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心の奥に…

 結局、綾音には内緒のまま昼休みを迎えた。


 綾音にバレない様、裕子…裕也の待つ屋上に向かった。


 屋上には地べたに腰を下ろした裕也。空を見上げながら一人誰かと話す様に呟いていた。俺は声を掛けようとしたが少し待つ事に…。少し離れた距離…。何を話してるなんて分かるはずもなく、ただ裕也を見つめていた。


 話終わったかと思えばタバコを吸い始め、そして楽しそうに話始める。


 そんな裕也を見て…俺は何となく誰と話しているのかわかってしまった…。




『楽しく話してるとこごめんね!』


 いきなり声を掛けられた裕也は、案の定驚いた表情で振り返った。


 俺はゆっくりと裕也に近づき隣に腰掛けた。


『盗み聞きなんて趣味悪いぞ!楓。』


『会話なんて聞いてねぇよ!つうか聞こえないし。』


『ちぇ!』


『楽しそうだったな…。』


『………あぁ!』



 どの位かな?沈黙が続いた。話す内容がない訳じゃない。話さなくてもお互いの気持ちが伝わりあってる空間…そんな時間が流れていた。


『最近はどうなん?』


 最初に口を開いたのは俺だった。昔からの友達。今、どういう心境なのかはわかってるつもりだ。


『どうもこうも…いつもと変わらないな…。それより綾音と付き合わないの?』


 裕也のあまりにもストレートな問い掛けに顔が引きつる。


『……正直、怖いのかも…。』


『綾音は楓の事好きだろ!見てわかるよ。昔っから。……もしかして俺の事気にしてんのか?』


『んな……勇気がないだけだよ…。』


 正直それもあった。勇気がないってのもあるが…。


『……さっき話してたの…優希だろ?』


『…んだよ、聞いてたんじゃんよ!』


 最初はこの事には触れないでおこうと思っていた。でも…裕也が一人悩んでる時にほおってはおけなかった。


『聞こえてないし!ただ、あんな楽しそうに話す裕也…悔しいけど優希と話す時位じゃん?見ててわかっちゃったんだ…。……ごめん。』


『……そうだよ。優希…ずっと一緒だもんよ。でも、楓も綾音も同じ位好きだぜ!だからそんな事言うなよ!なっ?』


 爽やかな笑顔で俺の肩を叩く裕也。そう言って黙り込み、また空を見上げた。


『あ!こんな所にいた!』


 俺と裕也は、きたきたと言わんばかりに目を合わせ立ち上がった。


『どした?』


『どしたじゃないでしょ?裕也君!学校はタバコまずいでしょ…。』


『ふふっ。バレたら綾音が吸ってたってチクるよ!』


『なっ!裕也君、人のせいにしないでよ!っていうか私吸わないし!』


 裕也は背中越しに手を振り屋上を後にした。


 裕也…女の事好きになれるのか…。優希の事…引きずったまま生きて行くのか?忘れろとは言わない!でも…先に一歩踏み出す事は出来るんじゃないのか?……裕也。


『楓?裕也君となに話してたの?』


『ちょ…ちょっとね…。』


『また秘密!』


 眉を寄せ、腕を組み始めた綾音。


『か〜え〜で〜!』


 ……俺もこの場から去りたかった…



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