悪魔に目覚める好奇心
私は目覚めると布団の上でねていた。まただ…記憶が、ない…。前にもあった…。
私はいまどうなっているの…。
今日もいつもの朝を迎える。お茶とコーヒーを入れる。そのルーティンは崩さないでいた。アスカとスピアはまだねている。なんで私は蚊帳の外なのよ。
すると私のの気配に気づいたのか、スピアが寝ぼけながらに起きた。
「おはよう、里香。眠れたか」
悪魔のくせに挨拶するんかい。てっきり、よ!とか言われるのかと思った。
「今日は好奇心じゃな、やるぞー」
「はい?」
ぎょっとした。
「だから、今日は好奇心を鍛える。そのためのやり方を教えるから試せ」
かわいい声でいった。
今回で何個目だろう…。渋々承諾。拒否権ないだろうな。
スピアから言われたのは人の矛盾に興味を持てと。何でも興味をもって観察しろってさ。探偵かよ。
例えば、ダイエットしてるのに甘いもの食うとか、勉強しないといけないのにやらないとかをみろってスピアはいう。
やってみますか…。学校に登校した私は校内にいる学生を観察した。授業を受けながら、人を観察する。さっそく発見。寝てる人。授業中にねてやがる。あのことをいうのかな。授業なんか興味ないことには無関心になりやすいし、ねてしまうし、何より退屈に感じるものだ。
他にもいないかを探してみると、授業の間にスマホ触るやつ、関係ないことで盛り上がる人。ゴロゴロいるな。授業の間にそんな人たちがいるなんて見向きもしなかったな。柚葉にもあるのかな。
授業が終わりそう思って探して見る。彼女はよくこの授業と授業の間は人とよく話していたな。少し廊下を歩くとすぐ見つかった。粋怜と話をしてる。
「やぁ、柚葉」
「里香じゃん、どうしたの」
「どうも」元気よく挨拶する柚葉と落ち着いた声の粋怜。短髪の女。神妙な顔をしてる。あのこともあったからだろうけど、お構いなく質問をふっかけてみる。
「あなたには矛盾するときとかあるのかな」
「どうしたの急に。質問するなんて」
どっちつかずの声で返事をする
「最近ね、人はなんで矛盾するんだろうと思って。人はよく正反対なことを言い出すわ、運動したいといいながらしないし、勉強をしないといけないのにやらない。フフっ、人の愚かさが発生する理由を知ってみたくてね」
それをきいて彼女は剥くれるような表情をしている。どこかしゃくに触ったか。
「それでどうしたの」柚葉が尋ねる。
「人の心を観察するの楽しいよね。」
「悪趣味な女ね、面白いけど私は今はパス。一人でやってもらえる」
捨て台詞を吐くように去っていった。粋怜さんは私と柚葉の関係を憂虞していそうだ。オロオロとした表情を見せたあと、一礼して柚葉の後を追う。
それからさっきあったこと、思いついた人の矛盾をスマホに記録に付け始めた。人々の矛盾集め。それを見てるだけで冷嘲が止まらない。人ってどこまでも愚かなのね歪んだ考えをもっているのにそれすら認められない。まるで失敗を改善しないで闇雲にづづける子供。
数日後、スピアが私にこんなことを聞いてきた。
「人をもて遊ばないか」
へぇ~、それも楽しいかもね。それから私は軽く嘲笑。街にいる学生に話をきくようにした。ある学生は食事の管理すればいいのにジャンクフードを食べる。お金を節約すればいいのにしないで金を散財。
それを嘲笑するという遊びをした。それを指摘して真実ややればいいのにとバカにした。相手は怒ったり、怒号を飛ばすこともあったけど無視した。愉快ね、相手の図星突かれているのに怒る表情はイチゴのように赤く甘酸っぱい味すら感じさせる。
「あんたはどうしてそんなにやることやらないのか不明だわ。とっととやればわかることなのに。痛みがないからわからないのかしら」
快感だわ、こんなにも人と関わることで人を知れるならやっておけばよかった。
その時だった。ニコニコと笑みをこぼしてた時 柚葉が遠くにいた。というかこれを見た。目が合った刹那、彼女は悲しげな表情が脳裏に焼き付いた。それは一生消えない烙印を押したように…
目覚ましビンタを食らわされた。あれ、私は何をしてたの。冷水のバケツをふっかけられるように体の体温が消えた。私……今までどんな会話を誰とかわしたの…?
酒の酔いが覚めるように我にかえる。なんで目の前の人がとても不快そうなの…。私はダッシュで家に向かう。これは悪夢だ、現実なんかじゃない。手に力を思いっきり入れて全力で疾走した。
家の鍵をふためきながらあけ、汗だくで戻り、息はもうはぁはぁと深く息を吸って整えている。リビングに小走り、そこにはあの憎たらしい超絶悪魔のアスカとスピアがいる。
「おかえり、課題は順調に…」
「どういうこと!そんなの知らない。質問したいことが山ほどあるの。課題って何よ、それにそれを言われた記憶はないわ。私は今までなにをしてたの、答えなさいよ超絶悪魔たち」
トラが吠えるように怒り、荒らげた声は2人の顔の表情から事態を炙り出そうとしたが…。
「お前は破滅してくんだ、それは癌が進むようにお前の体に現れる。そして、お前は人として終わる、人外に染まる、この雲に隠れる青い空が永遠そこにあるように、お前は悪魔に染まり生涯その姿で生きるようになる」
そんな…そんなの…私は…
スピアは私に拳を私の胸に付き合てて更に続きをこぼす。
「よかったな、これでお前は変わった。人から悪魔に。お前の記憶がないのは悪魔に半分なっている時だ」
そういってスピアは姿をその場から去った。残されたアスカの表情には無機物をみる目をむけられた。
「今の状態を説明すれば、お前は願いを叶えるために代償を払っている最中。半分人、半分悪魔。これで超絶悪魔の仲間ね。おめでとう。あとは破滅が楽しみだわ、ウフフフ」
私は膝から落ちた。私は自分をただ変えたかっただけなのに。それだけだった。生まれてからずっとウジウジした人だった、そんな私が嫌いで変えたかっただけなの。それなのに私が望んだのはこんな結果なんかじゃない。これは何かの間違いだ。
「間違いだ?何いってんのかさっぱりわからないわ。いったはずよ、代償は人としての破滅だと」
辛辣な一言の重みは胸を引き裂くような痛みが襲った。私を見る彼女の目は醜い蚊でもような目だ。
幼稚園児からずっと人見知りで臆病だった。いつも隅っこの方にいた私は人と話すのが怖かった。自分の何かを話すことに抵抗を感じた。自分は本が好きでその好きを話したら、人は離れていった。人に嫌われるぐらいなら話したくなかった。
私は嫌だった、そんなことされるぐらいなら一人を選んだ。それだとまずいと思っただけだった。それを変えたかっただけなのに。
「私は悪魔になりたくない…どうしたら人間に戻れるの」
「は?何いってんの。さっさと動いてこなせ課題を。」
眉を潜めて睨みつけてくるアスカ。私は弱々しい声で懇願してみるも聞く耳を持たれない。胸ぐらを掴みアスカは顔を近づけて一言いう。
「お前の地獄はまだ先だ、これからよ。ワクワクするわ~。里香がどんな表情に変化していくのか、見てみたい気持ちが駆け巡るのよ。焼石を足の裏に当てるとじんじんと痛む暑さが太ももから脳に信号が伝うようにね」
甘く柔和な声は赤ワインのように甘さも苦さも感じ、耳元を指で撫でられるようなくすぐったい恐怖を覚えた。
私はそれからも我を消すように悪魔モードで人のあら捜しをした。街でみかけた人の矛盾話をこと細やかにノートに書き記した。もう苦痛や悲しみの痛覚など神経のかやから追い出すように。慈悲という言葉を私の辞書から抹消して。それを続ければ安心剤を手に入れられたから。
やるときには自分にいいきかせてた、好奇心を高めればうまくいく、自分を変えるまでは悪魔に魂を売るのだと。
私は人の矛盾を知るたびに興奮するようになった。例えば学校でサークル活動をしてる人たちの近くを通りかかると話し声が聞こえてきた。会話の内容からしてその人は初めてやる1年生だろうか。
「こんなこと役に立つのか」「マジで退屈なんだけど~」「つまらない」こんな戯言がいっぱいだ。なんのためにはいってるのか心の底ほくそ笑む。私はむしろ良かったよ、入らなくて。そんな言葉を言わずに趣味に没頭できるのだ。なんと素晴らしいことか。笑みがこぼれ出てくる。止まることを知らずに嬉しさや嘲笑が溢れ出てくる、噴火のように。
毎晩の寝る前にそんな発見を共有したくてたまらなくて私は超絶悪魔たちにその話をひたすらしてた。超絶悪魔をリビングのテーブルに腰掛けてもらった。このとき二人はは素直だった。
「今日ね、たまたまサークル活動をしてる人たちが矛盾したことを言ってたのよ」
「どんなこといってたのじゃ」スピアは楽しそうに話を聴いていた。
「サークルが楽しくないとか、まじで退屈…とか言っちゃってさ。なんのためにはいってるのか意味不明よ」
スピアはニタニタしながら話を傾聴するが、アスカは飽き飽きしていて、ホットな紅茶を飲んでゆったりしていた。まじで興味ないんだ。よし、突いてやるか
「あら、ずいぶんとご機嫌斜めそうねアスカ。これまでの命令態度とは打って変わり静かね。困るわ~私が人の矛盾に興味を持つようになったのはあなたたちの課題をこなしたからよ。なのにそんなそっけない態度されると気に食わないのよ。むしろ喜びなさいよ」
アスカはティーカップをおいてこちらを見るやいなやムスッとした表情。何が言いたいかよくわからない。どこか悲しそう、なぜだろうか。一瞬だけ口もとが緩んでへの字になったのを見逃すことはなかった。
アスカは私の会話に口を挟むことはなかったが、へぇ~とかそんなことがあったのねとか乾いた返事と質問以外何もなかった。ちょっと前の反応とは雲泥の差ではないか明らかに態度が違う。何こいつ感じ悪。いつもみたいに突っかかるなら、あんたはまだまだタンスの引き出しにすら及ばないお粗末な悪魔なのに、とか言いそうなのに。いつもと違う態度をされると気がくるう。
「あのさ、あんたどうしたの?頭でも打ったの?へんよ。ずっと心の声聞いて見ようとしたけどあんたから声が聞こえてこないし。それに今どっちのモードなの?」
こいつは何いってるんだ、私は"悪魔だぞ"。こいつこそ急にどうしたのだろうか?悪魔の自覚が低いのだろうか。訝しげな表情でアスカをみる
「アスカ〜どうしたのよ、弱気になって。超絶悪魔の名に恥じてるとは思わないのか?」
「話が見えてこないのだけど。悪魔になりたくないとか言ってたあんたが突拍子もなく悪魔になり変わるなんてね」
アスカは鼻で笑い飛ばす。こいつ私を舐めてるのか、悪魔の力を手にした私にそんな見方をされる筋合いはないはずだ。訝しげな表情はムラムラとたぎる憤りに変わった。アスカの隣に座るスピアは真顔に戻り緊迫としたこの場を見守る。
「私は悪魔だよ、人の矛盾を楽しみ人の心をもてあそぶ最悪の悪魔。あぁ~、人ってこんなにも醜いとは速く知りたかったな」
アスカの表情には嫌悪を抱いてるのがわかるほど、ひきつっている。
「悪魔の素質としては最高ね…。でも今のあんたを地獄に落としても面白くもないわ。スピア、これがあなたの望む変化だったのかしら。」
矛先をスピアに向ける。スピアはすぐさま回答した。
「まぁ〜これはこれで地獄に落としても悪くはないかもな~」
するとアスカはギロッと睨みつけて言い放つ。
「あなた本気?!これでいいの、私はまったく嬉しくないわ!!こんな腐った根っこを燃やしても何も面白くもないわ!」
そう言ってアスカは私の方を向いて癇癪をおこすような口調ではなす。
「里香はいいの?!あんたが望んだ[変わる]はこれが望んだ姿だと言えるの?!」
「落ち着けアスカ、お前だけじゃぞそんなに驚いているのは。お前だって誓いを結んだじゃろ?お主は里香を変える知恵を与えたり力を貸したりすると。」
食い下がろうとするもスピアになだめられる。これはいい気味だ、悪魔名利につきる。その夜私は寝室についてきもちよくねた。
彼女の目は格下の相手をみるような目つきをしていた。私は心底驚いた。変貌する度合いに違いはあるがあそこまで狂気を乱さず冷酷な頭脳を見せてくるなんて。とても卓越された悪魔だ。
通常、悪魔に身を染まっていく人は人格破綻をおこして人をゴミのようなみえかたをしていくのだが、彼女は人の心をもてあそぶ、矛盾を餌に悦に浸る。その姿勢は悪魔そのものではないか。一体どれだけの怨念や妬みを抱えて生きてるんだ。私はとんでもない怪物を創造してしまったようだ。
破滅をする彼女が目に浮かぶ、とても楽しみだった。そのはずだった…。彼女が彼女のまま悪魔になり、滅びゆくのであるならば…。私はどうしても彼女の本音とは思えない。悪魔に身が染まりつくすまえに真意をきかなくては…。でも、私はどうしたらいいの。悪魔として役目も果たさないといけないが、彼女の心から願う誓いも叶えてあげたい。
心がシーソー状態だ。私はどうしたらいいのよ…この胸の中に絡み合う糸を解きほぐしたいが解こうとすればするほど、二重、3重に絡み合いほどけなくなっていく。このジレンマを消し飛ばしたい。それは炎で一瞬にして全て燃やして解き放たれるように。