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「はい、ありがとうございます」
書類を受け取ったハインツさんが、私のサインの下に何やらサラサラと書き込んだ。
書き終えると、しっかりと確認出来るようにこちらへと見せてくれる。
そこには、私のサブギルドカードから正式なギルドカードへの更新を認める、という一筆と、ハインツ=ウェリントンのサインがしっかりと入っていた。
「あとはこれに村長の一筆とサインが必要ですが、それは後ででも問題ないです。レイル、確認はしましたね?」
「はい、確かに。では私はカードを作って参りますので、ミレイ『さん』、サブギルドカードの提出をお願いいたします」
……あぁ、やっとここまで、来たんだな。
レイルさんからの私の呼び名が大人に対するものへと変わったことで、更に実感がわいてきた。
けれどここで足踏みしている訳にもいかないので、私は横に置いていたリュック経由でほっ君から財布を取り出し、中のおまけカードをレイルさんに手渡す。
「では、少々失礼いたします。お時間はそこまでかかりませんので、このままお待ち下さいませ」
「レイル、一緒に例のものもお願いいたしますね」
それに返答して一礼すると、書類は持たずに、そのままレイルさんはおまけカードのみを持って退出していった。
たぶん、村長のサインなしにギルドカードを作るのは、これが初めてではないのだろう。
例のもの、はたぶん、討伐報酬かな。
「……っと、いけません。お茶も出していませんでしたね。これは、マスター失格でしょうか」
恥ずかしそうに頭をかくハインツさんと二人、部屋に取り残されてしまったが、お茶など大した問題じゃない。
ギルドマスターとしては確かに失敗かもしれないけれど、幼い頃はたまにここに遊びに来てた私が相手で、その私も、のどが渇けば勝手に水筒の水を飲んでいたものだ。
今さら気にすることでもない。
けど、ハインツさんらしからぬ失敗でもあった。
疲れもあるのだろうが、おそらく、それだけ親友とまで言ってくれていた父の死は堪えていたのかもしれない。
もしかしたら、私以上に。
「水で十分ですし、水は自分で出せますからね?」
苦笑しながら水筒を見せると、ハインツさんも少しだけ笑ってくれた。
「それよりも、色々とありがとうございました」
ハインツさんにも、村の皆にも。感謝しかない。
「いいえ。それでミレイさん、これから、どうするおつもりですか? うちのギルドに就職するならばもちろん支援しますし、あの土地にまた家を建てるならば、協力は惜しみませんが」
……やっぱり、ハインツさんには告げておくべきだろう。
「ハインツさん、すみません。私はもうあの場所には住みません」




