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住み慣れたウェリルから、今日私は旅立つ。
これからどんなことが待っているのかな。
翌日、十分な睡眠をとったからか、スッキリと目覚めることが出来た。こんなにスッキリ起きたのは久しぶりかもしれないな。
時刻はちょうど朝の5刻、地球時間にしたらまだ朝の4時頃で、ようやく日が昇ってきたところ。仕事がある人々はそろそろ起き出す時間帯。
手早く身体を起こして着替えなどの準備をしていると、扉をノックする音が聞こえた。
着替えついでに、昨日作ったウォームエアのペンダントと鉄の刀と帯刀ベルトと灰色ローブも装備してある。
荷造りは昨日のうちに済ませてあるので、一度部屋に浄化をかけた。
扉を開けると、約束をしていたレベッカさんとサブリナさんが立っていた。
「おはようございます、レベッカさん、サブリナさん。朝早くからすみません」
昨日の夜にお願いしていた通り、出立に余裕を持って部屋を訪れてくれた。
……決して起こして欲しいってお願いではないからね?
寝起きが悪いのは自覚してるけど! 違うからね?!
「昨日言っていたところへ行くのよね? 出立予定は8刻だから、少し急ぎましょうか」
「朝ご飯の時間も必要ですからねぇ~……ふわぁ」
サブリナさん、アクビ大きいな。低血圧って話だから、本当に悪いことしたなぁ。
本当は私ひとりで行くつもりだったんだけど、心配してくれたレベッカさんがついてきてくれることになって、芋づる式にサブリナさんも巻き込んでしまった。ごめんなさい。
誰も居ない部屋に一礼してから、鍵をかけた。
──2晩、お世話になりました。
階下に降りると、既にシアンおばちゃんと旦那さんのヒューズおじさんは仕事を始めているようだった。
宿屋の朝は早いものね。
足音で気づいたのか裏からシアンおばちゃんが出てきてくれたので、カウンターに部屋の鍵を置く。
「おばちゃん、鍵、返すね。あとで朝ごはんを食べに戻るけど、少し済ませたい用事があるんだ」
「そうかい、朝ごはんは何が良いんだい? 旅立ちの日だ。準備しとくから、何でも言っとくれ。ある程度は出来るからね」
「良いの? なら……うん、カンパニュラとソルパとクローナが良いな。あとヨルゲシーノが良いな」
「そんなんで良いのかい?」
そんなん、って言うけど、シアンおばちゃんに作ってもらうなら、やっぱりこれが一番だ。他の料理も美味しいんだけど、一番多く食べた料理だし、かなり豪華だよこのメニュー。旅立ちにはピッタリだろう。
「うん。私にとって、これがここの想い出の味だもの」
そう返すと、シアンおばちゃんは泣き笑いの変な顔になってしまった。
「そうかい。戻ったらすぐ食べられるように準備しとくよ。行っといで」
「ありがとうおばちゃん。遅くても7刻頃には戻るつもり。行ってきます」
やっぱりおばちゃんは、もうひとりの母さんみたいな人だな。
その足で宿屋を出て、商工ギルドへと向かった。
今朝の受付はユールさんか。今日はレイルさんは休みのようだ。
まだ朝早いため、職員しか居ない。すぐに受付してもらうことが出来たので、フリージアのアルーシャの集落にある商工ギルドへ手紙を出したいこと、またアルーシャにある商工ギルドへ伯父個人への配達依頼をしたいことを伝えて依頼の処理をしてもらった。
手紙の移動料金の銀板2枚と配達依頼料の銀板1枚を渡し、伯父への手紙を預けた。
別の商工ギルドに依頼を出す時は少しお高めなんですよねぇ。
でもこれで、ウェリルに伯父から手紙が来ることはないはずだ。時間が経てば、ウェリルの皆も私のことなどいずれ忘れることだろう。
ギルドにだけはランクアップしたり依頼に失敗したりしたらどこに居るかがバレてしまうけれど、それを知るのは書庫の管理を担う事務員さんとハインツさんくらいだろうし。
それから、商工ギルドを出て、目的地まで町を見てまわることにした。
今さら見るようなところもないけれど、生まれ育った町を見ておきたかった。




