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君を守りたい  作者: 長井雪
番外編
55/62

アンケート結果、第一位

2、もしも、15歳のアリアとエミリオが初めて出会ったらの話。

(なぜ、11歳で二人を出会わせたのかが分かって頂けるだろう話。……今後のネタバレの危険多少あり。←ないように書きましたので大丈夫です。)



「また今日も、ですね」


 少女は静かに告げた。

 彼女の背後に立っていた青年は嬉しそうに微笑んだ。まるで彼女の姿が見えただけでも嬉しいと言っているかのようだ。


 そこは彼女の邸の庭で、芝とささやかな花だけが咲いている。決して楽しい場所ではないし、会話もあまりない。

 それでも――


「明日もくるのですか」


 えぇ――にこやかに、だが真っ直ぐに青年は告げる。


「私の思いが届くまで」





 二人の出会いは、まるで恋物語のようにはじまった。






 夜の舞踏会。

 美しい少女は声をかけてくる男たちの相手に疲れていた。とても面倒で煩わしい。だが少女は、ある人をさがしている為に人が多くいる場所には顔をできるだけだすことにしていた。


 前世の妻の生まれ変わりを、である。


 この美しい少女は、ある男の記憶をもったまま生まれ変わってしまったのだ。妻を守れず死なせてしまった男の記憶を。


 だから少女は、もう一度あえたならば。

――君を必ず守ると誓って、15年生きてきた。


 剣術を、勉学を、知識を全力で高めてきた。今では美貌だけでなく、才媛とも名高い存在となっている。


――なのに、肝心な君にはあえなくて。


 君はどこにいる?


 前世と同じように貴族かと思ってお茶会や、夜会に行っても君はいない。もしくはと思って平民、中流階級の人々がいる市場や下町にも行ってみたが結果は変わらない。


 少女は自分が前世と同じ国に生まれ、金の髪に青の瞳といった外見の特徴から、貴族階級という位まで一緒だった。


 だから彼女も同じように生まれ変わっていたのだと思っていた。けれど――


――もしかしたら、彼女はこの国にはいないかもしれない。

……もしかしたら、生まれ変わっていないのかもしれない。


 一日が終わるたびに不安が折り重なっていく。

 だから、必死に必死に彼女をさがしているというのに。



「ですから、私は貴方を見ていたのは偶然です! 決して貴方に気があったわけではないのです」


 外見がとんでもなく美しく生まれてしまった弊害、その一に少女は苛まれていた。


 見ていただけで、勘違いする男どもである。『貴方の隣で立っていた茶の髪の女性を見ていたんです』と言えるものなら言っている。


 なんとか罵倒しないように説得、というか説明を少女はする。だが場所は、少女が風にあたりたいとテラスに出ていた為にひと気がない。


 つまりは孤立無縁な状況で敵を倒さなくてはいけない、ということである。


 『さて、どう言いくるめるか』少女が考えたときである。問題が起こった。何を考えたのか、思いが募ってか――青年が飛び掛ってきたのである。


 少女は驚きながらも、なんとか避けた。だが――テラスの欄干に腰がぶつかり、あっと思ったときには宙を舞っていた。





 夜空に月が見えた。とても、きれいだ。そう思う間もなく身体に衝撃が走る。


 誰かが受け止めてくれたのだ。だって身体が痛くない。心臓が激しく動く。死にかけたのだから当然だ。だが衝撃で声がでない。そう思っていると声がした。


「大丈夫ですか?」


 低い男の声。その声に導かれて振り返る。

 茶の髪と鋭く見えてしまう眼差し――彼女だった。


 あえた。ようやく。そう思ったときには泣いていた。


 涙がとまらなくて、彼女、いや彼の胸に置いた手が離せなくて。

 気がついたときには彼が優しく背をさすっていてくれた。



「あり、がとう」


 たくさんの思いをこめて言った。


 助けてくれた。背をさすってくれた。――そしてなにより、私の前に現れてくれたことに。

 人生で一番の笑顔をそえて。


 でも、こんな失態をしたところを見られたことは恥ずかしくて、そそくさと逃げ帰った。



――だから気づかなかった。青年の熱をおびたような表情も。その眼差しの意味を。





 彼の名を聞く前に帰ってしまったことに気がついたのは、自室に帰り寝付く前のことだった。浮かれていた気持ちが一気に下がる。


 だが、一度見つけられたのだから、今度はきっとすぐに見つけられると思った。それに、助けてくれたことへのお礼として仲良くできるかもしれない、とも思っていた。


 あまりに幸せで、眠る事が難しかった。



 そして夜が明け、驚愕の朝がくる。


 だれかの言い争う声が聞こえ、急いで応接室に入る。するとそこにいは家族と“彼”がいて――昨夜は気づかなかった。予想よりも高い身長と、剣を扱う人間の体つき。身体を見ただけでは“彼女”とはとても思えなかったと思う。


 その思考を断ち切るように彼の声が響く。



「お元気そうでよかったです。昨日からずっと心配していたので」


 急いで昨日のことへの感謝と謝罪を言った。わざわざ心配して来てくれたことへの感謝も。だが。



――いいえ。今日来たのには理由があります。私は貴女に生涯の伴侶となっていただきたいのです。




「貴女に恋するが故に」








 貴女にあって、ちょうど百度目の夜が来る。


 あの夜に空を舞った貴女を見て。


 貴女のことが気になって。

 貴女のことを知りたくなって。

 貴女のことを好きになって。



 できる限り行く。どうしても仕事が忙しくて行けないときには花を届けて。



「ここに来る度に、私は貴方に言っているつもりでした」



――愛していると。



「覚えていますか? 今日は貴女に会うのは、これで百回目なんです。……つまり私は貴女に“百回目の愛している”を伝えに来た」



 貴女に勝負を挑みます。恋の勝負を。





なぜ、書かなかったのか(この年齢で)。それは普通の恋愛話になりそうだったからだと思います。書いてもつまらないかな、と私は思ってしまいそうなので。

11歳だからできたエピソードもありますし。


あとネタバレするかもと書いていましたが、その部分はカットしました。

第二部にとっておきます。


もう少しエピソードは入れようかと思ったのですが十分ですよね。


穏やかに見えて強い青年と、長年会えなかったせいで気持ちがぐらぐらするけど、意思が強い少女?の駆け引きがはじまります。それだけです。


これで本当にお礼になっているといいのですが。第二部は構想中で、時間がやはりかかりそうです。すみません。



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