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「お待たせ、ミレイさん。じゃ、私は受付に戻るわね。見届け人は……ベルで良いわね、案内させるわ」
魔法封入はギルドへの正式な依頼なので、しっかりと達成されたかを確認する『見届け人』という人が必要となる。
てっきりそのままレイルさんがやるのかなと思ったが、休憩はギルドに戻った時点で終わりのようだ。
「あ、出した依頼がこちらのアントニオさんへの魔生石封入なので一緒でも良いですか?」
封入依頼の時に魔法を見られることを嫌がる人は基本居ないので、同時にお願いすることも良くあるのだ。
「あら、そうなの。同じ部屋でやっちゃった方が借り賃も安くすむからその方が良いわね。銀貨1枚と言っても節約した方が良いでしょうし」
……すみませんレイルさん、その通りなんだけど指名依頼で銀貨5枚出した手前、いたたまれないなぁ。
「こちらの部屋でお願いいたします」
案内してくれたベルさんに促されて『1号室』とプレートがかけられた扉から中に入ると、簡素な部屋が目に入る。
こじんまりとした部屋に、木製のテーブルが一つと、椅子が2つあるだけ。
魔法封入依頼の時には必ず名乗りをするのが通例なので、私たちはそれぞれ自己紹介を済ませた。
正直私とマイクさんだけだったら必要ないのだけど、アントニオさんが居るからね。
ちなみにジョージさんとケイジさんには下で待機してもらってます。
「ではまずマイクさんから魔法の封入を始めてください。魔法はウォームエア、個数は10です」
「よし、じゃあミレイちゃん、魔生石を出してくれるか」
マイクさんにはシルバーカードになったことを伝えてあるんだけど、小さい時からの知り合いなので呼び方はそのままなようだ。
言われた通りに素直にリュック経由でほっ君から皮袋を取り出し、その中から、テーブルの上に2セルの魔生石を10個置く。
「よろしくお願いいたします」
「任せとけ、ちょっと失礼するぜ」
ひょい、と魔生石をつまみ上げ、真剣な顔になると、マイクさんは何やらブツブツと呟きだす。
「……火の精霊よ、この魔生石にマナを与えし者を包み込みし大気に、熱を与え、その者を保護したまえ。『ウォームエア』!」
すると、今までただの灰褐色だった魔生石が赤く光り出し、光が収まれば、マイクさんの手にはガーネットのような石が収まっていた。
普段ならば詠唱は必要ない時もあるが、魔生石に込める時は絶対に詠唱しなければならない。
詠唱に出てくる精霊は、アースガイアでは見えはしないものの、居ると信じられている。
全ての現象は女神様が役割を与えたモノが起こしており、火や水や風や土などの魔法で起きる現象は、それら元素を司る精霊の力によるものと考えられている。
詠唱するマイクさんの顔があまりに真剣なので、何故かこちらまで緊張した。
「ほい。とりあえず1個な。次行くか」
手渡された魔生石は、とても綺麗だった。
私が『ヒールウォーター』など水魔法を込めたらサファイアみたいな青になるが、この赤い色にかわった石は、何というか特大サクランボ果実みたいで美味しそうです。
その後、今日はあまり魔法を使ってないから疲れもないとのことでサクサクと10個とも魔法を込め終えたマイクさんに、私はお礼の気持ちを込めて頭を下げた。
「ありがとうございます。これで何とか冬を越せそうです」
「気にすんなって。試すか?」
「いえ、マイクさんのことは信頼してますから大丈夫ですよ」
魔法がちゃんと込められているか確認するのは大切だけど、ウォームエアの温度設定は何故か体感で25℃くらいに統一されているし、鑑定能力で見ても問題なかった。
流石にマイクさんはギルド職員のレイルさんの旦那さんなので、変なことはしないだろう。
マイクさんが魔法封入で変なことをすればレイルさんの評判にも関わってくるからね。




