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第五章:熱膨張と収縮(サーマル・ショック)――クールな先輩(?)と共に、炎の魔獣を物理で鎮圧する-1

【第一幕:ボロ部屋? いや、ここは俺の最高のラボ(工房)だ】


 灰色学院の寮は、アーガスの想像以上に伽藍堂がらんどうだった。


 案内人は、補助生専用だというこの寮に彼を案内した際、多くを語らなかった。

 冷たい真鍮の鍵を彼の手に押し付けると、そのまま背を向けて立ち去った。


 空気中には、最も安価な清掃用魔薬の匂いと、石材の陰湿な冷気が入り交じって充満していた。


 アーガスの新しい「家」は、「六番」と番号が振られたベッドだった。


 灰白色のペンキが塗られた薄い木の扉を押し開ける。

 安価な清掃用魔薬と石灰の匂いが混ざった冷たい空気が、顔に吹き付けてきた。


 部屋は広かったが、それゆえに一層の空虚さを際立たせていた。


 むき出しの黒い鉄のベッドフレームが六つ。

 まるで六体の沈黙する骸骨のように、冷たい石の床に整然と並べられているだけで、他には何もなかった。


 高い壁にある唯一の小窓から、陽光が差し込んでいる。

 床に蒼白く無力な光の斑点を落としていたが、いささかの温もりももたらさなかった。


 ここには絨毯もなく、暖炉もなく、いかなる余分な装飾もなかった。

 ここは家ではなく、もはや寮とさえ呼べない。


 それはただの冷たく巨大な四角い箱であり、疲れ果てた六つの若き肉体を収納するためのものだった。


 アーガスは、兄が手ずから作り上げたトランクを、窓際のベッドの傍へとそっと押しやった。

 それは、周囲の安っぽい環境から完全に浮いていた。


 彼は周囲を見渡し、まだ主のいない、同じようにむき出しの五つのベッドフレームを見た。

 だが、その内心にはいささかの自己憐憫もなかった。


 彼のエンジニアとしての実務的プラグマティックな魂は、すでに自動的に既存の資源リソースに対する評価アセスメントを開始していた。


(……何もないが、家賃はすべての寮の中で最も安い。それに、専用の工房ワークショップを見つけるまでは……)


 彼の視線は、未開発の土地を調査するように、ゆっくりとその五つの空きベッドを舐めるように通り過ぎた。


(……この五つのベッドは、ちょうど部品倉庫、材料置き場、そして三つの独立した実験台テストベッドとして使える。空間スペースは十分だ)


 彼は貧困がもたらす窮状を、いとも簡単に、高効率で利用可能な余剰空間リソースへと変換した。

 彼は環境に文句を言うことはない。ただ、問題バグ解決フィックスするだけだ。


 夜の帳が下りても、アーガスは明かりを灯さなかった。


 彼は同じく冷たい鉄板で作られた机の前に歩み寄り、座った。

 そして、儀式を行うかのような厳粛な態度で、兄トールの夢が詰まった古い革袋を、そっと机の上に置いた。


 窓の外から差し込むパラディアの清涼な月明かりだけが頼りだった。


 彼は紐を解き、中に入っている金貨を、一枚、また一枚と、すべて出し切った。


 澄んだ、冷たい金属の衝突音は、この伽藍堂の部屋の中でひときわ大きく響いた。

 その音は、性急なカウントダウン(秒読み)のように、彼の心を叩いた。


 彼は微かな光を放つそれらの金貨を、机の上に並べた。


 一列目は、入学時に納めなければならない登録料と雑費だ。

 この列は最も短かったが、袋の蓄えの三分の一近くを最も早く消費コンシュームした。


 残りの金は、二つの山に分けられた。

 一つは学費。もう一つは、彼がこの都市で過ごす、今後数ヶ月の最低生活費だ。


 彼はその二つの小さく哀れな金属の丘を見つめ、脳内で学院の分厚い料金マニュアルを呼び出した(ロードした)。

 彼の冷たい理性は、無情な計算機コンピューターのように、迅速に最終的な結論アウトプットを弾き出した。


 この金は、兄の夢と姉の命と引き換えに得た燃料エネルギーだ。

 しかしそれは、半学期分を燃焼させることしかできない。


 もしこの半学期のうちに、彼が唯一の「首席全額奨学金フル・スカラシップ」を獲得するか、あるいは他の金策マネタイズを見つけられなければ。

 彼と、彼の背後にある家族全員の犠牲は、すべて水泡に帰す。


 彼は手を伸ばし、指先で一枚の金貨の縁にそっと触れた。

 その冷たい感触に、彼は無意識に身を震わせた。


 すり減った国王の肖像が刻まれた冷たい金属から、兄トールの手に染み付いていた煤の匂いが微かに漂ってくるかのように思えた。


 姉のアイリーンが蝋燭の光の下で、とうに丸くすり減った麻糸を使い、一針一針、この革袋の綻びを縫い合わせていた時のこと。

 あの優しくも断固とした横顔が、今も目に見えるかのようだった。


 これはただの金ではない。

 これは彼の家族が、彼のために薬室に装填してくれた、最後の弾丸なのだ。


 彼はゆっくりと、それらの金貨を再び袋に収め、紐をきつく縛った。

 それを自分の一番肌に近い、懐の奥深くへと大切にしまった。

【あとがき】

応援や★★★★★評価、ブックマークが、この物語の火力になります。

次の章も、全力で鍛えます。

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