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君を守りたい  作者: 長井雪
第二部
61/62

銀の君[第一章]

大変お待たせしました。新章突入です。



 白いユリエの花弁が空に舞う。一年前と同じように。そう一年たったのだ。学院の門から続く一本道を同じように歩く。

 いつもと変わらないはずなのに。


「大丈夫ですか?」


 アリアは振り向く、振り向かなくても予想はついていた。学院では珍しい女子生徒、クレア嬢だった。

 何が大丈夫なのか、アリアはよくわかっていた。


 エミリオがいない。その一年が始まるのだ。

 でも――


「クレア様、ありがとうございます。でも、ちゃんとお別れをしてきましたから大丈夫です」



 二週間ほど前の事だった。エミリオから出立する日時を聞いて、見送るかアリアは悩んだ。剣を捧げられたのにいまだ返事が出来ない自分が行っていいのか。

 でも、彼に最低でも一年は会えない。そう思うと自分の心の声をそのまま聞くことにした。




 エミリオは王太子殿下の付き添いで留学のお供をするという名目だったので、お見送りの人間は殊の外多かった。


「アリア!」


 だが、エミリオはアリアを見つけると一目散に走ってきた。そつがない公爵家の後継者殿の珍しい一面は温かい目で許容されているようだった。


 エミリオがアリアの傍にまで来るとエミリオは見送りの為にアリアが持ってきていた花束ごとアリアの両手をとって話し出した。


「来てくれてすごく嬉しい。……言いたい言葉がたくさんあってなにから言い出したらいいのかわからない。ただ、遠くにあっても私は貴女を思います。手を離すことがこんなにつらいなんて思わなかった。一生の別れじゃない。きっと一年や長くて二年か三年のことなのに」


 それなのに、なぜこんなにも。

 アリアはエミリアという過去があるから。エミリオも記憶はなくても何か感じるものがあるのかも知れない。だから彼が言葉を尽くしてくれているのがわかるから。


 だからアリアも後悔の無いように素直に言葉にする。


「どうかご無事で、お怪我をしてはいやです。ご病気になっても駄目です」

「……ありがとう。とても嬉しい」


 今出来る私の精一杯の言葉で君を送る。


 言うのも恥ずかしかった。言葉を受け取るのも恥ずかしかった。でも、いいのだ。


 ――とアリアが回想しているとクレアの言葉で現実に戻された。



「あら、お顔が赤いですわよ」

「なっなんでもないのです!」






 講義室でアリアとクレアは隣同士に腰掛けていた。講師の話が聞きやすいようにと、教壇の近くの席に座る。

 もうすぐ講師が来るという時間になっても皆そわそわと落ち着きがない。思わずアリアは独り言のように呟いた。


「本日は、みな落ち着きがないですね」

「そういえば、留学生がくるそうですわ。新しい風ですわね」


 王国から王太子殿下が公国に行くように、王国に来る者もいるのだろう。留学は最低一年間。つまり一年はこの学院でともに学びあうのだろう。


 そうアリアたちが話している時だった。ちょうど講師が一人の少年とともに講堂に入ってきたのは。



 銀色の髪を一つに結んだ少年だった。鋭い眼差しが意思の強さを物語る。


 肌を首元から手の甲まで服で隠し、さらに肩には白い獣の毛皮をかけている。皇国の装束だった。そしてその背後には護衛の青年が一人。



 アリアは何よりも色に目が奪われた。あれは皇族の色だと分かるから。



 少年は講堂を見渡すと、アリアに視線を定めて『何故に女がこの様な場にいるのだ』と少年が言う。


 血盟の言葉、皇語だった。

 周囲は驚き言葉がでない。だが少年は『答えよ』と言葉を重ねる。自分の発言に応えぬ者などいるはずがないというかのように。


 銀の瞳をことさら険しくさせて少年が続けた言葉に講堂は静まり返った。



『お前の様なものを出す気が知れぬ』


 いつも表情のないアリアの口元が、ひくりと歪んだ。








実は新しい別の小説を書きはじめました。ですが、そんなに長くないですし大半内容は書き終わっているのでご安心ください。君を守りたいもゆっくりですが頑張ります。

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