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「早速だけど教えて」
「はい、昨日は……」
メリッサが口を開こうとした時、扉が突然開いた。
(レスティア……なんで?)
「あらあら、そんな床に二人ともしゃがみ込んで何をされているのかしら?何かお探し物でも??」
現れた妹のレスティア。
赤毛ボブの右側にはキラリと光るゴールドのハート型の髪留め、くりっとした瞳はエメラルドをしており、背丈は私より頭半分程高く、話す際は少しだけ私が顎を持ち上げてみる。
着るドレスは薄いピンク色をしており、腰には大きなリボン、ドレスの肩や裾にはレース状のフリルを付け可愛さをアピールしてくる。
「……別に探し物なんてないけど。それより何か用?私の部屋に来るなんてよっぽどの事が無い限り足を運ばないはずなのに」
「それがあるから来たんだけど?」
「なに?」
「んん~っ」
レスティアは入ってきた部屋をぐるりと見渡し、ベット、そしてテーブルで一旦目を止めていた。
(昨日の事を思い出しているの?それとも他に?)
「お姉様、昨日は楽しかったですね。ニコラス様もとてもご機嫌で」
「……そう、それは良かった」
「あら、反応が薄いですね?……まぁ、仕方ないわよね。なんだか急に頭を揺らし始めたと思ったら、カクッと寝ちゃったんですもの。大変でしたよ、あまりに急だったから」
(カップに仕込んだのね、確か私が座っていたのはニコラス様の隣、ニコラス様がベットに近いあの場所なら私は……そこね。そして、向かいは確か、この子)
「ねぇ、レスティア」
「待った!今はこんな話をするために来てないので。朝食が出来たから呼びにきただけ」
「どうして?朝食ならメリッサが毎日持ってきてくれるはずよ?」
私は隣にいるメリッサに目を送るとこくりと頷く。
「そ、そうです。フェリス様の朝食ならいつも私がこの部屋まで」
「お父様とお母様がお呼びなので」
「えっ?」
「なんでも《《大切な》》お話があるそうで。なんでしょうね~??普段共に食べる事なんてないから《《よほど》》の事なんでしょうね~」
私を見ながら両口角を目一杯上げ、不気味な笑顔を見せてくる。
(婚約破棄の話?でもそれは昨日ここで聞いただけだし、まだお父様もお母様も知らないはず)
「大切な話があるらしいので早く立ち上がっては?」
「え、えぇ……」
私とメリッサは立ち上がるのを見届けるとレスティアはクルッと回転し、大きなリボンを揺らしながら私の前から去っていった。
「メリッサ……」
「えぇ、なにかありますよね」
「そうよね……わざわざ朝食を共にするなんて無かったから」
部屋を出ると前方にはレスティアがおり、私達がしっかりついてくるかを確認するかのように時折り止まっては振り返ってくる。