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永遠委員会  作者: やなぎ怜


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主人公視点(1)

「永遠領域にある永遠校舎の永遠生徒で構成された永遠委員会。――ようこそ、永遠のモラトリアムへ。ここは既に終わった者たちの楽園だよ」


 ……ミコトは思った。


 ――「永遠」って何回言うんだよ、と。


 しかしこの場所が常識から外れた異常な場所であるということ、そしてどうやら目の前にいる男子高校生もそんな場所にふさわしい、自然の理から外れた存在であるだろうことは、理解できた。


 ともすれば目に痛い、真っ赤な夕日に照らされた、黄昏の学び舎。だがこの場所をミコトは知らない。少なくともミコトが通っていた学校ではないことだけはたしかである。


 それから常であればじりじりと沈みゆく一方であるはずの夕日は、微動だにしない。ミコトがこの校舎内で目覚め、さまよい、なんやかんやあって教室のひとつへと連れてこられるという、それなりの時間を経てもなお。


 朱色で染め上げられ、黒く濃い影を落とす教室内にはミコトを除くと、他に三人、高校生らしき者たちがいる。全員が男子で、そのうちひとりはミコトに永遠がどうのこうのと説明してくれた人物だ。


 残りのふたりのうち、ひとりはミコトに説明してくれた人物のそばに控えるように立っているが、不安げな顔色を隠そうともしない、そばかす顔の男子。


 最後のひとりは、校舎内をさまよっていたミコトを見つけて、ここまで連れてきてくれた亜橋(あはし)ニビという名の男子である。


「僕は田久根(たくね)ネス。白杖(はくじょう)を持っているからわかるかもしれないけれど、視力がほとんどないんだ。光を少し感知できるくらい。だから怒涛(どとう)くんはそんな僕の補助をしてくれているんだ」

「あ、あ、えと……須津日(すつひ)怒涛です……ハジメマシテ……?」


 ミコトに説明したときと同様に、ネスは穏やかな声音で自己紹介をしてくれた。ついでにそばに控える怒涛へもそれとなく自己紹介をするように促す。


 怒涛の第一声は完全に引っくり返った声だった。怒涛、という勇ましげな名前に反し、当人は繊細な性質のようである。


「……私は、(いつき)ミコトです。あの、それで永遠校舎……とやらから出る方法って――」

「ごめんやけど、それはほぼないんよ」


 ミコトはネスに問いかけをしたつもりであったが、答えたのはミコトをこの教室に連れてきてくれたニビだった。


 穏やかな関西弁で、至極申し訳なさそうに答えたニビの顔を思わず見れば、その眉はゆるく八の字に下がっている。


 そんなニビの言葉の続きを引き取るように、ネスが話を続けた。


「さっきも言ったけれど――『ここは既に終わった者たちの楽園』なんだよ。つまり、僕らは実質の死者。この永遠領域にある永遠校舎でしか存在することができない。終わってはいないのに迷い込んでくる者もいるけれど、そういうひとたちは自然と帰ることができる。でも僕らは帰れない。ここで永遠に居残るしかない生徒、というわけさ」


 ネスの顔のほとんど半分は、夕暮れの赤い光と濃く黒い影にはっきりとわかたれていた。


「どうして、私が帰れないということがわかるんですか?」


 ネスは初めて迷うようなそぶりを見せた。横に控える怒涛も、なんとなく薄暗がりの中でも顔色が悪くなったように見えた。


 一瞬、四人の狭間を沈黙が占めたが、それは本当にひとときのことだった。


 沈黙を押しのけたのは、穏やかな関西弁だった。


「……あんな、樹さんの気分が悪ぅなるかもしれへんのやけど」

「亜橋くん」


 途中、咎めるというよりは、思いとどまって欲しいというような色合いを帯びたネスの声が挟まる。


「田久根くん。樹さんにはここでちゃんと言うというたほうがええと思うねん。ここで誤魔化してもいっしょにおったらいずれバレることやと俺は思うし、そうなったときに関係がこじれるんは避けたい。ここ、閉鎖空間やし」

「けれど、いずれにせよ彼女にとっては酷な話だよ。もう少し間を置いてからでも――」

「こういうときは樹さんに聞こ。樹さんのことやし、仲間外れで話進めるんは良くないわ」


 ニビの目線がミコトへと向く。


 それはどこまでも澄んだ瞳、まっすぐな視線のようにミコトには思えた。

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