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砂煙の中、金属音と呻き声が聞こえてくる。

初めて見る戦場の様子を私はじっと見ることが出来ず、ちらりちらりと目を下に下げたり上げたりしながら見る感じになっていた。


「……無理しなくていいですよ。見てていい物じゃないですから」


キサラさんの周りには数人の兵士が残っているが、大半はアドルフと共に攻めに行っているようだ。


「大丈夫、でしょうか?」

「守る者がいますからね」


ちらりと私のことを見ては優しく微笑んできた。


次第に砂煙が晴れてきて、様子がわかるようになってきた。

あれだけあった大砲はあれから一回も撃つ事もなく、沈黙していた。


「どうして撃たないんですか?」

「あれだけ周りの様子が分からないと味方にも当たりますからね。撃ちたくても撃てない、そんな感じですよ」

「そうですか。……あっ」


煙の向こうにアドルフの姿が見えた。

先頭を行くアドルフの周りには多く騎士達が迫っており、取り囲もうとしているようだ。


「キサラさん!」

「……行く気ですか?危なすぎます」

「でも、アドルフがっ!?」


私は後ろを振り返り、今すぐにその場所に行く事を懇願した。


「……ダメです。あなたが行ったら周りの注意が疎かになります。それにアドルフは一人じゃない。周りにいる兵士も屈強な者ですから」


私の体は少し前のめりになり、少しでもアドルフの姿を見失わないように目を細めて見ていく。

すると、アドルフを取り囲んでいた騎士達が徐々に倒れ始めていき、状況はこちらが優勢となっていった。


そんな中、こちらへと近づく兵士がいた。


「キサラ様、アドルフ様からです。ニコラスが後退し始めたそうです。追い詰めるから後を追ってくるように、と」

「……さすがだなぁ、まだそんなに経ってないのに。了解した、と言っておいて」

「分かりましたっ」


伝令係の兵士が戻っていき、背を追うように私達もゆっくり後を追いかけ始めた。




道中、ニコラス達が使っていた大砲に目を向けた。


(……あれだけ啖呵を切っていたのに)


すぐに私はそれから目を外した。



「アドルフ」


キサラさんが声をかけていく。


「あぁ、……怪我は?」


アドルフはキサラさんよりも私の事をみて声をかけてくる。


「私は、見てただけだから……」

「そうか、ならいい」

「それで、ニコラス達は??」

「あぁ、屋敷まで逃げるつもりだろうな」

「どうするつもり?」

「ここまでしたんだ、追い詰めるまでだ。それに……」


また私の事を見てきた。


「……侍従を助けないとな」

「あ、アドルフ……」

「そうだね、メリッサさんも早く助けないと。もし人質なんかにされたら厄介だから」

「いくぞ、決着をつける」



先を追う兵士達に続き、私達もニコラスの屋敷へと向かっていった。




ーーーーーーー



屋敷内は慌ただしくなっており、『ルーベルト家だっ!?」と騒ぐ声がいくつもしてきた。

そんな中、大勢の兵士を引き連れ、アドルフは屋敷へと入っていく。


「無駄にデカいな。……フェリス、あいつがいそうな場所わからないか?」


問われ、考えるが自身の部屋に逃げ込むとは考えにくい。

身の周りを守る騎士もそれなりに欲しいはずだと思い、貴賓の間では?と返した。


「……そうか、案内してくれ」

「うん」


私の横をアドルフが目を配りつつ歩いている。

それはまるで用心棒の様な雰囲気を出しながら…。


「ここ」


私は貴賓の間の扉を指差すと、下がるように指示してくる。

そして、勢いよく扉を開くと中にニコラスと何人もの騎士達、それだけじゃなくリスティアまでもいた。


「……リスティア」

「ニコラス様っ、来ました!?し、しかもお姉様まで」

「アドルフ、お前、女など連れていたんだな」

「お前もいるじゃないか。で、おめおめと逃げた先で大口を叩ける程の戦力なのか、そいつらは?」


アドルフはニコラスの周りにいる騎士達に目を送り、右から左へと動かしていく。


「こいつらはさっきの奴らより使える。……それより随分疲れ切ってるようにも見えるが?」


ニコラスの言葉に私はアドルフを見ると、確かに顔には汗をかき、少し肩で息をしているようにも見えた。


「良い準備運動だっただけだ。……おしゃべりはもういいだろう」


グッと足元に力を入れるの見て、お互いに臨戦体制へと向かっていく。



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