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こんなに早く、皆が居なくなってしまうなんて、思ってもいなかった。
それから。
私はひとまず宿屋に泊めてもらうことになった。
たぶん葬儀などの全ての事はハインツさんが手を回してくれたのだろう。あの人自身が動かなくても、商工ギルド員が手配してくれるだろうから。
私はハインツさんに連れられて、シアンおばちゃんのもとへと連れられて行った。
「ミレイちゃん……疲れただろ、さぁ、部屋に行こう。今日はもう、お眠り」
魂の抜けたような私はおばちゃんたちの優しさに甘えることにして、そのまま宿の一室に連れていってもらった。
ハインツさんは、そのまま下に残るようだった。
「……今は、何も考えるんじゃないよ。ゆっくり、おやすみ」
おばちゃんは部屋の鍵を机に置くと、そう言い残して部屋を後にした。
私は涙どころか言葉すらも出なかったけれど、おばちゃんは何も言わなかった。
部屋に残された私は内鍵をかけると、そのままベッドに倒れこんだ。
布団に潜り込み、身体を丸めると、そのまま気絶するように意識を手放した。
……いまは、なにも、かんがえない。
──意識が浮上すると、なんだか少し頭が痛かった。
空はまだ白みはじめたばかりのようだった。
習慣で腕時計を見ると、時刻は朝の6刻40分。
「……見覚えのない、天井だ」
全身に浄化をかけて天井を見上げると、ここが我が家ではない実感がこみ上げてきた。
──あぁ、そうか。
ひとりに、なってしまったんだ。
これから、どうしようか。
あ、宿代、払ってないけど、どうしよう。
ハインツさんが立て替えて払ってくれてるかな?
それだと良いな。私、今無一文だし……。
なんにせよ、お金も稼がないとならない。
そのためには、まず、そうだ。ギルドカード。
おまけカードのままじゃ、なんともならない。
ハインツさんにお願いしてみよう。ギルドマスターと……村長の許可さえあれば、いくら親から16まで取らせるなと言われていたとはいえ、大丈夫なはず。
なんだか、笑いがこみ上げてきた。
こんな状況なのに、心配するのはお金のことだなんてね。
でも。生きるためには、必要だから。
大丈夫。皆は今は、地獄で楽しく生活してるはずだから。
だから。
私は、まだ、そっちには、行っちゃダメだ。
はやすぎるって、怒られちゃうもんね?
少しだけ、旅に出るのが早まった。
それだけのこと、さ。
……よしっ!
大丈夫、私は、大丈夫だ。
皆の分まで、楽しく生きて、あっちにいったら、沢山、沢山、お話するんだ。
私が、ミレイ=シュライクが、どうやって生きたのかを。
きっと、待っててくれるはずだから。
だからまずは、何か、食べよう。




