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「メリッサ、あなた、覚えていなさいよっ」


後を追うようにメリーも私達から去っていった。


「大丈夫、メリッサ?」

「お嬢様、私……」


ニコラスへの物言いの時はやはり強がっていたのだろう、少し体を震わせており歯はカチカチと鳴らしていた。

そんなメリッサの肩を優しく抱いた。


「ありがとう、あなたがいるから私は大丈夫」

「そんな……」

「いきましょう、あの二人には負けないから」

「……はい」






ーーーーーーー





貴賓の間


そこはアーデルハイト家の中で1番大きな洋室であり、私がニコラスと婚約した際にも来た事がある場所。

とても高い天井は半月状に丸くなっており、その天井には壁画が書かれている。

壁には細長い長方形の窓がいくつもあり、そこから日が入るとまるでピアノの鍵盤のように規則正しく並ぶ。

正面には今日の為か、祭壇が設置され近くには燭台がいくつも並んでいた。


入るとすぐに私のことに気づいたアーデルハイト家の使用人達がヒソヒソと話し出すのが見えた。


『……見て、フェリス様よ』

『ホントだわ、どんなお気持ちなんだろう』


姉妹間での交代。

一方はこれからアーデルハイト家へと嫁ぐ者、そしてもう片方は破棄され家を追い出された者。

婚約者だった頃とはうってかわり手のひらを返したような物言いがいくつも私の耳に届いてくる。

その物言いのするほうへと私が目を移すとそそくさと逃げ、周囲のお世話へと消えていく。


(……こんなに変わるのね、人って)


「お嬢様?」

「……平気、お母様はどこにいるかわかる?」

「え、えぇっと……」


少し背の低いメリッサは爪先立ちをする形で周囲を見渡していく。


「あっ、あそこです。あの燭台の近く」

「いきましょう」





「……お父様、お母様」


両親の前に来た私を父は、少し気難しそうな顔で出迎える一方、母はすぐに寄ってきてくれた。


「フェリス……良かった、無事なのね」

「お母様」


熱い抱擁で抱きしめてくれる母の胸元で私は少し涙を見せた。


「本当に良かった」


安堵の声を出す母だったが、父は持っているワインを一口飲み、話してくる。


「……遅い」


悪いとか申し訳ないとかの謝罪なんて一言も無かった。

むしろ人を待たせるなんて…といった態度だ。


「あなた……フェリスはあなたの娘ですよ?」

「だからなんだ?ニコラスと上手くいかなかった奴など知らん」

「そんな言い方……」

「リスティアがいたから家は持ったような物、だからそんな奴よりリスティアの方を大事にしろ。……分かるだろ、それくらい」


当主として当たり前のような発言で母の事を貶してくる。

それどころか自身に嫁いだのならそれくらい当然くらいな物言いで責め立ててくる。


「……すこし静かにしてろ、そろそろ始まる」


私達の元を少し離れ、使用人から新たにワインを受け取り飲み干していく。


(……こんな父だったなんて)


何杯もワインを飲む父の背を私はジッと見ては抱きついた母の背を強く握っていた。






その後、祭壇には神父が現れ、会場が静まり返る。

すると、貴賓の間の扉が開かれ集まった他貴族の感嘆な声が漏れていく。


その中でニコラスがとても堂々と背筋を伸ばし真っ直ぐ祭壇へと歩いていく。

そして、祭壇前まで来ると、クルッと反転し扉の方を見始めた。


皆の目が再び扉へと注目し始めると、純白のウェディングドレス姿のリスティアが姿を見せた。

頭にはキラリと光る宝石が幾つ散りばめられたティアラ、手元には鮮やかな色をしたブーケを持ち、皆の注目を浴びるかの様にゆっくり一歩ずつ進んでいく。

そんな姿に先程よりも大きな感嘆な声が漏れ始め、皆見惚れているようだった。

そんな姿の後ろをメリーが裾を持ち、ゆっくりと歩く。


祭壇近くまでくると最前列にいる私の方をチラリと見てきた。

その顔は勝ち誇ったように左の口角を少し上げ…。


(ざまあみろ、ってこと……どこまで……)


私の顔を見終わると神父へと顔を戻し、二人の式が始まっていった。



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