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「フェリス、お前、ニコラスとは寝たのか?」

「えっ??寝る??それはどういう……」

「お前も年頃の女だ。分からんはずもないだろう、変な振る舞いはやめて、いいから質問に答えろ」

「そうよ、お父様が言おうとする事、私だってわかるんだからお姉様が分からないはずないわ!

あっ……もしかして、惚けたフリして甘いひと時を思い出しているとか?ヤラしい~」

「リスティア、今はあなたが口を挟む場面じゃない。黙りなさい」

「はぁ~い」

「さぁ、フェリス、答えて」


皆の目が私に一斉に集まる。

配膳していた侍従でさえ手が空いた者は部屋の隅に立ち私達の会話を聞いている。


(メリッサ……)


私はお願いを処理しているであろうメリッサの姿をつい探してしまい、部屋の中を探った。

すると、上座に座る父が業を煮やしたのか、肘掛けにかけていたステッキを床へと、トンッと強めに叩きつけ圧をかけてくる。


「フェリス」


低い声で名を呼ぶ父を見ると目を瞑り、ステッキを小刻みに、リズムよくトントン…っと音を鳴らす。


(怒ってる。しかも、かなり…)


「あの……その、ま、まだ、です……」


私が言い終わるとステッキの音が止まり、一瞬部屋の中が静まり返った。

時だけが流れていくが、それを切り裂くように高らかな声を出す者がいた。


「あははははっ!まだ、って。ニコラス様可哀想~!?」


(レスティア……)


「ちょっと、レスティア、いきなりどうしたの?」

「どうしたって、お母様、分からないのですか?だって、今お姉様はニコラス様と五年も一緒にいたのに一回も夜を共にした事ないんですよ。そんなことありますか??

はぁ~あ、私だったらそんな事しないのになぁ~」


(この子……)


レスティアの物言いに私は両手をギュッと握り、バラしてやろうと思った。


「よくそんな事言えるわね。あなた、昨日私の部屋でなにした?……言えないわよね。言ったら破滅しちゃうのはそっちなんだから」

「へぇぇ??何のこと?昨日ってニコラス様とお茶会しただけじゃないですか??」


(白々しい!?)


「違う!あなた、私のカップに薬を盛ったでしょ!ちゃんと聞いていたんだから!?」

「薬?なんの事?」

「惚けるなっ!?それに、私のベットでニコラス様と……」


最後まで言えばいいのに、何故か口に出すのが恥ずかしくなってしまった。


「えぇっ?なんですか?ニコラス様と私がベットで何かしたんですか??」

「その……ベットで……。と、とにかくあなたが私に薬を盛った!?それだけは間違いない。証拠だってあるわ」

「証拠?どこに?」


まだ部屋にはメリッサはいない。

キョロキョロと探す様子に今まで私達の会話を聞いていた母がため息交じりの声を出し、額に右手の掌を当てていた。


「お母様……?」


「はぁ……ごめんなさい。姉妹喧嘩なんて……」


「おい、早くリーナを部屋に連れて行け!?」

「はいっ」


侍従達に支えられ母は朝食を取る事なく私達の前から去って行った。


「ふぅ~……」


父は大きなため息と同時に天井を仰ぎ、落胆の色を隠せなかった。


「お前達は仲良くするという事はないのか……。フェリス、お前も少し可笑しいぞ?薬を盛ったといったが、その証拠とやらを提示できるならすぐにしろ」

「え、えぇ。出来ますわ。部屋にありますから」


話し合いの最中、メリッサが慌てた様子で部屋へと入ってきた。

だけど、違和感だらけの雰囲気を感じ、口をキュッと閉じた。


「メリッサ、ちょうど良いわ。さっきお願いしたカップ、部屋から持ってきてくれない?」

「えっ?」

「お願い、今はそれがないと困るの」


父と妹、そして私に見られごくりと一つ喉を鳴らすと、『す、すぐに』とまた部屋を出て行った。


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