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不滅の魔女様、VTuberになる。  作者: 猫好きのユリスキー
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第4話︰配信終わりと会社からの電話


「ん〜…!」


 なんとか無事に初配信を終えた私は、ずっと座りっぱなしで固まってしまった身体をほぐしていた。


「お疲れ様でした、メルトリーゼ様」


 配信が終わったのを確認してから、部屋の中に使い魔であるキャスパーが入ってくる。


「こちら、紅茶には疲労回復やリラックスの効果があるので、アールグレイを淹れてきました。どうぞお飲み下さい」


「おぉ、さすが私の使い魔ですね。ありがとうございます」


 どうやら私の為に紅茶を淹れてきてくれたらしい。しっかりと茶菓子でフィナンシェを持ってきてくれる辺り、ホントに気遣いのできる良い使い魔です。


「それと…初配信はどうでしたか?」


「初配信ですか…ん〜…そうですね…」


 最初に立ち絵を表示されてないミスをしたり、そのせいで時間を使いすぎて運営さんに少し注意されたり、その他にも永遠(とわ)リスの皆と話したり、ふざけあったり。

 確かに疲れるような事はたくさんあったけど、それよりも…


「疲れはしましたけど、予想以上に楽しかったですね…!」


 そう、本当に楽しかった。

 数千年以上生きてきた私が、今までした事のない新しい体験をして、優しい人達と一緒に、配信中ずっと心地いい時間を過ごせた。色々あったけれど、それも加味して凄く楽しかった…そう断言できる。


「…良かったですね。メルトリーゼ様」


「えっ…?」


 そんな配信の余韻に浸っていると、紅茶をカップに注いでいたキャスパーが安堵の表情で私に微笑んだ。


「…今のメルトリーゼ様、とても良い笑顔をされていますよ」


「そ…そうですか?自分ではよくわからないのですが…」


「…永遠を生きるメルトリーゼ様は、時間が経つ度に少しづつ感情が虚ろになっているように見えましたが、今のメルトリーゼ様は、あの頃の…私を作り出してくれた頃のメルトリーゼ様が帰ってきたかのように感じます。 私は、それを心から嬉しく思います」


「…キャスパー」


 使い魔であるキャスパーは、どうやら私よりも私のことを理解していたらしい。


 …でも、言われてみれば確かに、ここ最近の私には、あまり感情というものが無かったのかもしれない。


 …知り合いや友達を作ったとしても、どうせ私よりも早くに必ず消えてしまう。それを理解して、自分と使い魔以外との交流を断ったのは何年前の事だろうか。


 食事、研究、少しの睡眠…それを繰り返す生活を続けるようになったのが何年前の事だろうか。


 もはや思い出すこともできないほど昔から、ほとんど誰とも関わらずに過ごす中で、自分では平気だと思っていた私の内面は、どうやら少しづつ削られていたらしい。


「…そうですね…今の私は、久しぶりに[生きている]という実感を持てました」


「それは何よりです。それでは、もう夜も遅いですし、そろそろご就寝の準備をしますね」


「はい。お願いしま…ん?」


 プルルルルル


 キャスパーに就寝の準備をお願いしようとした時、突然机の上に置いてあった、会社から連絡用として渡されたスマートフォンの着信が鳴った。


「会社からの電話ですね…なんの用でしょう」


「メルトリーゼ様は無事に配信を終えられましたし、労いの言葉等ではないでしょうか」


「ふむ、労いの言葉ですか…本当に、今の時代は律儀な人が多いですね」


 そう思いながら、私は机の上で未だに着信を鳴らし続けるスマホを回収して、電話に出る。すると、電話先から1度話した事のある女性の声が聞こえてきた。


『…やっと出てくれた…!』


「はい、こんばんわ。柏木さん」


『あっ、そうよね、まず挨拶よね…こんばんわ。メルトちゃん』


 電話をかけてきた彼女の名前は、柏木 菫(かしわぎ すみれ)さん。確か、私含めた3期生のマネージャー?を務める女性です。

 以前電話で話した時は、キリッとした印象の女性だったのですが…どうやら、今は少し取り乱しているようです。


『それで…急で悪いのだけど、ちょっと会社の方まで来てもらっても良いかしら?』


「会社の方に…?今からですか?」


『そうね。突然なのはわかってるけど、できれば急ぎで来て欲しいわ。もちろん迎えは向かわせるか…ら……この住所…どこ…?』


 どうやら、わざわざ迎えに来てくれようとしているらしい。でも、流石に私を迎えに来るのは難しいと思います。


 今、私とキャスパーが暮らしている屋敷は、私自ら作り出した異空間…言うなれば、小規模な…現世とは隔離された1つの異世界のような場所ですからね。でも、気遣って言ってくれているのは理解しているので、それは嬉しく思います。


「テレポートで行くので、迎えは大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」


『そ…そう……ホントに魔法を使えるのね…わかったわ。会社内のエントランスまで来たら、また連絡してくれるかしら?』


「わかりました。エントランスに着いたら電話ですね」


『そう、お願いね。それじゃ待ってるわよ。………あのクソ社長…』


 そうして、通話は切れた。

 …何故か最後の一瞬だけ感じた殺意は、一体なんだったのでしょうか…


「外出ですか?メルトリーゼ様」


 一瞬だけ感じた謎の殺意の正体を考えていると、通話が切れたのを確認したキャスパーが話しかけてきた。


「あっ、そうですね。柏木さんから本社まで来て欲しいとの電話でしたので、少し行ってきます」


 少し疲れているけど、企業に所属しているのですし、呼ばれたのなら行かないと。


「かしこまりました。お帰りになられた時に入れるように、お風呂の準備をしておきますね」


「ありがとうございます。それでは、留守番お願いしますね、キャスパー」


「…はい、行ってらっしゃいませ。メルトリーゼ様」


「はい、行ってきます」



 キャスパーに見送られながら、私は以前にも行ったことのある<Live:story(ライブ ストーリー)>本社へのテレポートを発動させた。



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