き覚えのある声の正体は優希だった。
俺と綾音は優希と転校生の所に行こうとした時…
『ほら、口とか手とか血が出てるよ?』
優希はハンカチで転校生の傷口を押さえようとした。
バシッ!
『いいって言ってんだろ!』
優希の手を払う転校生。ハンカチは俺のいる所まで飛んできた。
『あ…ごめん。』
何故か優希が転校生に謝る。そんな光景を見ていた俺。何か体の中から込み上げてきた。
『お前、ふざけんなよ。拾えよ!』
『はぁ?』
『拾えって言ってんだろ?それと優希にもちゃんと謝れ!』
俺は転校生を睨みつけ、今までにないくらい激怒した。善意でしている優希にその態度は何だよ!感情が我を忘れ、頭で思う前に言葉に出ていた。その位怒っていた。
『……何熱くなってんだよ。悪かったな!』
そう言って転校生はその場を去ろうとした。普通ならそのままなんだけど…優希は違かった。
『ダメ!怪我してるんだから保健室行くよ?』
『だからマジいいって!』
『綾ちゃん、ごめんね?先に帰ってて?』
と言って転校生と歩いて行ってしまった。俺と綾音は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
これが俺達四人が初めて集まった最悪の出逢い…。