第五章:熱膨張と収縮(サーマル・ショック)――クールな先輩(?)と共に、炎の魔獣を物理で鎮圧する-3
【第三幕:大馬鹿野郎! 炎じゃなくて『コア』を狙え!】
秩序維持を担当する数名の生徒会幹部がすぐに前に出て、氷の壁や風の刃で阻止しようと試みた。
だが、彼らの攻撃は、この元素生命体にとっては、痛くも痒くもないただの小石に過ぎなかった。
火の獅子が、恐怖で呆然としている新入生に今まさに飛びかかろうとした時。
一つの人影が、逆流する小川のように、沈着に、混乱した群衆の中から歩み出た。
リナだ。
彼女の顔にあった気怠げで無関心な表情はとうに消え失せていた。
代わりに、心臓が粟立つような、絶対的な冷静さが浮かんでいた。その目に慌てる色は一切なかった。
「下がって!」
リナ・ヴァンデルはいつの間にか、群衆の最前列に立っていた。
彼女のぴったりと合った生徒会幹部の制服は、この混乱した火光と恐慌の中で、そびえ立つ冷たい灯台のようだった。
彼女の顔には余分な表情が一切なかった。
その青い瞳は、嵐が来る前の海面のように平穏で、荒れ狂う炎の猛獣をしっかりとロックオンしていた。
彼女は手を上げた。
彼女は高速で詠唱しながら、同時に魔法陣を描き出した。
広場にあるどの噴水よりも巨大な、純粋な魔力で凝縮された荒れ狂う水流。
見えない巨手に操られた怒涛のように、彼女の掌から爆発した!
その水流は宙で瞬時に「造形」され、一枚一枚の鱗まで明確な、瞳に氷のように青い寒光を閃かせる「水の巨大蛇」へと姿を変えた!
巨大蛇は音のない咆哮を上げ、その巨大な体躯とは全く不釣り合いなほど極めて機敏な動きで側面から迂回し、炎の雄獅子の前に回り込んだ。
そして、柔軟でありながら力に満ちたその巨大な体で、柔よく剛を制すように。
猪突猛進する猛獣をしっかりと、幾重にも絡め取ったのだ!
「シューッ!!!!」
水と火が交じり合う、比類なき激しい蒸発音が鳴り響いた!
膨大な白い水蒸気が、まるで爆発したかのように、二頭の巨獣がもつれ合う中心から轟然と炸裂し、瞬時に広場の半分を覆い尽くした!
水が、一時的に火を封じ込めたのだ。
アーガスの目が、パッと輝いた。
(……賢いな。絶対零度の氷で強引にぶつかるのではなく、水の『柔軟性』を利用して行動を制限させている。直接『攻撃』するのではなく、先手を取って『状態異常』を入れたんだ)
だが、戦闘はまだ終わっていない。
水の巨大蛇の体躯は、その恐るべき高温の蒸発によって、肉眼で見えるほどの速度で急速に縮小している!
炎の雄獅子は怒りの咆哮を上げ、その身の炎をさらに猛烈に燃え上がらせ、今にも束縛を振り解こうとしていた!
まさにその時、リナは第二の魔法の発動を完了させた。
持ち上げていた、もう片方の白く細い手の五指を、勢いよく開いた!
無形の、高速回転するハリケーンが、彼女を中心に轟然と展開された!
しかしその風は人を傷つける刃とはならず、水蒸気が立ち込める戦場の縁に到達した時、急速に内側へと収縮する。
水蛇の外層に、肉眼で見えるほどの高速回転する「気圧層」を創り出したのだ!
アーガスのエンジニアとしての脳は、一瞬にしてこの第二の操作の真の意図を理解した。
(空気を遮断し、炎を酸欠にさせる! いや……それだけじゃない! 彼女は……彼女はあの水蛇を、高圧で絶対に密閉された……『圧力鍋』に変えようとしているのか?)
炎の雄獅子のあの囂張だった気炎は、見えない気圧層に包み込まれた瞬間、目に見えて萎縮していった。
だが、水蛇と気圧層が火の獅子を完全に鎮圧しようとした最後の瞬間。
リナの魔力も枯渇し、彼女の呼吸は荒くなり、額には冷や汗がびっしりと浮かんだ。
その炎の雄獅子は隙を突いて猛烈にもがき、水蛇の束縛に亀裂が生じ、封鎖を突破されるのは時間の問題となった!
一つの情景が、アーガスの記憶の深淵から制御不能なまま浮かび上がった。
それは数年前、工房で暴走した一つの溶鉱炉だった。
父のブレイクは大量の水をかけて消火しようとはせず、横で恐怖に呆然としているトールに向かって咆哮した。
『大馬鹿野郎! 外の火なんて気にするな! あれは偽物だ! 本当の敵は中にある「鉱核」だ! 冷却剤を使って、その一点を狙え! 内側から勝手に砕け散らせてやれ!』
(鉱核……溶岩のコア……)
(なるほど! 原理は、完全に同じだ!)
「大馬鹿野郎! 消耗戦を挑むな!」
アーガスの怒号が、初めて炎の咆哮をかき消した!
その語気は、あの年の咆哮するブレイクにそっくりだった。
「あいつのコアは炎じゃない! 胸の最も明るい一点を、水流でピンポイント攻撃しろ!」
【あとがき】
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次の章も、全力で鍛えます。




