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少しだけレベッカさんとも話をして、私は宿屋を出てギルドへと向かった。ちなみに、部屋の鍵はしっかりおばちゃんに預けてある。
まだ7刻を回ったくらいだが、おそらくハインツさんは既に出勤しているはずだ。……というより、もしかしたら、事後処理とかで帰れていないかもしれないけれども。
レベッカさんはこの後準備をしたら、マギへと発つそうだ。
他のメンバーは朝食をともにしないのか、と尋ねたところ、他のメンバーはまだ寝ているとのことだ。
もうひとり女性も居るらしいが、どうも低血圧らしい。大変だね。
商工ギルドの扉を開ければ、そこにはまだ人の姿は疎らであった。
受付にはレイルさんではなく、夜勤のシルビアさんが座っているのが見えた。
確認すると、マスター室にはハインツさんは居るようだったので、そのまま私は受付へと向かった。
「おはようございます、シルビアさん。すみませんが、マスターにお会いすることは出来ますか?」
「おはようございます。……えぇ、大丈夫ですよ。こちらからお伺いしようと思っていたのですが、わざわざご足労いただいてありがとうございます」
連絡は既についていたらしい。自分が昼に抜ける予定を話してあったのか、それとも私が早めに起きることもあると予測したのか。ハインツさんらしいと言えばらしいが。
昨日のこともあってなのか、彼女はいつも丁寧な物言いだが、更に輪をかけたように丁寧な対応で迎えられた。
「いえ、すぐ側ですから。勝手に上がっても大丈夫ですか?」
何を隠そう、ギルドは宿屋のはす向かいなので、足労というほどの距離はない。
「流石にそういうわけにはいきませんので、ご案内致しますね。少々お待ち下さいませ」
そう言うと、彼女は一旦奥の部屋に下がってからギルド員のアンナさんを連れて戻ってきた。
勝手知ったる商工ギルド内とはいえ、一応は客人対応なのだろう。ここからは受付業務のあるシルビアさんにかわって、アンナさんが案内してくれるようだ。
「では、アンナがご案内致しますので、後に着いていって下さい」
「ミレイちゃん、こちらにどうぞ。階段には気をつけてね」
彼女はカウンターの跳ね上げ板から表に出ると、二階へと続く階段の方へ私を促した。
階段を上がれば、魔法をこめるための個室の扉が右側に3つほど並んでいる。
ここは魔法封入依頼のための個室で、簡単なテーブルと椅子があるだけだ。
反対を見れば、窓から既に明るくなった空が見える。
見慣れた突き当たりの部屋を二回ノックすると、アンナさんはひとつ咳払いをした。
「マスター、失礼いたします。ミレイ=シュライク様がお見えになりました」
普段の砕けた感じはそこにはなく、アンナさんの顔は既に部下のそれになっていた。




