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「あぁミレイ、私がわかるのかい?!」
そう言って母さまから私をひったくると、容赦なく抱きしめる父。興奮しすぎてかもしれんが、わからないってことはないだろうに。
「とうしゃま、くるしっ……」
てか死ぬからっ! その馬鹿力を少しゆるめろぉぉ!
「お、おお、スマン。つい嬉しくて……」
お前は我が子をそんな理由で殺す気かっ!
「……ア・ナ・タ?」
母さまが素早く私を取り返した!
ものすごく いい えがお だ !
「す、スマン、マリーナ! 許してくれ……!」
……まぁ、その後なんだかんだ母さまに説教をくらって、部屋の隅で小さくなった父さまを見たら、怒りは収まった。
が、兄さまや?
何故アナタはさっきから固まってるんですかい?
「にぃ……しゃま?」
母さまの腕からおろしてもらい、なんとか歩いて兄さまの横……いや、下にたどり着いた。
しょうがないじゃないっ!
身長が足りなくて椅子の座るとこギリギリなんだものっ……!
あ、ちなみにこの身体に慣れたらなんか歩けました。
多分、最初に落ちたのはアレだね、まだ慣れてなかったんだよ。
くいっと服を引っ張ると、我に返った兄さまが光の速さで私を抱き上げ、膝の上に乗せた。
私は今兄さまの膝を足蹴にして立ち、兄さまと向き合っている状態だ。両脇を兄さまの手に支えられながら。
「あぁ僕のミレイ、やっと喋れるようになってくれたんだね!
可愛いっ可愛すぎるっ! 食べていいかい? いやいいよね。妹? 関係ないよ! ミレイは僕のものだからね。でもさすがにまだ早いかな? あと9年ってそんな待てないだろ、いやだがしかし何故妹なんだ、妹でなければすぐに連れ去ってしまうものを。だが妹だからこそ……」
「にいしゃ、ストップ」
……そうだった。
コイツこういうヤツだった……。あぁ、記憶のない私、よく耐えたな!
だが、こういう時には、こうすれば良いのさ!
「にいしゃま?」
コテン、と首をかしげて、兄さまを見つめる。
不思議そうな顔をするのを忘れずに。
「ぐはっ……!」
にいさま は はなぢ を ふいた !
さらに くち から ち を ふいた !
……ちょ、私に血がかかるではないかっ!
そして、兄さまはそのまま椅子ごと後ろに倒れ、意識を失う。
もちろん、兄さまを下敷きにした私はノーダメージ。
ふ、完璧だっ!
そんなドタバタな一幕はあったものの、その日から、私はよく喋るようになった。
普通であればもっと早くからカタコトでも喋れるようなのだ。
そんな私が遅ればせながらも喋れるようになったことに、皆は狂喜乱舞してくれた。
そのおかげなのか、父さまに頼んだら、本のある部屋に実にあっさりと入れるようにしてくれた。
……しかし、父さまは夢にも思わなかっただろう。
私が絵本だけではなく、文字だらけの本からこの世界についての知識を得ていたなど。
基本の文字は絵本で勉強が出来たから、本を読むのもわりとすぐ出来るようになったよ。
知識を詰め込むのも楽しいから、全く苦にはならなかった。
さぁ、これから新しいミレイの人生が始まるんだ。
今度こそは、人生を謳歌してやる!