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アースガイアでは地方を巡る行商人に手紙や荷物を託したりもするが、必ず着くとは限らないし、時間も行商人任せなのでいつ届くかがわからない。が、そのかわり、大体が銀貨1枚程度で引き受けてくれる。
しかし、商工ギルドによる郵送は違う。
商工ギルドには開拓期の遺産と呼ばれる特殊な空間の魔生石があり、それにより手紙程度のものは瞬間移動させることが出来るからだ。
開拓期の遺産といっても魔法自体は現代を生きる空間属性持ちが込めたもので、それの習得に古代の書物が使われることからこう呼ばれている。
なかなかに難易度が高く、これを使いこなせるのは希少な空間属性持ちの中の、更に一握り。
なので民間人がこれを使えるのはギルドが定めた10日に一回のみで、重さにもよるが一通で大体銀板2枚も取られるので、気軽に出せるものではない。
けど、今回は私は商工ギルドの郵送を使うよ。
間違って届かなかった場合、私が伯父を頼って行ったのでないことが来年の春にはバレてしまうからね。母の誕生日が春だから。
「お待たせ致しました」
お喋りをしている間に、レイルさんが戻って来た。
両手でしっかりと握られた大きめの木のトレーには、まばゆいお金の山と銀色に輝くギルドカードが載せられている。
それを受け取りに行ったハインツさんにならって、私も席を立った。
「ありがとうございます、レイル。では、ミレイさん、こちらをどうぞ。天へと昇るその日までこの輝きが曇らぬよう、これからのあなたの人生に幸多からんことを」
それはシルバーカードを受け渡す時の常套句。
悔いのない人生を生きて、胸を張って天に昇れる日まで、精々努力をすることにしよう。
それから金貨20枚……ではなく、ギルドカード発行分をあらかじめ引かれた金貨19枚と銀板9枚、そして銀貨8枚を受け取った私は、ハインツさんに金貨2枚を押しつけた。
「金貨ですみませんが、お借りしていた分です」
「あぁ、そうでしたね。しかし、これは多すぎますよ?」
そう言って金貨を1枚返そうとしたハインツさんを押し留める。
「お釣りは要りません。そのかわり、そこから宿代も払っておいて下さいませんか?」
「え? いや、しかし、これから何かと入り用になるでしょう?」
「いいんです。ハインツさんにはたくさんご迷惑をおかけしてしまいましたし……今朝、宿屋で思いきって豪華な朝ごはんにしたので、それでちょうどになるはずですよ」
それらを払ってもお釣りは銀板4枚程度とかなり多めだけれど、それは出来れば感謝の気持ちとして受け取っておいて欲しい。そんなものでは到底足りるものではないけれど。
「なら、この金貨であなたのマギまでの護衛依頼を出しておきましょう。私からの、餞ですよ」
……本当にイケメンで困るよ、ハインツさん。




