プチプチ♡
プチプチ! 3333【WEB】
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作者:雨澤穀稼 先生
の二次創作です。
作者の雨澤穀稼 先生より許可をいただいております。
私もやります。
それは、年に多くて数回。
ででんっ。と我が家にやってくる。
たいていは、お盆やお正月に遊びに来た、ママの弟であるタカシおじさんの手土産。
こっそり渡してくれるお小遣いのありがたさもあって。おじさんのことも、わたしには大事なイベントなんだけど。
ここでわたしが「やってくる」のを心待ちにしてたのは、タカシおじさん本人よりも、その手土産のほう。
まるや四角のかたちをした平たい缶。
平たいくせに、意外と厚みはあって、なかは二段になっていることも知ってる。
ふたのふちにぐるりと巻きついたテープを、ひっぱりながらはがしてゆく。ぱかっとあければ「それ」がずらりとならんでいる光景に、わたしは目を輝かせることになるんだ。
あ、ちがうよ。クッキーのことじゃない。
それはこのシートのした。
クッキーはもちろん好きだけど。わたしがおめあてにしてるのは、そのシートじたいなんだ。
ずらりと気包をならべた、ビニールのシート。
わたしは、それを手にとると、はしっこから順番に「プチ」ってするの。
気まぐれにまんなかあたりから、何ヶ所か「プチ」ってしたくなるときもあるけど、そんなのはマナー違反。とんだ不作法だ。プチプチ淑女の風上にもおけない。
手あたりしだいに「プチ」ってして。気が済んだら、まだ、はしっこに気包を残したままのシートを、ゴミ箱行きにしちゃう。そんなひとも、たまに見るけど。そのうち、ばちがあたるぞって思うんだよね。
だから、あたしはきょうも。
ちゃんとはしっこから、プチそこねがないように、順番に「プチ」ってするんだ。
うまく「プチ」ってできずに、「ふにゃ……」って空気が抜けちゃうときもあるけど、あれは悔しい!
今回はそんなことがないように、気合をいれて「プチ」ってしなきゃ。
プチ! プチ! プチ!
プチプチプチ!
はあぁ……癒やされるぅ♡
もはや、わたしはプチプチ淑女どころか、プチプチ中毒患者だ。
もし、わたしの命を狙う暗殺者が、このプチプチのひとつに毒ガスを仕込んでいたら。わたしはまんまとその罠にはまって、命を落としていたことだろう。
「あんた、それまたやってんの?」
プチプチしてるわたしの横から、にゅっとのばされたのはお姉ちゃんの手だった。
まんなかに赤いチェリーの砂糖漬けがのってるやつを、彼女はいちまい、ひょいパクする。
「いや、まともな殺し屋なら、そんなとこにガスしこむより、クッキーのほうに毒をいれるでしょ?
まあ、そしたら。死んじゃうのは、あんたより、あたしのほうみたいだけどね」
からから笑いながら。お姉ちゃんは、こんどは裏にホワイトチョコの塗られた、薄いいちまいを口に運んだ。
ちょっとまってよ。
お姉ちゃんてば、さっきからわたしの好きなやつばっかり、食べてるじゃない。
いくら二段になってるとはいえ。このまま、お姉ちゃんに食い荒らされるのを、指をくわえて見ててたまるか!
わたしは、気包のはんぶんほど残ったシートを名残惜しくも手ばなすと。「プチ」ってしちゃ、だめだからねと、お姉ちゃんに念を押してから。ふたりぶんのミルクティーを淹れに、台所へとむかった。
「プチ」ってするのは癒されるけど。クッキーと、砂糖を入れないミルクティーのひとときだって、もちろん逃すわけにはいかない。
だいじょうぶ。
クッキーに夢中なお姉ちゃんは、気包のならんだシートになんて気にする余裕なんかないから。
ほら。ミルクティーまだなの、なんて、わたしに催促してくるしまつ。
もうちょっとだから、せかさないでってば。
それより、わたしのぶんまで食べたら、しょうちしないからね。
カップをあたためるのも億劫に。ポットからティーバッグで淹れた紅茶に、冷めないくらいの牛乳を注いだだけだけど。
わたしたち姉妹のティータイムにはこれでじゅうぶん。
タカシおじさんにありがとうしながら、ひたすらクッキーをかじるんだ。
これもまた、癒しのひととき。
ミルクティーのおかわりを飲み干すころには、ふたりとも満足しきっていることだろう。
だからプチプチも、きょうのぶんはもうおしまい。
残りはあしたに、とっとこっと。
ついつい二段めまで!
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