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50 その後

あれからアドルフとニコラスとの間で協定が結ばれた。


内容は交易を結び、互いの益となる事だ。

ニコラスは資源、アドルフは食料。

だが、その協定であっても少しだけアドルフに有利な部分を付け加えられたようだ。


「待てっ、こんな内容は認められん」

「あぁっ!!?まだ俺に歯向かう気か。……いいぜ、とことんやってやるよ」

「うっ……」


貴賓の間で開かれている協定の場には私、キサラさん、メリッサもいる。

そして、ニコラス側にはリスティアとメリーがいる。


「失禁した野郎がよく言うな、なぁキサラ?」

「ははっ、確かに」

「ぐっ!」

「で、どうするんだ?これで締結するんだな??」


なかなか印を押さないニコラスに代わってリスティアが声を上げた。


「ま、待って下さい!こんなのあんまりです!量が違い過ぎます!?そちらより三倍もこっちが多いです!」

「なんだとっ!?」

「ヒィィィィイ!!?」


椅子を引き、アドルフから距離を取っていく。


「……リスティア、少し黙ってて」

「な、なによっ。ちょっと勝ったくらいでいい気にならないでよ、お姉様!?」

「……私はハーベスト家を追い出された身よ。それに、今はアドルフの妻、そんな呼び方やめて」

「……弱々しかったくせに!?」


すると会話を聞いていたメリッサが声を上げた。


「静かにしたらどうです?見苦しいですよ」

「えぇっ!?なんであなたに言われなきゃいけないのよ!ねぇ、メリー!?」

「そ、そうよ!あなたは侍従でしょ!」

「えぇ、それが何か??」


キッと見る目がキツく、メリーが慄いていた。


「そ、そんな目、今までしてなかったでしょ……」

「そうね、でも私はあなたを許さない。これからも長い付き合いになるでしょ。こうやって顔を突き合わせて話し合う機会もあるんだし」

「……」


「おい、ニコラス。外野がうるせぇからとっとと押せ」

「……くっ」


用意した紙にニコラスは印をグッと押し、締結した。


「ちゃんと守れよ、じゃないとまた攻めてやるからな」

「……分かったっ!?その代わり、条文にもあるが攻めてくるなよ!?」

「あぁ」



不満気な顔を残し、ニコラスは協定の場を後にしていった。


「いいの?追わなくて?」


私はリスティアを問い詰めた。


「……カッコ悪い」


ボソッと呟いた言葉は小さかったがちゃんと聞こえた。


「あんな失禁してる姿を晒したニコラス、嫌いよっ!?」

「えぇっ、リスティア様??」




あの日、リスティアは意識を取り戻しニコラスが倒れた姿を見た様だ。


「汚いし、目なんか真っ白だった!いつもカッコいい姿だったにあんな姿を晒すなんて!?一気に冷めたわ!?」

「ちょ、ちょっとリスティア様??どうしたんですか??」

「うるさいっ!?」


近づくメリーを払い除けていく。


「……もっといい人、見つけなきゃ」

「なに言ってるです!ニコラス様以外いないじゃないですか??アーデルハイト家ですよ!!?」


二人の言い争いにアドルフはギシッと背もたれに体を預けた。


「ふっ、醜いな。……ならとっとと離婚でもしたらいいじゃないか?嫌いなんだろ?」


茶化すように言う言葉にリスティアは…。


「そ、そうねっ。離婚してやるっ!!!?」


椅子から立つとニコラスを追う様に出ていき、それをメリーが追い、私達の前には誰もいなくなった…。


「まぁいい、印も押してあるんだ。……いても仕方ない、帰るぞ」






「……フェリス」


協定の場にはいなかったが、屋敷の外の馬車には私の母がいた。

母はあれから父とは離婚したそうだ。

散々、上からの物言いに耐えていたが、ある日、軍馬に関し不正を働いている事の紙を見つけたそうだ。


賄賂を送り、質のいい馬の種付けを優位にしていたものだった。


それを周りの貴族達へバラすと風向きが変わり、父を支援する者が次第に離れていった。

今では、ひっそりと一人で暮らしているらしい。


「終わったのね」

「はい」

「……リーナ様、お待たせしました」


アドルフが母に対し、頭を下げていく。


「いいのよ、……お世話になってしまいごめんなさいね」


そう、母は今は私と共に暮らしている。

あの『本宅』に…。


「さて、帰りましょうか」


キサラさんが声をかけてくるが、私はそんなキサラさんを見ていた。


「どうしたんですか?フェリスさん。……いや、フェリス様」

「今まで通りでいいですよ、恥ずかしいので」

「いやいや、そうはいっても周りに対してもありますからね。……それよりなぜ見たんです?私を」


問う言葉に私はメリッサの方を見た。


「なんですか?お嬢様??」


「……メリッサ、あなた、キサラさんの事見てるでしょ?」

「えっ?」

「……私もあなたと長くいるんだし、分かるよ。目で追ってる。さっきもそうだった」

「い、いいえっ。そんなことっ!?」


だが、メリッサの頬は少しだけ赤くなっていた。


「……い、いつから?」

「ふふっ、いいの?それ。認めてるってことになるけど」

「あっ」


周りの目はメリッサとキサラさんへと移っていく。


「いいじゃねぇか?お互い召使いと侍従。立場的に同じなんだし困る事もないだろう」


アドルフが発する言葉に困ったなぁっといった顔を見せつつ、後頭部を掻いている。


(……兄弟なんだなぁ)


「……じゃあ、お友達からでも良ければ」


キサラさんの言葉にメリッサはさらに赤らめていった。


「……あ、あの、その、お、お願い、します」

「良かったね、メリッサ」

「お嬢様っ!!?」



これから皆で仲良く暮らしていこうと思う。

共に支え、幸せな未来があると信じて…。



               ーーーfinーーー



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