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里香の決意-優しさと誠実さ[後編]シーズン1終

布団の上で横になっていた。ここは私の部屋…。私は悪魔になると意識が朦朧としてしまうほど体がやられる。悪魔になるとき、体や神経が崩れ落ちていく感覚が強くなる。きっと負担が大きいのだろう。それもそのはず、人間ではない体に体が適合しようとしてるのだ。そうなっても不思議ではないはずだ。

 部屋全体がやけに静かだ。悪魔たちの騒がしさがない。一体私がいない間に何があったのかな。恐る恐るリビングに向かうと右の部屋で布団をかぶり目を閉じたアスカがいた。けど様子が変だ。包帯があちこちに巻かれているし、絆創膏も一つや二つではない。慌てて寝ているアスカに駆け寄り声を上げて呼びかける。

 「アスカ!アスカ!どうしたの…大丈夫?!」

 意識を取り戻したアスカはゆっくり目を開ける。

 「わたしは…いきて…いて」

 「無事なのね!よかった!」

 泣きそうになりながら、彼女の体を抱きしめる。思いをぎゅ~と込めて。アスカは照れくさそうにそっぽを向く。

 「そんなわけあるか、でも誰が…」

 アスカが疑心な思いを抱きながら体を起こす。ふらつきながらだったので私の肩を貸してあげ、テーブルに向かうと1枚の置き紙があった。読み上げると猫の恩返しとかいてある。猫の恩返しって…。

 「猫宮ね…どうりで体の傷が痛みにくいわけだ。」

 猫宮が助けてくれたのか。彼女は優しくも冷たくもあるように思えた。

 アスカを椅子に座らせて私は冷蔵庫からお茶をガラスコップ二つに入れてレンジで温める。彼女に温めたコップを渡すとアスカは一口運ぶ。この温かさが私の心を包むように和ましてくれる。

 「ねぇ、どうしたの…その傷何があったの」

 「里香には関係ないことよ」

 「そのセリフを言うやつは大抵言っている相手に関係あることだからお見通しよ」

 アスカはムスッとした顔で私をみる。8割私の体で起こったことが関係してるはずだ。それをめぐって誰かと争ってこうなったのだろう。ここにいない悪魔ときっと…。

 アスカはますます不機嫌な顔をする。図星か、しかも心を読んだがタイミングが悪かったみたい。見透かし能力を始めて仇とさせられた。

 「なんで逆に私の心が読心術を食らわなきゃいけないのかしら」

 彼女のふてぶてしい口調にちょっと心がスッとした。はじめてぎゃふんと言わせてやったぞ、とうれしくてガッツポーズまでとってしまった。本当はそんな雰囲気ですらないというのに。その時アスカは呆気に取れるような表情であった。私は赤面して顔を手で覆った。

 「気にすることないわ~、覚えておくから」

 「言ってる意味ないだろ」

 気さくな会話が戻ってきた。少し彼女にほほ笑みが芽生えた。よかったいつものアスカに戻ってきた。

 「どうやって人間の体に戻すことができるの?」

 「誓いをもう一度交わすのよ」

「誓いをもう一度交わす?!」

 仰天する私にアスカは動じず淡々と話す。

 「いいかしら、スピアに誓いを宣言するのよ。本来悪魔1体に対して一つの誓いしかできない。今私に誓いを宣言した状態。でも、私とあなたで一つの願いを叶えることを誓えばあなたは一人で、もう一度私と誓い交わせる、つまり2つ目の願いを叶えることができるのよ」

 疑問の渦が心をかき乱す。そんなことが可能なのか…。可能だとしても代償はどうなるのか?代償は免れられないはずだ。

「もちろん代償は膨れ上がる。それは悪魔としての禁忌。私は重罪を犯すことになるのよ。それを犯した悪魔にも人間より重たい代償を払うこともあるわ…」

 「えっ…あなたも代償を?…しかも重罪ってどういうことよ!」

 困惑する頭脳は処理スピードが追いつかず、息がドクンと跳ね上がる。

 「どういう意味よ!そんなの私は認めない!だってあなたは私のために願い叶えるのに重罪なんておかしいわ」

 息が荒々しくなり、ほぼ叫び声に近いようになっていた。

 「これしかないのよ!重罪だけど…本来悪魔が人のために誓いを結んだ誓い者と共に願い叶えることは悪魔の法では禁止令がでてる。過去にそれをした悪魔が代償は膨れ上がり誓い者を殺してしまったのよ。」

 何よそれ…そんなクソみたいな都合で重罪とか…胸がハリネズミの針で刺されたような痛みが襲う。憎しみと怒りが交錯する。

 「それじゃ…意味ないじゃない」

 ついに瞳から涙がこぼれる。彼女は私のために力を貸してくれたのに…それなのに彼女が代償を払うのはおかしいすぎる…納得ができなかった。私はコップをテーブルに置いて手で顔を覆う。頬を伝う涙の冷たさには感極まる感情を冷ます冷えピタのような感情を感じた。風呂から上がった後に残るぬくもりがあるような優しい何かを手から感じた。

 アスカはそっと私を抱きしめた。母からハグをされるような柔和な弾力、彼女から感じるカイロのような温もりはホットケーキのようにふわっとしていてあったかい。

 そんな時、家の電話がなる。私たちはハッとして意思がそちらに向く。私は電話をとる、この番号を知っているのはごく限られた人間、友人である柚葉か粋怜さんだ。

 「もしもし」

 「あんたが友人の里香か〜?」

 軽い口調で甲高い声が耳に響く。一体誰なんだ。

 「誰!!」

 「焦んなよお嬢さんよ。俺はお前に伝えることがあるんだわ〜」

 すっごいたるい声でとてもうざったい感じ。人を挑発して人の心をかき乱すことを造作とも思ってなさそうだ。

 「お前の友人は拉致させてもらったわ、今日の夜8時にあんたが行ってた中学近くにある空いた工事現場まで来い。じゃーな、こーカッカッカッ」

 「まてよ!」

 電話は切れてしまった。柚葉をさらった?!こうしてはいられない、リビングの時計をすぐ確認すると夕方の6時だ。アスカは私の焦る姿をみて状況を察したのか席を立ち上がって声をかけてきた。

 「友人助けに行くんでしょ、私もいくわ」

 「そんな状態だと戦えないじゃない!」

 見るからに無理をしてそうに見えるが本人は平気という。包帯や絆創膏も体中にされている。

 「あんたらと違ってさ、悪魔の回復力は数倍速いのよ」

 「…無理しないでね」

 ドキドキする、彼女の体も心配だけど何より柚葉がもし死ぬ間際まで傷を負っていたらと考えるだけで胸が満員電車で押しつぶされそうな痛みがある。

 私たちは急いでそこに向かうとした時、扉を開けようとしたらスピアがいた。

 アスカははんにゃのように目を釣り上げてスピアを見る。スピアは動じないどころかニコニコしながら私たちをみた。

 「なんのようよ」

 低く鋭い声がスピアに向けられる。

 「友人助けじゃろ、力をかそうかのう」

 「…」

 本当は頼みたい…アスカの思いを汲むととてもではないけど言いづらい。手を縮めモジモジしていると肩をポンとアスカが叩く。ため息を軽く吐き諭す。きっと言えってことかしら。

 「貸して、お願いします」

 「いいぞ、後ろの悪魔もわかったトルナ〜身の程が」

 軽く舌打ちをしたアスカ、私たちは友人助けに向かう。


 それほど遠くはなかった。指定された工事現場に着いたけどほぼ廃虚みたいなもんだ。こんなところに柚葉を拉致するなんてね、怒りの熱風が浮き立つ。

 「悪魔モードになっておきなさいよ」

 「大丈夫なの?記憶飛ばないの?」

 不穏な何かがあるのではないかと思うようにアスカを見つめる。彼女曰く、私たちがいるから大丈夫だと。信じてみるか。

 「お主は戦えるのか」

 スピアがクビを傾げながら問いただす。

 「アニメみてるから大丈夫っしょ多分」

 「いや大丈夫なわけねーだろ」

 超絶悪魔からのモーレツな否定を食らう。アニメと現実は違うか…。アスカは万全ではないし、私は戦闘素人。戦力外と言ってもいいかもしれない。それでもできることはしたい。

 悪魔モードに姿を変えて廃鉄所の中に向かう。私の心は深海の暗闇に入った時のようなドキドキしかないのだ。

 「よぉ〜随分とはぇ~じゃねーの。」

 間高い声、人を舐めるような態度、親友拉致犯が姿を現す。そいつは人なのか、見た目がとても狂気に満ちているような印象だ。例えるなら蜘蛛と虎を融合したような不気味さや勇ましさがある。

 「俺は魔刃のレンジだ、ひょろそうな奴らが3人、一人は雑魚、もう二人はいたぶりがいのありそうなクズ野郎だ」

 すると、2人の目つきが鋭い牙のように眉間にしわを寄せる。そのまなざしだけでおじけついてしまいそうだ。ここまで本気で苛つく2人ははじめてだ。

 「超絶悪魔が2人もいるのにそんな口をたたけるなんてね」

 空気がしびれるような低く轟く声、外から入る街灯がその怒りを際立たせる。スピアは手に魔法で生み出した鎌をもち、アスカは手に杖を持つ。

 火蓋の切手は間近に切られようとしてる。いつ切られるかの様子を伺っていたら奥に柚葉が地面にうなだれる姿が見えた。

 思わず声を上げて彼女の名前を叫ぶ。静かな空間に悲鳴にも取れる声を親友にかけた。

 「柚葉!」

 「午前中に俺の手下どもコテンパンにしたらしいから、この女に仕返しをしていたよ。いい悲鳴だったな」

 体を前のめりにした、近づこうとしたら悪魔たちに両肩を掴まれ制御されるように体が動かない。こいつの顔面を今すぐにでも骨ごとばらばらにしてやりたい。らゎ汗がじわっと出ているのに気がつく

 「無駄話は辞めだ、やろうぜ。」

 握りこぶしを合わせて一呼吸置くと、突進するように襲いかかる。打ち合うように全力で走り出し、攻撃をしかけにかかる。レンジは拳を振りかぶり鮮烈な一発を打つ、アスカが杖を横に構えてシールドをはって防ぎ、スピアはそいつの真上に飛んで、隙をつくように鎌を振り降ろした。敵はシールドを壁にしてキック、後ろにさがる。隙も与えることを許さない鮮烈な刃をアスカが無数に、しかも一瞬のうちに魔法で生み出しマシンガンのように飛び出していく。

 レンジは地面を蹴り飛ばして回避。彼は空中から不吉な魔法陣を生み出し枝のように無数に分かれる竿がでてきた。それがヘビやムチのように動き、高速で猛威をふるう。

 「ナイフシャーク!あいつらの体を貫け」

 あちこちから攻撃が飛んでくるのをスピアとアスカが魔法で相殺する。弾けるような断末音が空間に飛び散る。アスカが杖から短剣に取り換えて5本を弾き返す。勢いがエグい。

 どうしても前に進みたいのに足がすくみ、手足ががくがくと震えだす。さっきまで息まいていたのはどこにやら。というかどうやって魔法を出せばいいの…。今まで彼女たちが自然とそれをしていることの技量に圧倒されるばかりだ。こんな皮肉のようなことが…。わたしは…一体どれだけ彼女たちに助けられていたのだろう。しかもアスカは重傷を負っているというのに…。

 「オラオラ!どうした!その程度か!」

 「よく吠えるわね、あんた。電車の騒音並にうるせぇーぞこいつ」

 「そうじゃな、あの女よりうるさくて耳が痛いしみてられねぇーな」

 二人が余裕そうな雰囲気を醸し、ほくそ笑む。戦闘中でも悪魔なんだ。

 レンジが鼻息でそれらの言葉をかき消すように吹き飛ばす。レンジが両手を広げると鬼火のような火の球が彼の周りに浮遊する。2人が身構えたとき、それらはアスカの攻撃のようにマシンガンのような攻撃のカウンターが跳ね返る。スピアが鎌から槍に変えながら打ち払った。しかし、打ち払った火がさらに細かく分断してアスカに全弾襲いかかってきた。スピアが目を見開き横を見た。彼女はすぐさまその場を避けようとするも全弾追いかけてきた。その攻撃は振られた女に付きまとう男のようなようにも見える…。

 「これはただの弾丸ではないのか!」

 「勘がさえるな、これは切れば切るほど、拡散する火なんだよ!追尾弾なんでな、どこまでも襲ってくるぜ」

 得意げにレンジは高揚している。わざとそうさせるように仕向けたようだ。

 怨念のようにアスカに付きまとう、剣を振り降ろしまくるも全弾当たり、彼女の体には黒い傷が体中についた。

 アスカは膝少し曲げ立っているが立っている姿をみていると危なっかしいほどだ。息を吐く回数が明らかに増え、構える姿勢にブレがある。レンジは続けざまに同じ攻撃を繰り出した。魔法をだして打ち合いに持っていきたいのに…体が震え前にでらない。…スピアが手を前に出して波動砲を連発。それをなんとかかき消すと、今度は黒い霧が充満してあたりが真っ暗で、動けばどの程度で体に触れられるのか分かるのに、それが何もかもわからない。

 声を上げたくても敵に居場所を知らせるだけだ…一歩も動けないし、あたりを見渡しても霧が立ち込めている。すると、不気味な音があちこちからきこえてくる。

 「何?、何の音?、どこから」

 キョロキョロと動くことしかできない…一歩足を動かししてるとその足音が静かに響く…

 

 「グワァー!、きゃ、なによこれ!ぐはぁ!」

 「どうしたのじゃ!、くっあしが!いや体が…グァー!」

 何か斬りつける音や不気味な音と共に何かが生える音、鈍いおと、複合的で邪悪な音がこの霧の中に響いたあと、アスカの息が悶えるような苦しむ声がきこえてくる。スピアが語気に怒りがこもった声を上げて彼女を呼びかける声がきこえる、だが、声に何が突き刺さり痛みをこらえる声にも近い。

 霧が少しづつ晴れていくと超絶悪魔の2人が傷を増して倒れている。

 「アスカ!スピア!」

 呼びかけても全然反応を見せないが、呼吸する音だけがきこえる…

 「こーカッカッカ!いやぁ〜悪魔狩りはいいですね~燃えるね。」

 腕組みをして口角を吊り上げニヤつきながら高飛車に笑う。

 「あの霧の中で何したのよ!」

 「あれっすか、あんぽんたんなあんたにわかるように説明してやるよ。あれは本当の悪魔にしか効かないきりでね。その上俺の魔法、能力をもっと強化してくれるんだよー。例えば、さっきの魔法の枝のような技はバレずに人に刺すこともできるし貫通技なんで殺傷力が上がるのでコイツラに刺しまくった。あとは剣を召喚して斬ったり、魔法で燃やした。つまりは高まった能力で"きる"したわけ」

 狡猾な魔刃はほくそ笑みを浮かべかん高い声でいう。私の手は力を入れて握る。口が引きつり足がぷるぷると震える…汗がじわっと出て体にジメッとした密着感が感じられた。倒れる2人をみていられないほどだ…心の中の配線がプツリとキレる


「無能なあんたじゃーねー、悪魔にもなったのに力もない、能力もないようじゃ…」

 「いい加減にしろクソ野郎…」

 「あ?」

 レンジの声が段違いに低く、殺気立つ目つきでギロッと睨む。

 「お前なんか…我が倒してやるよ…!」

 「里香がかなう相手ではないぞ!」

 「里香!だめよ!」

 私を止めようとする声、悪魔の2人が後ろを振り返るとハッとした表情をみせる。

 「なんじゃ、あれは?!」

 「まさか!?」

 唖然とこちらをみている。

 体から吹き出てくるようなエネルギー、体の周りに吹き立つオーラで髪がそれで中に揺れまくる。ただならぬ力がみなぎってくる。

 地面を弾くように蹴り相手に向かって空中をきるように向かっていく。レンジは余裕な笑みで軽く鼻であしらった、そこに拳を顔面にいれるとゴツンと鈍い音とともに壁に飛んでいく。彼の体が壁にぶつかって衝撃音が雷鳴のごとく響く。アスカ、スピアは敵が吹っ飛んだ方向に目をやる。

 息まいているガキを吹っ飛ばして続けざまに魔法陣を複数召喚。空中に浮かぶそれらはきらびやかな街灯で作られたイルミネーション。

 「死ね!目の前のクソ魔刃」

 私の声と共に魔法陣から砲弾やビームで反撃。炸裂する音や、閃光の光が飛び交う。衝撃音で耳がつんざきそうだ。

 「これが悪魔になった者の力なの」

 「これなら行けるかもしれませんぞ」

 胸をならせる思いで2人が抱き攻撃が終わるまでみていた。

 魔法陣がさっと消え私の怒りは鎮火するように力が抜けていく。私はひざに手をつき、置き前かがみで呼吸を整える。あたりに煙が漂う…。倒したのか…。

 するともそっと動く嫌な音がきこえ、おどろおどろしい声が…。背筋が凍りつきそうな嫌な音が…。


「やってくれたな〜、クソガキが…許さんぞ…許さぞ!」

 

 ぼろぼろの服に、血や傷まみれなのにゾンビのようになってたっている、ダメージは相当なモノのはず…。

彼が左手にナイフのような邪悪な雰囲気をまとう剣をもちこちらに向けて殴りかかってきた。前を向いて私は避けようとするも力が入らない。もうわらにもすがる思いで魔法を出そうとしてもでないしうんともすんともならない。もうだめだ!目をつぶったときだった。

 バリン!

 目を開けるとバリアが張られていた。

 「なんだと!?まだそんな力を残してたのか!」悔しそうに歯を噛み潰しながら拘束されるレンジ。


「私たちの力を貸すわ!」

 「使え!」

 振り向くと後ろにいた立ち上がってアスカとスピアが魔法で防いでいた。そして、二人は私に魔法をかける。力がみなぎり、もう一発行けそうだ!

 「くらえ!」

 両手を前に出して魔法陣を出し、絶大な閃光を撃ち放つ。レンジはそれに抵抗しようとするがあっけなく、叫び声と共に吹き飛ばされていく。地面を壊すバリンという音やビームから出る電信音のような音が空気をしびれさせる。肌にチクチクする扇風がかすめている。

 あたりはシーンと静まり、私の吐息や悪魔たちの吐息がこの空間に立ち込める。

 「やったのよね…今度こそ」

 相手はすんとも言わないで地面にうつ伏せとなる。柚葉のところにゆっくり駆け寄り様子をみたところ、幸い柚葉は怪我があるものの深い傷はなさそうだ。

 「なんとかなったわね」

 安堵の息を吐くアスカ。地面に膝をついて咳き込む。無理をさせたのかな…なんか申し訳ない。

 「アスカ、無理をしおって。たく、しょうがないの〜」

 「そういうあんたもな」

 二人は苦笑いをしながらグータッチを交わしていた。仲直りしたのかな…判断に迷うところだ。

 後ろからぞろぞろと足音がきこえてくる。

 「悪魔警察だ!その場にいる奴は動くな!」

 唖然としてまい力が抜ける。何ごとかと思い後ろを振り返ると悪魔警察となのるどうみても見た目人間の警察と大差ないような人達が入り込んできた。

 「なんで警察、てか誰が通報したの」

 周りを見渡しているとアスカが呟くように話す。

 「多分猫宮よ、どうやってこれを察知したのか知らないけど」

 悪魔警察はレンジを拘束し連行される。警察の人たち?が、私たちに歩み寄って怪我の具合や体調について問いただす。その時に少し傷の手当てをしてもらい、体の回復が速くなるよう魔法をかけてもらえた。悪魔警察って優しいのかな、悪魔という言葉が入っているというのに。無礼な態度を取る理由もないので私たちは素直に事情を説明したら直ぐに帰っていいとの返事をもらった。柚葉は警察に私が家の場所を話して、送ってもらう約束を取り付けた。

 

 家についてから私はリビングの椅子に座って一休み。

 「風呂入って寝ようかな私…」

 「夕飯いらないの?」

 「今から取るの?食うの好きね」

 「当然よ、この国の食は世界の遺産ですもの」

 アスカが腰に手を当ててドヤる。あんたのものではないけどな。

 「そんなことはわかってるわよ、私がそれを一人占めするとでも思ったの?!」

 「そんなことは言ってません、てか心を読むな」

 「心を読むことも意見も言うのも私の自由で〜す」

 「そうじゃな、我らの自由じゃ」

 スピアがにたつく笑顔で割り込んでくる。こういう時は調子合わせてくるの腹が立つ。

 「そんなことより、どうするのよ里香」

 「え?」

 「え、じゃないよ。あんたが人に戻る話だよ。」

 私の座る席の横に近寄り急に真面目な話を切り出す、そういえばほったらかしだったな。

 「私は人に戻りたい。それが本心よ。でもアスカが…」

 ずっと負い目を感じてた、彼女が重罪を負ってしまうことが何より不快でならない。でもそれ以外に方法はない…。俯く私にアスカが手を肩に置いてゆっくり話す。

 「代償は私が受ける、別にいいわよ。あんたが負い目を感じるのはわかるけど、誓い者の願いを叶える手助けをすることは私の役目よ。」

 アスカをみるとまっすぐ私をみていた。そのまなざしからは決意が感じられる。私も腹をくくるしかなさそうだ。

 「私から願いでたものなのにそれを負い目に感じるのは変な話ね。前みたいにあなたちにいえばいいのかしら」

 「そうじゃ、でも2人とも言え。」

 スピアは私をまじまじとみた。スピアもわかっているのだろう。これ以外方法はなく、"重罪"だということが…。

 深呼吸をしてその場に立ち上がり宣言する。


 「楓里香は人間に戻るために超絶悪魔アスカと誓いを結ぶ」

 「超絶悪魔アスカは楓里香を人間に戻すために力を貸すことを誓う」


「その誓いを承認する」


 床に魔法陣がでてきた、紫の光をまとった魔法陣が輝き出して私たちの体を包囲する。まばゆい光が解き放たれて光が私たちを包み込んだあとその光と共に魔法陣も消えていく。

 これで誓いを交わしたのだ。これから人間に戻るための悪魔と協力する時間が始まるのであった。

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