2
あぁ、そうだ。
この木は私が大穴を開けちゃった木の二代目。
殺してしまったかと思ったのに、しばらくしたら根元から若芽が出てきてたんだよね。植物って強い。大きくなれば良いな。
あそこの小さい広場では昔父さんと魔法の練習をしたなぁ。
わざわざ隅っこのほうでさ、他の人が近くに居たら危ないからってわざわざ兄さんを監視に立たせていたっけ。
上級魔法まで出来るようになったのも、父さんのおかげだね。あの時は皆で喜んでくれたっけ。隠れてたハインツさんが思わず駆け寄って来てくれてさ。
あ、あの木は昔、兄さんと木登りして落ちそうになって怒られたやつだ。
あのベンチ、日当たり良くて、よく本を読みながらうたた寝してたなぁ。なんかその時にガンツがわめいてた気もしなくもないから、その事でも言ってたのかもしれないな……まぁもう忘れよう。
思い返すと、なんだかんだ、ほとんど家族との思い出ばかりしかない。この辺の子たちとは、あんまり遊ぶこともなかったな……。たまにガンツが話しかけてきたけど。
外ではひとりか、居ても兄さんとばかり遊んでいた私を、両親はどう思っていたのだろう。
でもそもそも私、精神年齢20くらいで止まってるし、子供って異物に敏感なのか、妙に避けられることもあったし……うん。ぼっちの記憶しかないや。
色々と思い出しながらも歩きなれた場所には自然と足が向かうもの。
そう、目的地は、我が家だった場所。
たどり着けば、今はもう『売り』の看板が立てられていて、地面は当然1日で変わるはずもなく、瓦礫の山。
──あっけないものだな。15年過ごしたこの場所が、こんな一瞬でなくなるなんて……。
「……何も、なくなっちゃいましたね」
「ミレイちゃん……」
「……気を強く持って下さいな」
これはただのワガママだ。
最後に、家のあった場所に立ち寄りたい、なんて。
「……ありがとうございました。行きましょう」
その言葉に2人は微妙な顔をしていたけれど、私の気持ちの整理はついた。
次に向かったのは当然と言うべきか、墓地だった。
まだ真っ白な墓石に手を合わせ、皆の冥福を祈る。
──ねぇ、母さん、父さん、パリス兄さん。
私は今日、ここから旅を始めるよ。
帰って来ることはたぶんないだろうけれど、ちゃんと、私は人生を全うするから。
そしたら、皆に旅の話を聞かせてあげるから。だから、そう、天獄で待っていてね。
行ってきます。
皆に決意を伝えて、私はようやくその場所から歩きだした。
──その時ふと、束ねた髪を撫でる風を感じた。
そんなはずはない。けれど確かに、誰かに呼ばれた気がして。
咄嗟に視線が風を追った。
だが、そこには墓石があるだけで、他には何もない。
仕方なく再び前を向いて足を踏み出すと、また誰かの声が聞こえた気がした。
今度は構わず、再び歩きだした。
きっと今の私の顔は泣き笑いの変な顔だろう。
さぁ、これから、私の旅が始まるんだ。
──あなたのお話をきくのを、楽しみに待っているから。頑張りなさい。大丈夫。
そう、声がきこえた気がする。




