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君はコーヒー、俺ココア


 

 焼いたウィンナを刺したフォークを手に新聞を読むふける彼女に息子のショウハが近寄って声を上げた。

「母。出かける時間だよ」

「あら、もうそんな時間かしら」

 れーこさんは時計を見て慌てた様にかばんと帽子を取って装備させた。

「かかくん。私、行くわね」

 ブロンズ色のカップに残ったまだまだ湯気の立つコーヒーを一気に流し込みその一言を残しれーこさんはショウハの手をとって足早に外へ向かっていった。

「結婚して随分経つのにまだ”かかくん”なんだよなあ……。俺も”れーこさん”だし」

 お互いの呼び名は病気の様なものだ。ファーストインパクトからもう何年も同じ呼び方だし本名で呼ぶのはぎこちなくなってしまう。

 息子の名前だけは普通に呼べているのは幸いな事だろうか。

 外では本名を呼んでいるんだよ? いや本当に。

 家の中は気が緩むのだろういつもの呼び方になってしまう。

 そんな俺たちを見て育った息子のショウハは俺たちの事を”父”、”母”と呼ぶ。これと言って指導をしたわけではないが自然とそう呼ぶ様に育った。

 れーこさんの冷静な部分と俺の少し体の弱めな所を受け継いだショウハは少し強く我慢をしてしまう子だ。

 それがいいように働く時もあれば逆の事もある。

 今のまま、それでいいなんて俺みたいなぬるま湯男が育ってしまっていけない。

 俺たちは体の事を変えられたんだ。だからショウハの未来から流れてくる時を見極めてショウハの事だって変えられるはずだ。

 まあショウハがどう思うかは解らないけれども俺たちは俺たちの最善を尽くして行かなければならない。

 俺たちの願いは今を生きてくれと言う事だ。自分と言うものを持って欲しい。積み重ねれば変えられる事もあるのだから。

 俺はそう考えながら冷蔵庫からココアを取り出しブロンズ色のコップに注いで口に含んだ。

 変に格好をつけたから時計を見て慌てる事になったが。

 

 

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