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2階にある鑑定部屋前でしばらく3人で待っていると、レイルさんが合流してきた。
どうやら、見届け人として彼女がついてくれるらしい。
流石に護衛つきで中に入るのはマナー違反かとも思ったが、ここに入る人が持ち込むのは貴重品が多いので構わない、という話だった。
全員で入るのも護衛として微妙なので、サブリナさんが扉前で待機、レベッカさんが一緒に入ることとなる。
中に入ると、そこには1人の紳士然とした男性が窓の外を眺めていた。
普段から様々な鑑定の仕事をしているのだろう。手前の木製テーブルセットの上には仕事道具だろう虫眼鏡などが置いてある。
鑑定魔法などが存在しないこの世界では、主に魔力の流れで魔生石の質というのか密度を測っているらしい。
私には解析能力があるからわかるけれど、普通に見てもわからないから、魔生石の鑑定には商工ギルドからの認定証を持った鑑定人が必要なのだ。
鑑定人になるためには、魔力を見る目が必要とされ、それは生まれつきであったり、厳しい訓練を積んだ人にしか得られない。
なので、どんな小さな村であっても、必ず一人は鑑定人が常駐している。
また、宝石の鑑定も彼らの仕事なのだが、宝石については装飾商人や魔法商人が持ち込んで鑑定を依頼することが多いので、基本的に彼らは商工ギルドから出ることがない。休憩の時や、自宅に帰る時くらいだ。
魔生石以外の素材の鑑定はギルドマスターや雇われギルド員でも基本的に出来るんだけど、魔生石と宝石の鑑定が出来るのはウェリルだとこの人とハインツさんくらいかな。
「さて、私が鑑定士のイアン=ギードだ。早速だが、拝見させていただくよ」
木製のテーブルセットに案内されて、私とイアンさんが向き合う形に座り、レベッカさんは後ろ、レイルさんは私の右手に立っている構図だ。
「ミレイ=シュライクです。よろしくお願いします。みていただきたいのは、こちらです」
リュックから取り出したように見せて、ほっ君から3セルの皮袋を差し出すと、イアンさんが真っ白な手袋をはめた手で受け取る。
「……事情は聞いたが、私も鑑定士。私情を挟む訳にはいかないんだ」
「大丈夫です。……そこは気になさらず、鑑定よろしくお願いします」
彼もプロだから、真っ当な鑑定をしてくれるはず。これから先立つモノが居るだろう、なんて手心を加えてはもらえないだろうけど、そんな必要はない、はずだ。
その後、約5分かけて鑑定は行われた。
急に、イアンさんが虫眼鏡みたいな道具を置いて、大げさなほどに両手を広げる。
「……素晴らしい! こんな質の高い魔生石は、久しぶりだ」
顔には満面の笑み。疑っていたわけではないけど、私の鑑定能力さんと、鑑定人の能力は正しかったらしい。
「では、これでよろしいでしょうか?」
まっすぐにイアンさんを見つめると、彼はゆっくりと、だが大きく頷いてくれた。
「十分すぎる位だ。最高額をつけさせてもらおう」
横でそれを聞いていたレイルさんが「よかった……流石ラナエさんね」なんて声と安堵の溜め息を漏らす。
知らず知らず上がる父さんの株。まぁ良いよね?
「今回の依頼では上限が金貨3枚と銀板2枚なのでその値段をつけさせてもらう。ギルドでの買い取りとなると金貨3枚が上限だから、この依頼にしたのは賢明だったね」
おぉ、金貨3枚と銀板2枚! 日本円で32万円だよ。なかなかじゃないかな。
「ありがとうございます。この魔生石は父の贈り物なので、きっと高値だろうなって予想してたんです」
「なるほど。ミレイさん、あなたとはまた会えたら嬉しいですね」
微笑むイアンさんに一礼し、私たちは部屋をあとにした。




