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第4話 帰らずの貴方
どこにも行かないでほしい
そう思う事は私の我儘ですか
この願いはそんなに
叶えてはならないものなのですか
旅立ちの日に
貴方の背中を見つめて 口を開いた
でも どう頑張っても言葉が出ない
たった一言 この気持ちを伝えるためなのに
貴方は何も知らないでいった
どうか私の声を聞かせてほしいと
「君の声を忘れないために」
「君がしてくれた事を忘れてしまわないために」
――君に言いたい事があるんだ
――もし帰って来たなら
――その時は一緒になろう
そんな優しくて嬉しくて
彼の酷い言葉を私は今も覚えている
「ストーリー」
彼は帰ってこなかった。
だから思い出は永遠になってしまった。
記憶に焼き付いてしまったのよ。
ああ、あの時の彼はなんてひどい人。
私の気も知らないで、帰れるのが当然とばかりに。