子供ばかり殺すおじさんは何故かみんなから嫌われている
その背の高いおじさんはたくさんの子供の死体を穴を掘って投げ入れて燃やしていた。死体の額にはみんな穴が開いている。
「みほちゃん。あの人には近づいちゃダメよ。殺されたらどうするの?」
「そうじゃよ。『子供殺し』は人間のクズじゃ。何をするかわからんぞ」
お母さんとおじいちゃんはそう言うけど私には何でそんな酷いことを言うのか理解できない。
二人だって協力してお父さんを殺したくせに。
この世界で人を殺すことなんて珍しい事じゃないのにおじさんは村の人たちから嫌われていた。
「子供殺しに食わせる飯はない。帰んな」
「おら。金だよ。拾えよ。子供を殺して金を貰って恥ずかしくないのかねぇ?」
こんなことを言われてもおじさんは黙って帰ったし、黙って地面に投げられたお金を拾った。
『子供殺し反対の会』のおばさんたちは『子供を殺すな!』と書かれたプラカードを持って村を歩くおじさんを取り囲んでたくさん悪口を言った。
『未来ある子供を殺すなー!』『子供殺し反対~!』『子供殺しを許すな~!』
おじさんは無視して歩いて行った。
私はどうしてもおじさんと話をしたくなっておじさんがテントを張る林を訪れた。
「おじさんはなんで子供を殺すお仕事してるの?」
「誰もやりたがらないから」
「なんで額を撃つの?」
「苦しまなくて済むから」
「私も殺す?」
「殺したくないけど殺すかもね」
おじさんと話していると村の方から悲鳴が聴こえてきた。なんだろう?おじさんと一緒に村に帰ると村の大人たちはみんな『ゾンビ』になっていた。
強化ゾンビがバリケードを破って村に来たんだ!
『ミホヂャーン』
『ウデヲカジラセデー』
お母さんとおじいちゃんもゾンビになっていた。どうしよう?『お父さんの時』みたいに殺さないと!私に出来るかな?大人のゾンビに勝てるかなぁ?
「どいてなさい。大人のゾンビは一発じゃ死なないから厄介だな」
「おじさん?」
パパン!パン!パンパン!カチャカチャ。パンパンパン!カチャカチャカチャカチャ。パパン!
おじさん凄い。拳銃に弾を込めては撃ってを繰り返してあっと言う間に全員やっつけてしまった。
『……オガアサン?』
全身の皮膚が剥けて赤紫色になって目と鼻から血をダラダラ流してるけどまーくんだ!まーくんもゾンビになっちゃったんだ!『子供ゾンビ』だ。
『……オドウサン?』
「お父さんとお母さんにはすぐに会えるからね」
『あヴ?』
まーくんの眉間から血が吹き出た。
「……子供のゾンビは額に一発で死んでくれるのが幸いだ。弾も節約出来る」
・
王国のゾンビレンジャー部隊が来るまでおじさんは一緒にいてくれた。
「おい!お前チャイルドゾンビキラーだろ!?その子から離れろ!お前がいながらなんてザマだ!早く次の村へ行け!大人も子供も容赦なく殺しやがって!キチ野郎が!」
レンジャー部隊の大人たちはおじさんを見るなりそう言った。ひどいなぁと思う。その場にいなかったくせに。でも、おじさんは何もいい返さなかった。
黙って歩き出す。
「おじさん!私はもしゾンビになったらおじさんに殺されたいよ!」
「はは。君がゾンビになる前におじさんがこの戦いを終わらせるよ」
おじさんは笑った。おじさんの笑う顔を見るのは初めてだ。なんだか嬉しい。
「君!なんて事を言うんだ!そいつは子供を殺す……人間の……クズ……だ……ぞ?」
自衛隊の人たちが急に胸を押さえて血を吐き出した。
おじさんが手招きをしたので私はおじさんに向かって走っておじさんに抱きついた。
「空気感染か。免疫のない坊っちゃんがいきがって現場にやって来るからこうなる」
「アガゴ……グゲ」
人がどんどんゾンビになっていく。きっと何度見ても慣れないな。
血を吐きながら髪の毛と皮膚が抜けていく。
「仕方ないな。君。しばらくはおじさんのそばにいなさい」
「うん!」
おじさんは銃口をついさっきまで人間だった者たちに向けた。
おじさんと私の旅が始まる。