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「そう……まぁ何かあっても私は知らないわよ」
「はい。では、行きますっ!」
許可を貰うと同時に水筒に取りつけた魔生石に魔力を流す。
そこから目当ての数輪に向かって思い切り水をぶちまけた。
そしてこっそり浄化を使い、しっかりとローブの布の端で口元を抑えて早足で歩き出す。
ここからはスピード勝負。かといって、走って花粉をイタズラにまきおこすことはしない。あくまでも、冷静に、素早く。
よし、目当ての3輪までたどり着いた。
まずは花そのものにヒールウォーターをぶっかける。
それから葉っぱを一枚ちぎり、その葉っぱで花粉のある部分を拭うように取り去る。
それから、根っこを千切らないように気をつけて引っこ抜いて、周りの土を念入りに払い落とすと、左手に持っていた皮袋へとしまいこんだ。
同様に3輪をいただくと、私はすぐさまとって返す。
長居は無用。今はこれで十分だ。
戻るなりローブの頭からヒールウォーターをかぶる。
少し冷たいが、まぁ我慢出来ないほどじゃない。
今日はまだ陽射しも暖かいから、そのうち乾くだろう。
「……ぶはぁっ、はぁ、ぜぇ、はぁ」
あー、苦しかった……!
ほんの1分もなかったはずだけど、息を止めるのは本当にしんどいっ!
レベッカさんが居なければここまでしなくても良かったんだけどな……まぁ今はまだ、仕方ない。
つめていた息を思い切り身体に通せば、なにやら横から吹き出した音が聞こえる。
「……ふふっ、いや、ごめんなさいっ、でもほら、あんまり必死で……別に息を止めるまではしなくても良かったのに……!」
む、笑うことはないと思うんだ。
息を止めたのは念のためのパフォーマンスでもあるし、書物にはなるべく呼吸を抑えるのが正式な採取方法って載ってたからその通りにしただけなのに。
「そんな顔しないでよ、ごめんなさいってば。でも、アナタ、ずいぶん古い方法を取ったのね?」
「え? そうなんですか? うちの父の持っていた本にはこうやって採取するって書いてあったんですけど……」
「あぁ、たどり着いて水をかけるまではそうよ。でも、その後は花粉の処理よりも先に葉っぱを少し口に含めば良かったのよ。あれ、麻痺治しになるから。苦いけどね」
……確かに、どうせその後の花粉取りで一枚は無駄になるのだし、少しかじったところで問題じゃない。そうすれば良かった。
「もしくはもっと簡単な方法で、先に命薬商店で麻痺治しの乾包を買っておく、とかね」
なんだか凄く笑われたけれど、それはそもそも何本も採取する前提で、2、3本の花を売れば元が取れるって手段だし。私には取れなかった手段なんですが? レベッカさん。
本だけだとわからないこと、まだまだ沢山あるね。
だからこそ、私ははやく世界を見てまわりたいよ。
──そんなことを考えていたから、罰が当たったのかな。




