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窓の外に出た私は周りを見渡し、石垣を見つけるとそちらへと駆けて行った。


「いた」


アドルフが言っていた通り、石垣の近くの木に馬が繋がれており、急いで手綱を外していく。


「アドルフ……」


馬に寄り添い、今か今かと待ち侘びるがなかなか来ず、不安感が募ってきた。

次第に屋敷内の部屋の灯りが灯り始め、周囲に騒動があった事が知れ渡っていく。


(どうしよう、このままじゃ……。そうだ!)


私は捕まりそうな時に…と言われていた笛を取り出し、思いっきり吹いた。



ピィィィイィイィッ



周囲に響き渡る大きな音。

吹いた事で私の存在は知れ渡っていき、窓を開け、外を確認する使用人の姿が見えた。


(アドルフ、早く……)


すると、ガチャンッとガラスが割れる音がした後、甲冑を着たアドルフが外へと飛び出してきた。


「こっちだっ!?」


すぐに騎士達も追いかけるように外へとやってくる。


「フェリス、乗れっ!?」


アドルフの声に焦り、モタモタと馬の背に飛び乗ろうとするもうまく行かない…。


「おいっ、あれ!?」

「くそっ、牢屋を破ったんだな。ニコラス様に報告に行け」

「でも、今はリスティア様と……」

「そんなこと言ってる場合か!逃げられたら俺らはどうなるんだ!?早く行けっ!?」

「……分かった」


(ニコラス……リスティア……)


もたつく馬上で二人の名を聞いた私は少し動きを止めてしまった。


「なにやってるっ」


アドルフが馬へと辿り着くとすぐに私のお尻を持ち上げ、馬へと乗せていく。


「ちょっとっ……」

「いくぞ」


すぐにアドルフも乗ると馬のお腹を蹴り、走り出していく。


「待てっ!!!?」


騎士達は大声を張り上げ馬へと走ってくるが、人間の足では追い付くことはできず、暗闇に紛れ屋敷を脱出することができた。




ーーーーーー




急いで森の中へと駆けていき、後ろを振り返ると捜索隊が出されたようで、いくつも火の灯りが見え、森へとやってきていた。


「……素早いな。こんな時にお楽しみ中とはいかんか」

「アドルフ、どうして……」

「また質問か?」

「……」

「っつ!?」

「アドルフ!?」


アドルフは苦悶の表情を浮かべつつ、顔をゆっくりと前へと倒してきた。


「もしかして、怪我を?……あっ」


森へと注ぐ月の明かりが一瞬アドルフの顔を照らすと、頬は腫れ、唇付近からは血を流していた。


「こんなに……」


だけど、ケガはそれだけじゃなく、手の甲には切った跡があり、やはりそこからも血が止まる事なく流れ出していた。


「止まって、手当てを!?」

「……止まれるかよ。後ろ見たなら分かるだろ?あれだけ必死に探しているんだ。止まったら簡単に追いつくぞ」

「それでも……」

「こんなのは後でいい、まずは合流地点まで行く」

「合流?」

「あぁ、キサラに頼んである。俺だけだと撒けない可能性があるからな」


馬は森を抜け、荒野へと出るとアドルフが言う合流地点へと走っていく。

そして、しばらくいくと岩盤の近くで脚足を緩めていった。


「……遅かったね」

「キサラさん」

「あぁ、良かった。無事だったんですね」

「……」


安堵するキサラさんに私は少し目を伏した。


「どうかしましたか?」

「……侍従も捕まったらしい」

「えぇっ?!……それじゃあまだ屋敷に?」

「あぁ、だが、連れてかれて屋敷の何処にいるかわからん。だから助け出すのは無理だった」

「……そっか」

「とりあえず、まずは……」


アドルフは森の中の方へと目線を向け、灯りがこちらへとくる事をキサラさんへと教えていく。


「……そうだね、仕方ないけどまずはフェリスさんを本宅へ連れていくのが先決だね」

「あぁ、すまないが撹乱頼めるか?」


アドルフは馬上で頭を下げてきた。


「いいって、君が頭を下げるなんて今まで無かったし、余程なんでしょ」


頭を下げるアドルフを私は黙ってみていた。


「じゃあ、それを貸して」


甲冑を脱ぐようにいい、取り外した甲冑を手渡すとキサラさんはそれを身につけていく。


「……フェリスさん」

「はい」

「無理するから、アドルフは。支えてやって」

「……うるせぇ、早く行けっ」

「はいはい」


キサラさんは森の方へ駆けていき私達から離れていった。


「……飛ばすから捕まってろ」


アドルフもすぐに本宅へと向け、馬を走り始めた。


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