ふたりで一緒に
「久しぶりに会うと本当に思う。かかくんって変わっている」
いつもの喫茶店で注文したホットココアをすする俺を見てれーこさんはこぼした。
「俺には日常の様な感じなんですけどね」
近頃冷房があまり効いていない店は貴重だ。ガンガンと効かせて温かいものを食べるのはいいと思うけれど俺としては冷房はあまり好きではない。腹が下るし。
じんわりと汗がにじむ店内で熱々のココアを含み味わってから飲み込む。れーこさんと付き合う様になってからこうやって味わいながら飲むのがくせになってしまった。
「れーこさんはどうしてアイスコーヒが好きなんですか?」
ふと浮かんだ疑問だ。
「かかくんこそ何でいつもホットココアなの?」
疑問を疑問で返されると困るなあ。なんて眉間を寄せると彼女は微笑んで俺の疑問に答えた。
「私は元々冷たいものが好きだったの。アイスコーヒーが好きなのはその延長。ただそれだけよ。かかくんは?」
「俺も腹が弱いから温かいものを飲む事にしているだけです。れーこさんと同じ様な感じですね」
そう言ってふたりで笑い合っているとれーこさんは実はねと言いよどんだ感じで話を始めた。
「かかくんにプレゼントがあるの」
机の下から少し大きめのびんを出して俺の方へ寄せた。
びんにはしょうがのはちみつ漬けとラベルが貼られていた。
「あ、嬉しいです。家ではいつもはちみつしょうがを飲んでいるんですよ」
「私って冷たいものをひたすら食べるじゃない? だから定期的に買っているのよ」
「へえ、そうやって体を温めているわけなんですね」
「そうしないとに、妊娠できなくなるってお医者さんから言われていて……」
「えっ。ええっ!」
「この歳になるまで食べすぎたせいでダメージが大きいらしくて。せっかくかかくんとお付き合いできて、け、結婚前提だって思っているから子供も欲しいって……」
アイスコーヒーをストローでかき混ぜながらうつむくれーこさんは少し小さく見えた。
「俺も。俺も一緒に体調改善していきますから。そんな泣きそうにならないでください。俺もせめて冷房を人並みに当たっていられる体にはなりたいですから」
俺の言葉にれーこさんは明るい顔になった。
そうして二人三脚でお互いの体調を改善していっていつの間にか同棲するようになり俺たちは結婚し自然と子供が出来た。