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軍事施設といっていた建物とは違い、この本宅は真っ白な煉瓦を積み上げられ、建物の四方には円柱の塔が立ち並ぶ、まるでお城のようだ。
「あの円柱の最上階は物見にもなってます」
「そうですか」
この本宅も建物を囲う塀はなく、馬車は本宅の正面へと進んでいった。
正面の扉前には円形の大きめな囲いがあり、その中には真っ直ぐ伸びる大きな木が生えていた。
その木の近くで馬車は止まると、私達よりも先に着いたアドルフ達の馬車があった。
すぐに私は降り駆け寄っていく。
「メリッサ」
声を掛けると両手に鞄をぶら下げ立つメリッサの姿があった。
「大丈夫?」
「えぇ」
「……何もしてねぇよ」
アドルフは私達から少し離れた所に立ち、やってきた私を少し鬱陶しそうに見た後、焦茶色の大きな両扉の片方を開けると中へと入っていった。
「我々も中に」
またキサラさんはメリッサが持つ鞄を手にしてくれ、後を続いた。
「うわぁ」
「綺麗ですね」
本宅の中は真っ白で、高さのある天井をつい見上げた。
またここも軍事施設と同じような階段があり、ここも三階立てのようだ。
ただ、目を左右に送ると、教えられた円柱の建物へと向かう入り口が見えるくらいで横に長いわけではなかった。
ただ少し気になったのは所々に置かれた腰丈位の置物にある花瓶だ。
そのどれも白く、下が丸い形で先端に行く程狭まり、まるで涙のような形をした物。
そこに様々な色をした花が挿されていた。
「花はどこから?」
「それは裏に生えてますよ」
「へぇ」
「アドルフ」
先に入っていたアドルフは階段の方へといっており、それをキサラさんは引き止めた。
「なんだ?」
「部屋を案内するけどいいよね」
「……あぁ」
答えるとさっさと上へと上がっていった。
(あれ……)
前日みたいに私達を引き離そうとすると思っていたが拍子抜けするほどあっさりとしていた。
「アドルフも多少は疲れているんじゃないかな」
(疲れ?本当にそうなのかな?)
一抹の不安を覚えつつもその背を見送り、私達は部屋へと案内された。
私達は三階の一部屋をそれぞれ与えられた。
「どうぞ」
六畳一間、南向きの部屋、そこは日が入る大きな窓に横開きのベージュ色のカーテン、一人では少し大きめなベットが窓辺に設置され、近くには木目の残る木のテーブルと肘付きの椅子がある。
「鞄はここに置いておきますね」
キサラさんはテーブルに置く。
「あっ」
私は窓の外に見える広大な湖に声をあげ、その近くには楕円形の馬の運動場と長方形をし長細い厩舎が見えた。
「良かったら見に行きますか?」
「えっ、いいんですか?」
「えぇ」
私達は本宅の外へと向かう事にした。




