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ずぶ濡れのまま私達は本宅近くに戻ると、メリッサがキョロキョロと周りと見渡しているのが見えた。

不安なんだろう…。


「あっ」


ゆっくり近づいてくる私達に気付き、すぐに駆け寄ってきた。


「ど、どういうことですか!?」


驚くのも仕方ないだろう。

一人は全身びしょ濡れで、もう一人は白いマントに身を包んだ状態なのだから。


「ちょ、ちょっとね」

「ちょっとって、ありえないです!……お嬢様に何かしたんですね!?」

「……こいつが勝手に落ちただけだ」

「落ちた??」


メリッサは馬上にいる私へと目を移すので、軽く頷く事にした。


「何があればそうなるんです??」


質問にうんざりした表情を見せるアドルフは馬を止め、私を降ろすから台座をもってこいとメリッサに命令した。


「……お嬢様、早く」

「そんな急かさなくても」


降りた私を抱え、少しアドルフから距離を離そうとするが、私はそれを止めた。


「えっ?」

「メリッサ、もう大丈夫。冷酷な殺人者(イレイザー)と呼ばれるほど酷い人じゃない。それに……あなたでしょ。私の事、言ってくれたのは」

「……聞いたんですか?」

「えぇ」


私は包まれたマントを広げ、メリッサに抱きついた。

ずぶ濡れだから本当はこんな風にしたらいけないのだけど…。


「そ、そうですか……」

「うん」


抱きつかれたメリッサの目は馬上のアドルフに向けられた。


「……侍従、悪かったな」


「えっ!謝った!?」


驚くメリッサをよそにアドルフは『ふんっ』と強く鼻息を吐くと馬を厩舎へと歩かせ去っていった。


「……どうやらフェリスさんは他とは違うみたいだね」

「口を閉じろ。キサラ」





ーーーーーーー





「本当にびっくりしました。まさか……」


私の部屋でメリッサが何度も驚きの声を上げる。


「本当は優しいんだよ、アドルフは」

「それでもよく分かりましたね、そんな事」


濡れたワンピを着替えつつ、椅子に掛けたマントへと目を移した。


「だからメリッサも、もう突っかかるのはやめてね」

「……そうは言っても」

「メリッサ」

「はい?」

「私はここで生きていくと決めたから」

「ここって……。えっ、まさか嫁ぐつもりで??」

「……それはまだ分からない、だってまだほとんど知らないから。でも、ゆっくり知って行こうと思う。だからメリッサにも迷惑をかけるかもしれない。……ごめんね」

「お嬢様……」




その日はそれから淡々と過ごし、夕暮れ時になると、キサラさんが部屋へとやってきた。



「失礼しますね。……フェリスさん、アドルフが一緒にお食事でもと言ってますが、どうしますか?」

「えっ」


驚きの声を上げるのは私よりもメリッサだ。


「どんな話術を使ったんです、お嬢様??」

「話術って……話しただけよ」

「だって帰ってきてから急に態度を改めてますし、それに今回の件ですよ!」


横でわーわー言ってるが、私はキサラさんに『喜んで』と伝えた。

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