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君を守りたい  作者: 長井雪
第一部
25/62

君に伝える我が心

投稿が遅くなってしまいました。ごめんなさい。

また頭がすごく痛いです。

変な文になっていないといいのですが。


あと、アンケートが不快な方も、やはりいらっしゃった様なので申し訳なく思っています。


結論といいますか、作品の今後について、の文書を25日に掲載するつもりです。

(ちょうど書き出して一ヶ月になりますし。)

私なりの精一杯の考えです。


たくさんの方に読んで頂けているようで、とても嬉しいです。

評価、お気に入り登録もありがとうございます。

元気がでました。


――兄上がしつこい。なんなのだ、あの執念深さ!!

 もう夜中であるぞ。晩餐の間中もだが、その後もずっっとである。今ようやく自室に帰してもらえたのだ。相手は誰やら、どこで知り合ったのやら。『違う』と言っても聞かんし。どうしろというんだ。


――あぁ、いかんいかん。こんな愚痴を書く暇はないのだ。


 久しぶりの日記になってしまったな。

 “周囲の心配”という名の監視があったとはいえ、三日も書けんとは思わなかった。

(彼の横で不覚にも惰眠を貪った一件から、ずっと体が本調子ではなかったのだ。もう平気であるがな)


 さて、どこから書くか。そうだな“アリアス”として動いた日からの整理からだな。

 『封筒』を届ける、運び屋の仕事をした日だ。


 リードは最初から『封筒』がエミリオ少年のものだと知っていたらしい。だから依頼を受けてくれたそうだ。

(私が受けなくても最初から失敗する様に仕向ける予定だったらしい)


 そして、紆余曲折あったが『封筒』を彼に返す事ができた。まぁ、それはいいのだ。



――問題は彼の敵が、いまだ目的を諦めてはいない事だ。

 まずは、リードが話してくれた『事の起こり』を書くとしよう。


 エミリオ少年の敵は、彼の“叔父”である。


 目的は彼をこの国の王女と結婚させたいらしい。

(権力を強めたいそうだ。……その為には自分の甥も道具にする。権力者にはよくある事だ)


 しかし、彼は、その、ある少女にとても惹かれていて、その少女と結婚したいらしい。


 彼は叔父からの再三にわたる説得に応じなかったそうだ。

 そして、痺れを切らした叔父は『ある少女』に働きかける事にした。

(まぁ、その少女もそこそこ以上の家柄の娘だった為『丁重な手段』だったが)


 その為に前回の『銀の栞』強奪事件はおこったのだ。


 簡単に言えば、少女からの“返礼”を突き返す。それだけの事だ。

(なんでも、『ある少女』は大変、儚い風貌である為、それで十分だと判断したそうだ。……誰の事であるかな)

 叔父の動きを察知した彼は、数人の護衛をつけて『銀の栞の入った封筒』の奪還にむかった。


 そして“運び屋のアリアス”に出会う。

(……私が倒したのは彼の護衛だったという事だ。悪い事をしてしまった)


 アリアスは護衛を倒し封筒を守ったが、そこに乗り込んできたエミリオ少年と川に落ち、行方不明となる。

 叔父は慌てて配下に川の付近を捜索させ、情報屋に捜索の依頼もした。

(エミリオ少年が生きていなくては、どうにもならんからな。……馬鹿者が)


 そして情報屋から“彼の身の安全”と“アリアスの居場所”の情報を受け取り、配下を差しむけた。


 だが、結果は失敗。(当然だな)


 エミリオ少年は、川に自ら飛び込む暴挙をし、熱もだした。

……命が危なかったのだぞ。


 それでも、叔父は諦めないそうだ。


 それは、最近の彼、エミリオ少年を見ていればすぐ分かる。なんというか、変なのだ。



――今日の事だ。学院の剣術の授業で『剣を捧ぐ』についての講義があった様だ。剣を捧ぐ――この国で、忠誠と誠意を相手に伝え、誓う儀式だ。

 別にそれは構わない。誠意の伝わらない儀式をしでかさない為に、準備する事は間違いではない。

(私も昔は練習したしな。格好が大事だったりするのだ)



――問題は、講義の後で“実習”したいと言い出した馬鹿がいた事だ。 方法として、誓文の暗唱、動作の確認をするのは間違っていない。


 問題は“私”相手にしたい、と言いだした事だ。何を馬鹿な。剣を捧ぐという事は、命をかけて心を捧ぐという事だ。

(私の前で膝をつけば、正式な儀式と変わりはしない。儀式の神聖性をなんだと思っているのだ)




――おかげで私は、この姿で儀式の“手本”をする事になったのだ。


「アリア様、私たちの練習にお付き合いください! お願いします!!」


 中庭にいると、顔を赤らめた少年たちはやってきた。

 剣を持った少年たちに囲まれた私は、(内心の罵倒は出さず)身近にいた少年から剣を貸してもらった。

(奪い取ったと言ってはいけない)


 戸惑う彼らを放置し、私は彼らに背をむけた。

――だれもいない空間にしか、膝をつく気はなかったから。


 鞘に入ったままの剣を水平に両手で持ちあげる。


 右手で柄を持ち、左手で鞘を抜き、片膝をつき、地に置く。右手を捻り、剣を空にかがげる。

 後は右手を心臓にむかって動かし、左手を右肩に置くだけである。

(剣を両手で抱きかかえている感じだな)


 誓文を、言うつもりはなかった。

(私が剣を捧げた人は、もういないのだから)



――だが、そんなときだった。


 こちらに走ってくるエミリオ少年を見つけたのは。


「……我が心を貴方に、我が命尽きるまで、ともにある事を願う」



 か細い音が喉をでた。どうして。

 自分でも不思議だった。なぜか口から出た。


……最愛の君への誓文が。


 私は一瞬呆然としたが、すぐさま立ちあがって背後を振り返った。


「剣を捧ぐというのは、……確かこの様な動きでしたわね。兄様が練習なさっていたから覚えていましたの。あっていて?」


 少年たちは、なんとも気弱なセリフを言い残して去って行った。

(当然だな。下手な儀式を見せて恥をさらす度胸がある様にも見えん)


 そこにエミリオ少年はやってきた。少々息が荒い。走ってきてくれたのだ。……彼らを止める為に。


「……彼らを止められず、申し訳ありませんでした。貴女に煩わしい思いをさせてしまった」


「貴方に責任はありません」

「しかし」


 エミリオ少年の顔色は悪かった。体調が万全ではないのだろう。

(彼に責任など、最初からありはしない。ただ、私の事を思って来てくれたのだ)


……そして間に合えば、また、守られる事になってしまっただろう。


 なのに、なんでだろう。とても嬉しい。そう、思ってしまった。


 どう伝えればいいのか、よく分からなかった。

 だから、また、彼の手を握った。


「走ってきてくれて、嬉しかったです」


 ちょっと笑ってもみた。気持ちが伝わればいいなと思って。

 でも、なぜか彼は泣きそうな顔をした。


 苦しくて、でも、何も言えない。そんな複雑な顔だった。



――彼は叔父とのやり取りで疲れきっていたのではないだろうか。


 それを実証するかのように――アリアスへ依頼があったのだ。

 王立図書館からの本の返却催促状が届いた。中身はリードからの(とても簡単な)暗号文だ。 貸し出し期間の過ぎたリストの本の題名の頭文字を上から読むだけである。



――少年からの依頼、だった。


 なので明日は、本の返却に行こうと思う。




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