気まぐれ企画 異世界で子作り無双したら、そこに永久追放になった件
彼らは、諸悪の根源です。
見慣れた空を仰ぎ、神威は嘆く。
「ああ、何でこんなことに……」
それに答えたのは、一緒に来てくれた狐の女だ。
「そんなの、考えるまでもないでしょ? あなたが、見境なく種をまき散らしたせいで、この世界の均衡が崩れちゃったのよ」
「っ。だってさ、あの世界じゃあ、お前の出産数を、上回ることが、出来なかったんだよっっ」
「……そう、それね。私も反省してるわ。何であんな賭けを、提案しちゃったのかしら……」
お陰で、事情を知った育ての子供にも、周囲にも激怒され、神威は命の危機に晒されてしまった。
必死で命乞いをして、その賭けを提案した女狐も一緒にと言い募るのも宥め、女が一緒に行くことで話を収めさせた。
「……お前も、酷いよ。賭けの提案者、本人の癖に」
「それも、仕方がないでしょ。雅と狭霧には、私に伴侶がいる事実を、知らせてないんだから」
不服そうな神威は、彼の他の血縁より、やたら子供っぽいところがある。
そこが、狐の心を鷲掴んでいるのだ。
むっとりとして黙り込んだ男に、女は微笑んだ。
「でも、今回はあなたが勝利というのは、変わらないわ。女性が苦手なのに、よく頑張った」
本気の誉め言葉に、神威はぱっと顔を輝かせた。
本当に、可愛い。
「本当に、頑張ったんだよ。人間の女性は怖くて、あの一度きりだったけど、こっちの女性は殆ど獣型でさ、その姿に化けて営めば、全く気にならなかったんだ」
そうなれば、後は簡単だったと自慢気な男は、勢い良く続けた。
「まさか、ゴーレムとも子を授かるとは思わなかったからさ、本当に子沢山になったんだよ」
「……」
?
もしかして、魔王として君臨しちゃった?
女の顔が、笑顔のまま固まった。
女が男の子どもを産み、別な男と育てていると知った神威が、住処に突撃してきたのは、いつだっただろうか。
女と同じ狐の女との間に、子を儲けてしまったが、その女が自らを封印してしまったせいで、世に出せる状態じゃなくなったため、丁度神威を誘惑して成功した女に、白羽の矢が立ったのだ。
女としても、神威に子育てできるのか不安があったため、伴侶として一度は彼と、と思っていたにすぎないから、子育てに慣れたその男と協力できるのはありがたかったし、何より自分の腹から生まれた、全く別な女の子供たち二人も、それはそれは愛らしかったし、それなりに幸せに暮らしていた。
生まれた子供の四人のうち、男の娘一人は人間の姿のまま生まれ、人と同じくらいの成長を始めた。
その娘が、ハイハイできるくらいになった頃、神威が突撃してきたのだった。
賭けを提案した後、別れる段になって、己の子をあやしたいと頼む伴侶に許可を出したが、その乱暴な揺らし方に激怒した男が、神威を一晩動けなくなるまでぼこぼこにしていたのは、いい思い出だ。
「死んだら、もう終わりだけどな」
「死んでいれば、ね」
鼻を鳴らす伴侶に頷くが、最近まで神威の従兄弟によって当人が蘇っていた事を知る女は、数年前に今度こそ跡形もなく荼毘に付されただろう男が、何かしらの痕跡を残しているのではと疑っていた。
完全に、気配は断っているから、血縁たちと係わる気はないのだろうが、あの男を伴侶とする女が、平然と人間世界に馴染んで生活しているさまを見ると、探してしまいたくなる衝動が起きてしまう。
だから、この追放は、女にとっても好都合だ。
「あなたと夏生の子も、所帯を持って忙しくしているし、狭霧もそろそろ、解放してあげないといけなかったから、丁度いいわ」
女は軽く言いながら、あれは驚いたと内心思っていた。
実の息子たちには、出来るだけ近づかぬよう気を付けてはいたが、世話になった男の二人の子供は、目の届くところで見守りたいと願っていた女は、長男だった子供の生存と所在を知っても、突撃して名乗ることを、躊躇っていた。
そしたら、神威が何故か、狭霧の姿で女とねんごろになり、子を作っていたのだ。
驚いたが、狭霧が身に覚えのないその子を自分の子としたことにも、心底驚いた。
当時知り合った、術師の家系の女の手を借り、狭霧に伴侶がいることを知った時、ちょっと楽しいお遊び感覚の計画を、思いついてしまったのだ。
その遊びも佳境を迎えて、狭霧の子として育った娘も、幸せな人生を進んでいる。
実の息子たちも、雅も今回の事には反対していたし、狭霧も亭主目線で反対していたが、女はもう決めていた。
こちらでもう一度だけ神威と子を作り、今度こそ二人で子育てしようと。
そう決めていた、のだが。
「……神威」
「ん? どうした? 寿?」
女の微笑みにつられて、笑い返す男に、寿は提案した。
「まず、この世界の子供たちの認知から、始めましょう?」
「ええー」
嫌そうな神威を見ながら、女は覚悟した。
凌を始めとした連中が今、男の子供たちを抹殺するべく動き始めている。
均衡を乱す子供たちは仕方がないが、それ以外はきっと取り逃がすはずだ。
その子たちを、真っ当に育て上げるのが、自分たちの使命だ。
色恋も、周囲に迷惑をかけてはいけないですね。




