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それから私たちは元の場所へ戻ることになった。
他に欲しい薬草はないと言えば嘘にはなるが、ここら辺が限界だろう。
戻りながら、レベッカさんはしっかりと種明かしもしてくれた。
察してはいたけれど、あそこにミリーの花が咲いているのは知っていたことや、いざというときの為の麻痺消しポーションが事前に配られていたことまで。
なるほど、だから命薬商店では『今は必要はない』と言ってたのか。
まぁ使わずにすめばそれはタダで自分たちのものとなったらしいので、「使わずに済んで良かったわ」なんてレベッカさんの言葉に嘘はないのだろうけれど。
一番欲しかったミリーの花は、花粉と花びらは麻痺作用、葉っぱと根は麻痺治しの作用のある立派な薬草だ。
なので、花びらは絶対に噛んではいけない。
花びらの方は触ったくらいでは問題ないけれどね。花びらを切ったりした時に出てくる汁に麻痺作用があるから。
どうしても欲しかった。
まぁ薬草だから、というのも理由だけれど、それだけじゃなくて。
今日は、私の誕生日だったから。
私を産んでくれた母への感謝の日でもある。だから、せめて。何もしてあげられないけれど、この花をあげたかった。
喜んでくれると良いのだけれど。
戻ってまた採取を進め、中和花とも呼ばれるシーバニアの花をゲットしたところで、昼の休憩となった。
休憩までに魔獣などが近寄ることもなく、実に順調に採取はすすんでおり、皆それぞれが満足そうにしているように見える。
かくいう私も、午前だけで結構な収穫となった。
大木の下でシアンさんのお弁当をひろげると、四角いパンを半分に切った、美味しそうな味付け焼き肉とレタスのカンパニュラが8切れに、更にオマケでだし巻き卵の切り落とした端っこまでついていた。
……おばちゃん、ずいぶんと奮発してくれたな。
アースガイアのニワトリ、ククルドという魔獣は人間とともに生きているので卵は高くはない。けれど、確か、宿屋のメニューでだし巻き卵は、1皿に6切れで銅板7枚もしたはずだ。
客に出せない端っこの切り落としとはいえ、私にしてみればご馳走である。
ありがたくいただきながら、本日の収穫をまとめてみた。
事前に配られた麻袋の中身は体力回復の薬草が29本に、魔力回復の薬草が13本、中和花が4本と、そして別の皮袋にミリーの花が3本だ。
2刻程度の収穫にしては、なかなか良いのではないだろうか。




