絆
外を眺めていると、部屋の中から変な声が聞こえてきた。
ふと見てみると、裕也が独り言を呟いていた。
肘をつきながら足を交互に動かし、一枚一枚アルバムを捲る裕也。写真を見れば微笑み違うのを見ればまた微笑む…。
『……裕也?まだ…引きずってるのか?』
足の動きがピタッと止まった。何を言うのでもなくまたアルバムを見始める。
だよな…。引きずるなって方が無理だよな。正直、俺だって引きずったまま…かもな。綾音なんて…。
俺は何気なく音楽を流した。少しでも紛れれば…
『なぁ…。』
『ん?』
裕也は立ち上がり、俺に写真を見せてきた。
その写真は俺と綾音の二人が写った写真。
『この写真見るといつも思うよ。この頃、楓緊張して動かねぇんだもんよ!あははっ。』
『き、緊張なんかして…。』
写真を見れば一目瞭然。顔まで固まっていた。
『今でも緊張してる時あるよな?くくくっ。』
そう言って酒を呑む裕也。
人の過去をつまみにして酒を呑むなよ…裕也!でも、少しでも笑ってくれればいいのかな?文句を言いながらも内心はホッとしていた。
『綾音と付き合えば?』
『な、何でいきな…。』
ふざけてるのかと思ってた。でも、アルバムを見ながら表情は真剣だった。
『いつかは告るんだろうな!』
『いつかぁ?……はぁ。』
裕也が立ち直るまでは俺もお前に付き合うよ。一緒に乗り越えような!
俺は外を見ながら裕也と綾音に話す様に呟いた。
『明日、休みだし逢いに行くか?』
『……。』
『喜ぶぞ?思いっきり騒いじゃったりな。』
裕也は何も喋ろうとしなかった。ただ、アルバムを見ながら顔を上げる事はなかった。
学校では明るく振る舞ってる裕也。でも心の中では常に…。
『後少しで二年か?あっという間だな…。』
『な?明日二人で逢いに行くぞ!』
『……バカだな…楓は。綾音にバレたらなにされるかわからねぇぞ?相変わらずだな。』
『ヤバいかな…。まぁいいじゃん?バレたらバレただよ!』
『後で電話しときなよ!一緒に行けばいいんだからさ!』
『そうだな。』
その後は写真を見ながら思い出に浸った。色々あったな!辛いかもしれない。逃げ出したくなるかもしれない。でも前を向かなきゃ先には進めないんだよ。共に乗り越えような!裕也、綾音…。