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「お嬢様っ!……良かった、本当に良かった」
メリッサはすぐに私に抱きつき安堵の声を何度も挙げていた。
「……メリッサ」
「本当に何もされていないですよね??」
抱きついた体を離すと両肩に手を置き、右、左へと異常がないかを確認してくる。
「大丈夫だって、何もされてない」
「……本当に?」
「本当に」
「はぁ~……良かった」
二人の光景をキサラさんは目を細め、まるで父親のような雰囲気を醸し見ていた。
「ここは?」
キサラさんに連れてきてもらった部屋。
そこは一階右側の角部屋に当たる場所で、十畳程の大きさにはシングルベットが二つ横並びにあり、その上には白い毛布が置かれ、ベットの間には小さな丸いテーブルが一つ。
ベットの足元側にはダークブラウン色のテーブルと椅子があった。
「ここは客室ではあるんですが、必要最低限の物しかないです。こんな部屋ですみません。本宅に行くまではここで我慢してもらえますか?」
「いえ、十分です」
キサラさんは少し黙ると私の容姿と格好を見ているようだ。
「あの……」
「いえ、すみません。雨が止めば本宅へと移動します。今日はゆっくりしてください」
「はい、ありがとうございます」
パタンと扉を閉められたが、私は少しモヤッとした。
(キサラさんはなんで私を見たんだろう…?)
その後、雨は降り続け、日が暮れる頃にはキサラさんが食事を持ってきてくれ一日が過ぎていった。
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翌日、私はメリッサよりも先に目を覚ました。
それは多分アドルフの存在が気になったのもあるが、キサラさんの件も絡んでいたからだと思う。
「っん……。お嬢様?」
「あっ、ごめん。起こしちゃった?」
ベットから椅子へと移動していた私を目ぼけつつも不思議そうな顔で見てくる。
「早いですね」
「えぇ……ちょっと……」
「ちょっと??……まさか!?」
がばっとメリッサは包まれていた毛布を払いのけ起きてくるとすぐに近寄ってきた。
「アドルフ様がきたんですか!?」
「……そんなふうに起きたら見えちゃうよ」
お互い真っ白なネグリジュ姿であり、今の行動はいささか…。
「そんなこといいです!?来たんですか!?」
両肩を持ち揺らすメリッサ。
私は首をガクンガクンとさせられながら首を振るが、揺らされている行動の方が強くて否定してるようには見せれなかった。
「すやすや寝てる場合じゃなかった……」
「だから、違うって」
私はメリッサが掴む手に添えるとゆっくりと落としていった。
「来てないから。それにここには鍵もついてるでしょ?」
私は扉を指差すとシルバーの鍵が横向きにロックされ扉が開かないようにされていた。
「昨日閉めたのはメリッサよ。だから大丈夫」
「……あっ」
ようやく安心したようで、メリッサも椅子へすとんと座った。
「これからはずっと側にいますから!もし、二人きりになっても私、監視しますから!?」
「ありがとう、メリッサ」
何もなくホッとした雰囲気の中で扉をノックされた。
「キサラです。朝食を」
「あっ、はい。すぐに開けます」
メリッサは慌てた様子でロックされた鍵を解除すると木のお盆を持ったキサラさんが目の前にいた。
「どうですか?休めましたか?」
「え、えぇ」
「雨も上がりそうですので食べたら本宅の方へ移動しますから準備だけお願いしますね。また来ます」
「はい」
メリッサにお盆を渡すと去って行った。




