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「読んでも?」

「あぁ」


メリッサから手渡された白い封筒。

封筒には青と朱色が混ざった封印が真ん中で割れており、その中に一枚の紙が入っており、私は目を通した。


「……そんな」


私は頭を少し前に傾け、それと同時に持っていた紙をテーブルの上にひらりと落とした。


「ど、どうしたんですか。お嬢様」

「ニコラス……」


顔は一気に暗くなり、朝だというのに傾けた私の顔の下には重くどんよりとした影が出来ていた。


「……お嬢様?」

「気になるならメリッサ、お前も読んでみればいい」

「い、良いのですか?」

「あぁ」

「それじゃ……」


メリッサはテーブルに落とした紙を拾い上げると、ゆっくりと目を左から右へと動かし読んでいく。


「えっ。……ルーベルト家に、って」


書かれていたのは、私との婚約破棄とリスティアへの乗り換え、そしてもう一つは破棄された私は誰にも相手されないだろうと決めつけ、半ば強引にルーベルト家ではどうか?という内容だった。


「最初は驚いたが、お前の話を聞き、正直揺れ動いているのも事実だ」

「私の話って?」

「お前はニコラスとは上手くいってない、だが、ハーベスト家の未来を考えたらリスティアに変えるという申し出も私は有りだと考える。

ニコラスとの婚姻を望む者は沢山いるし、もし他に取られたらこの家は終わりだ」

「だからと言って私を追い出すのですか?」

「……」

「黙らないでくださいっ!」


すると座っていた父は急に立ち上がり、椅子の後ろにある窓へと移動していく。


「フェリス、これも(まつりごと)だ。これからこういう場面は少なからず発生する。良い機会だと捉えろ」

「……私はアドルフをよく知りません」

「だろうな」

「だろうなって、そんな所に娘を送るのを了承するんですか?!もし、何かあったらとか考えないのですかっ!?」

「……フェリス、黙れ」

「嫌です!」


カンッ!!?


父のステッキの叩く音が響いた。


「……ニコラスをちゃんと捕まえないお前が悪い」

「本気で言ってますか?」

「あぁ」


(家のために私を生贄にするってことね……)


「……わかりました。お父様がそういう考えなら出ていきます」

「お嬢様っ!?ダメです、考え直して下さい!?」

「メリッサ、……あなたは私の味方?」

「えっ?」

「私はずっとあなたの事を信じてる。……だから聞かせて。味方?それとも?」

「私は……」


言葉に詰まっているメリッサに父が声をかけてくる。


「メリッサ、お前もフェリスと行け。残っていたら孤立するだけだ」


(そんな言い方……)


「お父様、今の言い方はあんまりです!メリッサに謝って下さい!今までずっと私の側にいましたし、周りとも上手く……」

「……もういいですよ、お嬢様。ラルフ様の言う通りです。お嬢様は知らなかったかもしれませんが、私は他とはあまり上手くいってないです」

「そんな、嘘でしょ……?」


メリッサは首を振り否定してきた。


「話しは終わりだ。……近い内にニコラスもここに来る。その時正式に話があるだろう。いいな、フェリス」


父の背中からは早く出ていけと言わんばかりのオーラが出ており、異論を唱える隙を与えなかった。



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