第六十一話:《大公》閣下の宴にて
大陸の遥か高空。
羽ばたく鳥さえも見下ろす場所に、『ソレ』はあった。
一見すれば巨大な岩塊。
飛ぶ翼も無しに、それは風と共に空を流れる。
何も知らぬ者が見たならば、ただその奇怪さに首を傾げるのみだろう。
その正体が、かつては大陸を支配した《古き王》の一柱などと。
恐らくは、想像すら及ぶまい。
今や表面を無骨な鎖で締め上げられ、僅かな意思の光さえ感じられない。
半ば死体も同然の状態で、かつての竜王は空を漂流する。
無論、それはただ意味も無くそこに存在するわけではなかった。
浮遊する岩場と化した竜の上に、その奇妙な建物はあった。
それは巨大な『城』のようだった。
土台は竜自身と繋がっており、岩石状の表面をそのまま加工したのかもしれない。
人間が使うには、あまりにサイズがおかしいその城にて。
その日も奇怪な『宴』は催されていた。
様々な調度品や芸術品に彩られた、城内で最も大きい広間。
そこに集っているのは異形の群れ。
人型に近い者は多いが、その殆どが人間の姿をしていなかった。
一つとして同じ形はなく、程度の差はあれ誰もが等しく歪んでいた。
彼らは常に愉快げに笑い、饗された食事や酒を喰らい続ける。
大陸人類の多くが圧制を強いられる中で、それは余りに不釣り合いな有様だった。
だが、それを咎める者はこの場にはいない。
何故なら、彼らこそが現在の大陸を支配する者――真竜であるからだ。
定期的に開かれるこの『会合』。
常は自らの『巣』に籠りがちな真竜達だが、この場に足を運ぶ者は多い。
中にはまったく顔を出さない、生粋のヒキコモリも珍しくはないが。
「そちらの都市の運営は順調かね?」
「勿論だ。しかし領域を拡大してからは何かと苦労も多いが」
「人間の数を増やすのも善し悪しだ。
余り多すぎると管理の手も回らなくなる」
「そういう細かい事は《爪》に任せてしまえば良い。
それで失敗するようなら、喰って片付けてまたやり直せば良い」
「ハハハ、それは違いない」
表面的には、真竜たちは互いに対して友好的に振る舞う。
腹の中では何を考えていてもだ。
彼らの多くは既に記憶さえしていないが、真竜の大半は元人間だ。
その頃の名残りであるのか、彼らは時にこうした『人間的な振る舞い』を好む。
さながら古代の貴族の如く、真竜達はその酒宴を楽しんでいた。
ただ酒を呑み、豪勢な食事を食い散らかすだけではない。
「ところで、あの噂はご存じか?」
「噂?」
「彼の宝石狂い――マーレボルジェ卿が滅ぼされた、という噂だ」
ザワリと。
宴の一角が、ほんの僅かにざわついた。
古竜が大陸から姿を消し、真竜達による《大竜盟約》が支配を確立してから千年。
盟約による『粛清』以外で、真竜が滅ぼされたという話は皆無だ。
あくまで現段階では噂のようだが、その場にいる者達の好奇心は刺激されたようだ。
「それは確かなのかね?」
「噂だとも。あくまで噂だ。
しかし北の都市が崩壊したというのは、どうやら事実らしい」
「誰かそれを直接確かめたのか?」
「近い位置にはサルガタナスの森があるはずだ。
奴は何もしていないのか?」
「アレはこの会合にすら顔を出さないからな。
森は閉ざしたままで動きもない」
囁き合う声は、徐々に広間全体へと広がっていく。
誰もがこの支配は盤石だと信じているし、繁栄が永久だと疑ってもいない。
真竜の多くは、あくまで『刺激的な噂話』としてその話題を口にする。
自らが同じ末路を辿るなどと、微塵も考えてはいなかった。
少なくとも、この時点では。
「それがもし事実であるとしたら、どうする?」
「どうする、とは?」
「竜殺しだぞ。いや真竜殺しと呼ぶべきか?
一体誰がそんな真似を?」
「我らではないはずだ。
真竜同士が直接争う事は、盟約によって禁じられている」
「盟約を破れば、それを行った者こそ滅びる事になる。
マーレボルジェが盟約を破った可能性は?」
「アレは遠い御伽噺を信じて、あんな辺鄙な地に都市を建てた物好きだぞ?
自分の領域で宝石を育て、それを喰うことしか頭にない。
そんな奴が、わざわざ盟約破りなどと愚かな真似をする理由があるのか?」
酒を呑み、肉を口にしながら。
定かならぬ噂を肴に、真竜たちは笑う。
「しかし、マーレボルジェが本当に滅んだのなら。
奴が支配していた都市周辺は、丸々浮く事になりますな」
「誰か手を出すのか?」
「アレは趣味こそ悪いが、都市を発展させる手腕には長けていた。
都市自体が無事であるのなら、なかなか旨い話だがね」
「崩壊したという話だからな。どの程度、形が残っているかだ」
「離散した人間どもを追い回す、というのもなかなか愉快な話じゃないか?」
「人間狩りか?
もし望むなら、都市跡の所有権をそれで決めるのも良いだろう」
「私戦で決めるのも時間が掛かるし、何よりコストも大きい。
それで決められるなら楽で良いんじゃないか?」
笑う。笑う。真竜たちは愉快そうに笑う。
人の生き死になど、掌の上で転がす骰子に過ぎぬと。
そうやって言葉を交わす真竜たちは、等しく異形だ。
大きさもマチマチだが、例外なく人間よりも遥かに大きい。
そんな彼らの傍に、小柄な影が近付く。
「――何やら愉しそうな話をしているじゃないか。
偉大なる諸侯の方々」
お道化るような口調で声を掛けたのは、一人の少女だった。
赤を基調とした華美な、けれど動き易そうなドレスに身を包んだ小柄な娘。
髪と瞳には黄金の色が輝き、肌の色は染み一つない白磁。
顔立ちは美しさよりも愛らしさ――それ以上に、毒々しさが際立っていた。
大人と子供どころではない体格差。
だが真竜たちは例外なく、その少女に対して恭しく頭を垂れた。
「これはこれは、《大公》閣下」
「今日もご機嫌麗しく」
「素晴らしき会合にお招き頂けたこと、光栄の極みに御座います」
そして口々に、少女を賞賛する言葉を捧げた。
黄金色の瞳を細め、赤いドレスの娘は口元を笑みの形に歪めた。
薄い胸を張り、この場の何者よりも傲慢である事をその態度に示す。
「そうでしょう、そうでしょうとも。
あぁ、そんなに畏まる事はないですよ?
この会合の主催者として、皆が愉しんで貰えるのが一番ですからね!」
主催者であることを殊更強調した上で、《大公》と呼ばれた少女はケラケラ笑う。
居並ぶ真竜諸侯らは、皆愛想笑いと共にますます頭を垂れた。
彼らは確かに、この会合を楽しんでいる。
だがそれと会合の主催者に好感を抱くかは、まったく別問題だ。
真竜たちは本音を迂闊に口にしたりはしないが、その心中は概ね一致していた。
即ち嫌悪。恐らくこの場の大半がそうだろう。
会合を開き、宴の場を提供するこの可憐な《大公》閣下を、多くの真竜は疎んじていた。
その感情を表に出すことは、決してあり得ないが。
「それで、一体皆さん何のお話を?」
「あぁ、《大公》閣下の御耳に入れるには。
その――あまりに、つまらない話で御座いますが」
「いやぁ、そう言われると余計に気になりますよねぇ。
仲間外れにせずに教えてくださいよぉ!」
その声は《大公》のモノだったが、聞こえて来たのはまったく別の場所。
もう一人の《大公》が、ワイングラス片手に別のテーブルから近付いて来た。
既に其処にいた《大公》と、姿形はまったく同じ。
違うのは身に纏う衣装の色だ。
新たな《大公》はデザインの似た、真っ青に染めたドレスを身に着けていた。
「おや何ですか? 何の話ですか?」
「面白そうなら是非聞かせて下さいな」
「アハハハハ、いやぁ今日も盛況で何より何より!」
続々と姿を現す《大公》たち。
追加で三人、やはり見た目はほぼ同じ。
衣装だけが緑、黄色、黒とそれぞれ異なっていた。
真竜達は身を低くするように、更に頭を下げる。
まったく同じ姿をした色違いの五人が、似た言葉を喋り倒す奇妙な光景。
会合に参加する真竜にとっては見慣れたモノだが、それでも畏怖が付き纏う。
五人にして一人、それが《五龍大公》ゲマトリアの姿だった。
《大竜盟約》の中核を担う七柱の大真竜が一柱。
その序列七位に位置する怪物だ。
「「「それで???」」」
口を揃えた催促の言葉。
調子こそ軽いが、有無を言わさぬ圧力が伴っている。
それを受けて、一体の真竜が渋々応じた。
「《大公》閣下は、マーレボルジェのことは覚えておられますか?」
「あぁ、あの宝石オタクの? 勿論覚えてますとも」
「誰でしたっけ?」
「何を言ってんですかボク。
会合に招待してもなかなか顔出さなかったアイツですよ」
「あーいたなぁ、いたいた。勿論覚えてるぞ!」
「おサルと違って断りの連絡入れてくるだけ、行儀は良かったよねぇ」
一つ答えれば、無数に答えが返ってくる。
それは実に異様な有様だった。
歪んだ感性を持つ真竜であっても、嫌悪と畏怖の感情が沸いて出るほどに。
「で、そのマーレボルジェが何ですか?」
「それが、どうも滅ぼされたという噂がありまして。
奴の支配していた都市も既に崩壊してしまったとか」
「ふーん?」
「滅んだ? 誰が? アイツ?」
「アイツって誰ですか。マーレボルジェですよ」
「真竜がどうして滅ぶんですか。
盟約を破ったわけでもないでしょうに」
甲高い声音で、《大公》たちは自分同士で言葉を交わす。
「それは事実なんですか?」
「あ、いや、きちんと確かめたわけではなく、あくまで噂でして……」
「なるほど、なるほど。確かになかなか面白い話ではありますねぇ」
「どうする? どうする?」
「別にほっときゃ良いんじゃないですか?」
「いやいや、マーレボルジェはそれなりに強かったですし。
それが滅んだとなれば結構な話ですよ?」
興味を引いたのか、それとも退屈させてしまったのか。
真竜たちにはそれすら分からず、ただ嵐が過ぎるのを待っていた。
常は友好的に見えるようで、《大公》の顔は五つある。
どれの機嫌をどう損なうのか、それは誰も分からない。
盟約の上位者である《大公》ならば、下位の真竜を『罰する』権利がある。
その理不尽が雷が自らの頭上に落ちぬよう、彼らは祈るしかない。
「……ま、良いでしょう。それが事実なら、この千年に無かったこと。
盟約を揺るがす事態です」
「大竜の礎たる七柱として、責任持って調査する事にしましょう」
「ハッ、素晴らしいご判断かと……!」
「それで、何故そんな話をボクにすぐ伝えなかったんですか?」
一瞬にして、宴の空気が凍てついた。
跪く真竜の一体に、五対の視線が突き刺さる。
先ほどまでのお道化た空気はどこにも無い。
向けられた眼に映るのは、虫ケラを見下ろす無機質さだけ。
《大公》の逆鱗に、触れてしまった。
その事実を悟り、真竜は弁明をしようと口を開くが。
「駄目ですよ、盟約には従わないとー?」
何かを言葉にするより早く、真竜の身体が持ち上がった。
他の者は全員、巻き込まれぬよう距離を取る。
哀れな真竜を捕らえたのは巨大な顎。
五人の《大公》の内、緑色の《大公》の姿が変化していた。
首から下の姿は少女のまま。
首から上だけが、緑の鱗を持つ竜の首へと変わっていた。
鋭い牙を備えた顎が、容赦なく真竜に喰らい付く。
メキメキと、肉と骨を潰す音が広間に響く。
「お、お許しを《大公》閣下! どうかお慈悲を!!」
「やかましい虫ですねー」
「早く噛み砕きましょうよ、周りの空気が冷えっ冷えじゃないですか」
「それ今言っても手遅れじゃない?」
真竜の肉体と魂を砕く寸前でも、《大公》たちは愉快に笑うのみ。
こうなっては運命は決したと、犠牲者に選ばれてしまった真竜は絶望する。
過去にも、何度か似たようなことはあった。
中には《大公》に逆らった者はいたが、例外なく同じ運命を辿っている。
ギロチンの刃が落ちるように、竜の顎に力が込められて――。
「――そこまでにしておけ、ゲマトリア」
その声は、穏やかだが力強く《大公》閣下の蛮行を諫めた。
今まさに餌を噛み砕こうとした竜の顎。
声の主は、それを片手で抑え込む。
《大公》は反射的に顎を閉じようとしたが、僅かも動かすことはできなかった。
残り四人の《大公》たちは、あからさまに動揺した様子を見せる。
「ちょ、何ですか! 邪魔をしないでくださいよ!」
「ウラノス!! 何のつもりですか!」
「下の者を諫めるだけなら、もう十分だろう。
処刑まではやり過ぎだ」
《大公》に正面から向き合う人物。
赤い甲冑を身に帯びた黒髪の男。
その見た目は殆ど人間だが、身長は三メートル近い。
少女にしか見えない《大公》程ではないが、真竜の姿としては相当に小柄だ。
しかし、その姿を『小さい』などと口にする者はいないだろう。
ただそこに立っているだけで、世界を歪めていると錯覚する存在感。
その姿はさながら、決して折れず曲がる事のない強靭な『鋼』。
この場の真竜の、ほぼ全てが抗えぬ《五龍大公》。
それに臆するどころか、逆に圧倒する形で男は佇んでいた。
「お、おぉ、ウラノス様……!」
「皆は下がっていろ。後の話は私がする」
「ちょっと、勝手に仕切らないで貰えますか!」
「まーまー。ほら、引き続き宴を楽しんじゃってよ」
男――ウラノスに文句を言いながら、《大公》は他の客たちをその場から追い払う。
当然、異論を唱える者は誰もいない。
宴の片隅に、《大公》たちとウラノスだけが残された。
「どういうつもりですか。
っていうか何で貴方がここにいるんですか」
「招待したのはお前の方だったと思うが」
「えっ、そうでしたっけ?」
「そうですよ、何言ってんですかボク」
「一応、他の人たちにも毎度招待自体は送ってるじゃないですか。
来ることは滅多にないだけで」
自分で自分にツッコミを入れる《五龍大公》。
その姿を見ながら、ウラノスは小さくため息を吐く。
「……誰からとは言わないが、下の者から一部苦情が来ていた。
《大公》閣下の会合にお招き頂けるのはありがたい。
が、度々その癇癪で『仕置き』を受ける者がおり、他の者も大変憂慮していると」
「……それでわざわざ来たんですか?」
「そうだ。釘を刺すなら直接出向くべきだろう」
あまりに生真面目なその言葉に、《大公》達は同じように顔を顰める。
これが下位の真竜達なら、盟約の上位として幾らでも『罰』を与えただろう。
だが、今目の前にいる相手に対しては別だ。
如何に《五龍大公》といえど、好きに振る舞うことはできない。
《大竜盟約》の中核を担う、七柱の大真竜が一柱。
その序列三位に、このウラノスという男は位置している。
七位の末席に過ぎない《大公》では文句を口にするのが関の山だ。
「……分かりましたよ、それは気を付けましょう。
それより、今の話ですよ」
「今の話とは?」
「マーレボルジェが滅んだって話ですよ!」
「貴方も聞いてたでしょ」
「誰かに滅ぼされたのなら盟約の一大事じゃないですか?」
口々に言われて、ウラノスはふむと一つ頷く。
「その噂の真偽を、お前が確かめるんだったか?」
「そうですよ、やっぱりちゃんと聞いてんじゃないですか」
「まさかそれにも文句あるとか言わんでしょうねぇ」
「いいや、それについて異論はない」
《大公》――ゲマトリアは身勝手で、時としてこのように釘を刺さねばならない手合いだ。
しかしその臆病なまでの慎重さや狡猾さについては、ウラノスも評価していた。
特に、盟約の礎である七柱は自覚的な強者が多い。
油断や慢心とは無縁のつもりだが、逆にゲマトリアほど目端の利く者は少ない。
故にこの件は彼女に任せれば問題あるまいと、そうウラノスは判断した。
「方法は任せよう。必要なら私の部下も出すが」
「お気持ちだけありがたく受け取っておきますよ!
これでも《大公》として戦力含めた人手には困ってませんから!」
「何のためにせっせと会合なんて開いてると思ってるんですか!」
「使える手駒は多い程いいですよねー」
「とりあえず《妖蛆》辺りに連絡飛ばしてみましょうか。
アイツなら使える手札も多いでしょうし」
「そうか」
既に算段も付いているのであれば、とやかく言うこともないだろう。
そう結論付けて、ウラノスは頷く。
ただ今の話とはまったく無関係に、気になる事が一つあった。
「ゲマトリア」
「ん? 何ですか。まだ何かありますか?」
「いや、私を含めた他の者達にもこの会合の招待を送っていると言っていたが」
「ええ、それが何か?」
「それは《黒銀》にも送っているのか?」
「まさか」
つまらない冗談はやめてくださいよ、と。
そう言わんばかりに、呆れた笑みでゲマトリアは首を横に振る。
「彼女にだけは送ってませんよ。
万一来たりなんかしたらどうなるか、貴方も分かるでしょう?」
「そうだな。全てが台無しになる」
「……別に彼女のやる事に、ボクも文句なんて言いませんけどね」
そんな恐ろしい事は出来るわけもない。
ゲマトリアは皮肉げに笑う。
ウラノスは笑うことはせず、この場にはいない黒銀の輝きを思った。
「マーレボルジェの死については、お前に一任する。
何かあれば私に知らせてくれ」
「ええ、ええ。精々真面目に働かせて貰いますよ」
「あ、お酒呑みます? 丁度良いのが入ったんですけど」
「……そうだな。偶には頂こう」
勧められて、ウラノスは差し出されたワイングラスを手に取る。
視線を周りに向ければ、狂った異形たちによる宴は滞りなく続いている。
最早、そこに千年の志を持つ者はほとんどいない。
かつての我らが何を思い、この道を進むことを選んだのか。
覚えているのは、礎たる七柱のみか。
あるいは自分たちも、時の流れに置き去ってしまったものがあるかもしれない。
「……感傷だな」
ウラノスは囁くように呟く。
今さら何を思ったところで、既に引き返せぬ道だ。
ならば礎を担う者として、この使命に永遠を以て殉ずるのみ
全ては、竜在りしこの地の未来のために。
「さぁさぁ、グイっと行っちゃってくださいよー!
貴方は普段酒なんてやらないタイプでしょ?」
「折角来たんなら楽しんじゃって下さいね!」
「あわよくば序列上位の相手にゴマすり出来るとか考えてませんからね!」
「……ごく稀にだが、私はお前が羨ましくなるよ」
考えてるようで考えてない、そう思わせて何か考えてるかもしれない。
お道化る同胞の言葉を聞きながら、ウラノスは少し笑った。
それから手にしたグラスの中身を、一息に飲み干した。




