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護衛依頼はもう出すしかなくなってしまったが、しかしどうしよう。
荷物が少ないと不審がられるだろうし、かといってほっ君のことがバレるわけにもいかないし。
あとこれが一番大事だけど、誰が請けてくれるか、だなぁ。
「……ハインツさん、護衛依頼を請けてくれそうなチームって」
「それは天翔破岩に頼めば」
「絶対に嫌です」
ガンツに頼むのだけは論外だ。
というか、ヤツの執念からして、街から出るとなったら面倒なことになるのは目に見えてるし。出来れば知られたくない。
Cランクチームになってしまったから、護衛依頼も請けられちゃうんだよなぁ……。
「困りましたね。他に請けてくれそうなチームとなると……」
「あの、ハインツさん、マギまでは2日の道のりですし、馬車を飛ばせば護衛なしでもなんとかなります。父さんから魔法のお墨付きももらいましたから、護衛依頼はなしでも」
シールドの魔法も、ウォールの魔法も使えるから、夜営しても問題ないよ?
そう伝えれば、ハインツさんの形相がそれは見事な笑顔へと変化した。
これは……やらかしたっ?!
「良いですか、ミレイさん? 馬車での移動とはいえ、魔獣に襲われない保証はありませんし、野盗も少数とはいえ存在しますし、なにより、つい昨日に爆発魔による被害があったばかりなのですよ? 爆発魔はおそらくもうこのあたりには居ないとは思いますけれど、近隣に居ないとは限りません。そんな中、大切な友人の忘れ形見であるあなたをひとりでマギに? そんなことが通ると思いますか?」
「思いませんっ! ごめんなさいっ!」
ハインツさん怖い。怖いよ。子供のときに叱られた恐怖が刷り込まれちゃってるんだよ!
「……しかし、どうしますかね。こちらでお願いできるのは『鉄の盾』くらいですが、彼らには今別の依頼をしていますし……」
そうなんだ。彼らに頼めないのは残念だけど、他の依頼中なら仕方ないね。
『鉄の盾』はウェリルにそれぞれ家庭を持っているから、ギルドとしても頼みやすい相手なんだろう。
一般に貼り出して募集しても、ガンツ率いる『天翔破岩』は嫌だと伝えているので、彼らが請けることはないけれど、他の冒険者チームもナッツボアシーズンが終わってしまったので、既にウェリルから旅立ったあとだろう。
近々、サフネスで大きなイベントがあることだし。
「あの、ハインツさん、実は『棘花』が明日あたりにマギへ向かうって話なんですけど、彼らに頼めませんか? まだギアノルの宿屋に居るはずです」
『棘花』は、レベッカさんの所属するチームだ。
今朝会ったときに、準備が終わり次第、マギへと向かうって話をしてたし、準備するにしても今日いっぱいはかけるだろう。
いくら身軽な冒険者でも、準備してからって言葉が出たということは、今日は出発の日ではないはずだ。
夜営は危険なので日数を減らすためにも、出発するなら早朝だから。
「なるほど、彼らなら安心できますね。ちょうど良いですし、宿屋に使いを出しておきましょう。それと」
言うなり、ハインツさんはローブの内ポケットから取り出した金貨を2枚、私に握らせてきた。
えっ?
「これは、支度金です。これで、色々と整えなさい」
「いやいやっ?! そこまでしてもらうわけにはっ」
「これまでの、ラナエとパリス君、そしてマリーナさんへのギルドに対する貢献への感謝ですよ。……あなたは知らないかもしれませんが、マリーナさんにも随分と助けられましたからね」
母さんにも? あぁ、そっか、母さんって元冒険者だっけ……って違うそうじゃない。
「いやだとしても」
「良いから、受け取っておきなさい」
その後ちょっと粘ったんだけど。
……笑顔の魔王には、逆らえませんでした。




