第六話 巨悪
皆さん、こんにちは。ヤミです。本日は第六話を投稿させていただきました。
《怪盗》に《殺し屋》が現れ、シエルをかけた戦いが幕を開けます。
俺たちは銃を握り、《殺し屋》、《怪盗》と対峙していた。
「いきますよ。」
すると、ジャックの手からナイフが生成され、それをいくつも投げてくる。
「下がって!」
シエルが手の平を相手に向けると、氷の壁が展開される。飛んできたナイフは氷の壁に当たると跳ね返り、地に落ちて消えていった。
「氷ですか。これは厄介ですね。」
「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」
シエルが展開した氷の壁を軽々と飛び越えてくる。しかし《怪盗》はシエルには目もくれず、俺たちに向かって銃を発砲してくる。
「伏せろ!」
クラウスが叫び、俺たちは全員銃弾をかわす。すぐさま、クラウスとトーマスは駆け出し、《怪盗》の間合いに入る。
「早いな。だが、俺の方が早い。」
クラウスが持っていた短剣で《怪盗》を振り払ったと思ったが、クラウスの手には何も握られていなかった。
「俺は《怪盗》だぜ。こんなモノすぐに盗める。」
《怪盗》の背後にトーマスが飛び出し、メリケンサックをはめた拳で頭部を殴る。
「なかなか良い腕だな。」
だが、トーマスの拳、いや右腕は肘の部分から無くなっており、《怪盗》の手の上にあった。出血はない。パーツのように腕だけが取り外されていた。まるでプラモデルの様に。
「腕がぁ!!」
「そんなに騒ぐなよ。見苦しいぞ!」
《怪盗》は大きな本をどこからか取り出し、その中にクラウスの短剣とトーマスの右腕を仕舞い込んだ。
「何をしているんだ?」
俺の問いに《怪盗》は
「コレクションさ。俺は世界中の全てのモノを手に入れる。その為に、俺は《プレデター》に入ったのさ。」
「どういう意味だ?《プレデター》の幹部は皆、オリジンによって産み出されるのではないのか?」
その疑問に、《怪盗》はニヤリと口角を上げて話し始めた。
「俺は元々、お前たちと同じ《整合騎士団》の一員だった。」
「まさか、《邪神》か?」
「ご名答。《整合騎士団》の中でも唯一犯罪経歴のある人物の寄せ集めのグループ。そしてジャックもそのうちの一人だ。」
「何故、《プレデター》に加わっている。」
「何故かって?そりゃあこの世の全てを手に入れるためには強力な力が必要だ。だからオリジンの下に付いたんだ。そのお陰で今となっては何でも盗む事が出来るようになった。」
今まで冷静だったクラウスが《怪盗》の話を聞き、もう一振の短剣を手に握ると
「お前はここで殺す。世界を、人類を脅かす悪党が!」
「今度は腕ごと盗んでやるよ!」
クラウスが《怪盗》の目の前まで駆け寄り、短剣を振りかぶる。その時、一発の銃声が響く。
「くっ!」
どこからか放たれた銃弾は《怪盗》の右腕を撃ち抜いていた。
「誰だ?」
「助かった。スティカ。」
氷の壁の上にはスナイパーライフルを持ったスティカが立っていた。
「まだ仲間がいたのか。」
その時、目の前にあった氷の壁が砕かれた。
「リーダー!大丈夫ですか!」
「私は大丈夫!クラウス、《怪盗》はそっちに任せるよ!」
「了解しました!」
「リーダー。あのシルクハットの男を殺ればいいですか?」
リリィもこちらに駆けつけ、バスターソードを背中から抜剣する。
「できれば殺さないでほしいな。彼には聞きたいことがあるから。」
「了解です。」
「おやおや、女性なのにとても物騒なモノを持っていますね。」
「はっ、ずいぶんと余裕そうね。」
「リリィ、いくよ。」
シエルの声にリリィも構え、二人は同時にジャックに向かって駆け出す。シエルは氷の剣を手に持ち、氷の礫を放ちながら徐々に間合いを詰めていく。だが、それはジャックの放つ無数の刃物に穿ち抜かれる。
「なかなかいいですね!ですが惜しいですね。」
するとジャックも駆け出し、両者は次第に間合いに入る。三人の刃が交わり、火花が散る。
「イッツ、ショーターイム。」
ジャックがそう口にし、指を鳴らす。突如、地面からたくさんの刃物が剣山のように飛び出してくる。
「くそっ!」
その刃物はシエルとリリィの腕や足をかする。二人は痛みにふらつき始める。
「先程までの勢いはどうされましたか?」
ジャックが煽るように声をかける。だが、シエルたちは剣山の中に囚われていて、動けばおしまいだ。
「クラウス!二人が!」
俺がクラウスに声をかけると
「余所見とはいい度胸だ!」
《怪盗》は俺目掛け跳んでくる。
「神木!リーダーたちを頼んだ!」
クラウスの声に神木は頷き
「了解だ。」
神木はシエルたちを目指し一直線に駆けて行く。あっけに取られていた俺の目の前に《怪盗》が現れ、俺の何かを盗もうとする。すると俺と《怪盗》の間にトーマスが飛び出し、《怪盗》の腹にストレートを入れる。
「ぐはぁ!」
《怪盗》の背後、クラウスが短剣握り直し勢いよく胸腰に刺す。
「ぐっ!貴様らぁ!」
「大丈夫ですか!アルセーヌ!」
そこへジャックが走って駆け付ける。ジャックは幾本もの刃物を生成するとそれを俺たちに投げ放つ。
「クソッ!」
「いっ!」
「チッ!」
無数の刃物をかわそうとするが、全てを避けきることは出来ずに刃物は俺たちの体を掠めていく。一方、神木が向かったシエル達が閉じ込められている剣山の檻は未だ破ることが出来ずにいた。そこへ、神木が辿り着き
「すまない。今ここから出す。」
神木は腰に下げた刀を抜刀する。
「《絶対切断》!」
そう叫び刀を凪払う。すると、シエル達では壊すことのできなかった剣山の檻は一刀両断され、光の粒子となり消えていった。
「これが、《絶対切断》の威力。味方ながら恐ろしいね。助かったよ。ありがと。」
「神木、感謝するわ。」
二人の感謝に神木は「とんでもない」と答え三人は敵の方へ向き直る。
「さあ、ここから倍返しといこうか。」
皆さん、いかがだったでしょうか。
シエルとリリィのピンチを救った神木。ここから《暁》の反撃が始まっていくのか。そしてシエルを奪われずに《プレデター》を退治できるのか。
次回第七話 争いの結果