アルバム
綾音を家まで送り返し、ゆっくり歩きながら夜空を見上げた。
綾音と見た星空…。少し余韻に浸りながら顔が緩む。
清々しい夜風が俺を包みこんだ…、夏も後少しか…。目を瞑り夏の前触れを感じながら静かに空を見上げた。
『心地良い…。』
『な〜にが心地良いだよ!』
!!!
俺は驚きの余り動きが止まる。そして声のする方に目がいった。
そこには、木に寄りかかりながらタバコを吸う裕也がいた。勿論、左手には缶ビールを持ちながら…。
『裕也?い、いつから…だ?』
『いつから?何が!』
『何がって、いつからいたんだよ!もしかして…ついてきた?』
『はぁ?ついてきたって、人をストーカー扱いすんなよ!心配だったからよ!』
裕也って奴は…。まぁいつもの事か…。俺は渋々裕也と歩いて帰る事にした。もぅ少し…余韻に浸っていたかった…。
家に着くとビールの缶が二つも空いていた。この短時間で…。
裕也は部屋に着くとまた缶を開けた。そして、俺に呑めと言わんばかりに差し出してきた。
『んで…どうだったん?』
俺はビールを呑みながら裕也を見つめる。そして…
『どうって何が!』
『何がって綾音の事に決まってんだろ?』
やっぱりな…必ずくるって分かってた。裕也の性格上聞かずにはいられないタイプだな!
『…ずっと見てたんだろ?悪趣味だよな!』
『いやいや!失礼な。本人の口から聞きたいだけなの!』
裕也は少し酔いが回っているのかもしれない。こんな時は話をすり替えれば大丈夫!
俺は空気を入れ替えようと勢い良く窓を開いた。気持ち良い風が部屋に迷い込んでくる。
『気持ち良いな…。良かったな、明日は晴れるぞ!』
『……ちぇ!』
『今日、ホントはどうしたんだ?』
俺は裕也が来た訳を知っていた。敢えて裕也の口から聞きたかった。
『楓だってわかってんだろ?』
裕也は寝転がり徐にアルバムを漁りだした。そのアルバムは、俺、裕也、綾音…そして優希が写し出された思い出のアルバム。
この時期になると決まって家に来る裕也。そしてアルバムを見始める。
俺は何も言わず外を眺めていた。綾音も寂しかったのかな?同じ気持ちの中で少しでも一緒にいたかった。そんな事を思いながら夜空を見つめていた。