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それからルディさんには明日か明後日には馬車を取りにくるのでそれまで預かっていて欲しいことと、他の人には馬車を買ったことを内緒にしてほしいことをお願いすると、快く了承してくれた。
しかも、それまでの馬車の預り金は馬車の受け渡し前なので要らないとまで言ってくれた。
ルディさんは、最後まで私に根掘り葉掘りと何かを聞くことはしなかった。
理由は訊かないんですか? と問えば、「理由はなんとなくわかりますし、言いふらすこともしませんよ。商いをする人間は口が固いの」なんて笑って言ってくれたけど、確かにルディさんは噂話をするような人ではなかった。
宿屋のおばちゃんとは大違いだね。まったく。
買い物を済ませたので、物車商店を出ようと立ち上がった私の探索能力に、このウェリルで唯一黒判定をしている反応が出た。
……エマージェンシーエマージェンシー!
なんでこの時間に宿屋の前にアイツがっ?!
「あ、すみません、レベッカさん、サブリナさん、次の目的地なんですが、ここで少し予定を決めてからでも良いですか?」
多分顔はひきつっていたのだと思うけれど、それがむしろよかったのだろうか。2人とも店のすみの邪魔にならないところへと来てくれた。
ルディさんも出来る商人なので、そんなことでうるさく言うこともない。快くスペースを貸してくれた。
……これから食糧とか買わないといけないのに、アイツにバレたら面倒くさいことになるのは必須だっ!
「ミレイさん、どうしたの? 予定って、ここからは私たちに任せてくれたら良いわよ?」
「それとも、何かありました?」
流石に護衛として来てくれているだけはあって、2人ともすぐに私の異変に気付いてくれた。
正直、若干顔が青ざめている気がしなくもない。
「実は……さっき、裏から戻るときに、ガンツが居るのに気付いてしまって」
「ガンツ? もしかして、一昨日に一緒に依頼を請けた子? なんだかその時から様子がおかしかったから、気にしていたのよ」
流石レベッカさん。なお、ウェリルには現在、ガンツという名前はアイツだけなので、他には存在しない。
「合ってます。それで、彼なんですが、実はとても珍しいタイプでして……交際をお断りしたんですけど、いまだにしつこいんです」
正直なところ、本当に珍しいのだ。居ないわけではないけれど、アースガイアでは切り替えもはやい人も多いから。
「あら……なるほど、彼はつながる影が一つしかないタイプなのね」
影がつながる、とは地球で言う赤い糸のようなもの。1本しかない、と思うのは自由なんだけど、相手に拒否されているのだから諦めて欲しいんだが。
「それで、彼に見つかると面倒なことになると思うんです。私がウェリルから出る準備をしている、となると……」
「なるほど、妨害に出るか、自分もついていく、と言い出しかねないわね。それはこちらとしても困る話だわ」
「しかも、あのタイプは人の話も聞きませんからね。なら、こうしてはどうでしょう?」




