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そんなこんなで、私たちは今は『エリーの服飾商店』に居る、という訳だ。
「ミレイちゃん、どうする?」
「こちらにしますわよねっ」
ガンツの一件で呼び名をちゃん付けにしていたので、そのままにしている、という訳である。別に私もそれほど呼び名に拘りはないので、問題なしです。
「えぇと、まず資金も潤沢なわけじゃないのでっ! 普通の布にしますからっ」
実は、本来の作戦のひとつには、食糧の買い出しを残りの棘花メンバーに任せて、宿屋で服や布団などを作って待つ、というものもあった。
宿屋で鍵をかけておけばガンツ避けも簡単だし、私がそもそも手芸が得意だということを伝えていたのと、一通りの料理道具を持っていると伝えたからだ。包丁はないけど、ナイフはあるから。あと実は簡単な裁縫道具と編み棒、フライパンなどはほっ君に入ってます。
まぁおそらくそれは無理だろうって予想もしていたんだけどね。私の準備の経験にもならないし。
ただレベッカさんたちの申し出で、この後の食糧の買い出しはジョージさんたちにお願いしてくれる、ということになり、急遽装飾商店で布団を買うのではなく、布を買うことにした訳だ。ぶっちゃけその方が安く済むから助かった。
今はもう少しで14刻半。宿屋に連絡が入るだろう21刻まで時間があるから、3人で手縫いでも布団くらいは作ることも出来る。服まで作ることも可能だ。
私1人で作りますよって話したのに、2人とも手伝ってくれると申し出てくれた。ありがたい。
「あらぁ、仲良しでお買い物、良いわねぇ~。私のオススメはそのピンクのシェル生地よぉ~」
にこにこと微笑みながらカウンターに両肘をついて、両頬を包むように支えている店主のエリーさんだが、商品を汚したりすれば般若と化すのを私は知っている。
エリーさん、ふわふわした砂糖菓子みたいな人なのに、すでに成人した4人の子持ちなんだぜ……。
「ピンクはちょっと好みじゃないです。とりあえず、服はラーナ生地が好みなので、こっちが良いです」
手に取ったのは肌触りのいいベージュがかった白色の無地のラーナ布。
布素材コーナーには、木綿生地のようなラーナ生地やシルク生地のようなシェル生地がある。
蚕みたいなやつの名前がシェルフライだから、生地もシェル生地って呼ばれてるんですよ。
ラーナは綿のような植物の名前ですね。
Tシャツの替えが1枚しかないけどまぁ浄化も出来るので不便ではない。何枚持ってるかなんていくらでも誤魔化しようはあるからね。
けど、白Tシャツのみってのもレベッカさんたちとしては面白くないのかなぁ。
結界のおかげで、街の中では暑いときは半袖で過ごす人も多いので、Tシャツは下着としては扱われない。
「えぇぇ、また生なりのもの?」
「色物もあったほうが良いですわよ?」
2人にダメだしをされてしまったので、シェル生地の中から手に取ったのは、深い緑色のもの。
うーん、この色なら買っておいても良いかな。
……値段を見ると1ミーダ×10セルで銀貨6枚。高いっ!
「あら、それ良い色じゃない。それにしましょう」
「えぇ、それなら良いですわ」
「いえ、手持ちが心もとないので、親戚のところに行ったら色物を買ってもらうことにします」
2人からの賛同は得られたけど、流石に高いです。




